Creepy Nuts『かつて天才だった俺たちへ』リリース!「生命活動にとって、(ライブが)大事なものだったんだなと気づいた」【後編】

2020/08/26 08:05 配信

音楽

【写真を見る】写真左からDJ松永、R-指定撮影=西村康


活動が軌道に乗ってからは、1日1日、目の前にあるものに向き合ってるだけなんです


――ドラマ「コタキ兄弟と四苦八苦」の主題歌として書き下ろされた「オトナ」ですが、大人はしっかりできる、完璧を求めるようなイメージもありますが、”もう、”なるようになる”では済まされない”と綴りつつも、”アイツの欠けたとこもキミの欠けたとこも笑い合えたなら”という部分にグッときました。

R-指定:この曲、一番最初にできたんです。『よふかしのうた』を作り終えたテンションの延長だから、1バース目が”朝が迎えに来た”というフレーズから始まってて。ラッパーやDJとして夜という自分たちの理想郷におるけど、そういうスタンスではいられない日常生活もあるわけで。朝っていうのは、言うたら現実が迎えに来たみたいなこと。それに、歌詞にある片付いてない部屋とかチラシや催促状がたまってるポストっていうのは、ホンマに歌詞を書いてたオレの状況なんです。早い話がまともに暮らせない大人っていう(笑)。

――あの描写はR-指定さんご本人の様子という。

R-指定:だから、これは想像なんですけど、オレより上の世代とか、頑張って大人になってたんやなと。自動的に(大人へ)なってたと思ってたけど、違うんや、って。オレはそうなろうとする努力をあんまりしてこなかったけど、「こんなにも大変なのか、単純な生活というものは」って。そういうのがありまして、もしかしたら、みんなもそう思ってるんちゃうかなと考えたんです。だから、このときはポジティブに頑張っていこうじゃなくて、「ええやん。許してや」みたいな感覚だったのかな。

――余白と言いますか、許してあげられる部分。それがあるからこそ、それぞれの曲として受け止めてもらえると思います。

R-指定:すごく(直接的に)言ってくれたり、強い気持ちにしてくれるヒップホップもあるんですけど、それと同時に許してくれる側面もヒップホップにはあって。ヒップホップというカルチャー自体、とんでもなく受け皿としてデカいと感じてるんです。見方によっちゃ、一定の人だけの音楽に見えたりもすると思うんですけど、実はそんなこともなくて。どんなヤツでも受け入れてくれるし、入っていけるカルチャーなんやなっていうのがあるから。自分はそこに救われたから、そういう言葉が出てくるのかなと思いますね。

――延期になってた生業ツアーも座席を減らしての開催が始まったり、配信ライブも行ったりしていますが、少しずつ日常を取り戻しているような感覚はありますか?

DJ松永:いや、そんなに変化は感じてないですね。配信ライブはまた別というか。だから、またライブができるようになってる感覚は1ミリもないんです。

R-指定:何回かやって感じたのは、配信ライブは別物のパフォーマンスとしてやらなアカンと思ってますね。

DJ松永:なるほど、なるほど。

R-指定:ちょっと前に大阪の大人数の仲間とも配信ライブをやったんですけど、カメラを意識してるかしてないか、如実に差があって。だから、MVに近い感じなのかな。

DJ松永:テレビのライブ収録みたいな。

R-指定:あと、大人数やとかまし合いみたいのがあるけど、(DJ松永と)2人だけやったら、リアクションもないし、超寂しい! もちろん、楽しいんやけど。

DJ松永:分かるよ、そこに大きな違いがあるっていうのは。

R-指定:何やろ、ツレと最強のカラオケしてるみたいな(笑)。

DJ松永:(大人数だと)第三者がいる感じがするよね、全員が演者ではあるけど。

R-指定:2人だけというのは、言うたらオレも松永さんもカメラとガチンコの1対1やし、異様な緊張感もあって。お客さんからのリアクションがないから、マイクぶちかましてもちゃんと歌えただけ、みたいな(笑)。

DJ松永:Rさんがラップをぶちかまして、オレがスクラッチをぶちかました後にカメラが迫ってくると、なんかスベったみたいだなと思ったり(笑)。

――いやいや、そんなことはないですよ(笑)。11月には日本武道館公演も予定されてるじゃないですか。

DJ松永:もう、スベりにいきますよ!

一同 ハハハハ(笑)。

――ただ、モチベーションのアゲ方や保ち方は難しいですよね。

DJ松永:というより、今の心境は「当日、どうなるんだよ!」ぐらいなんで(笑)。オレら、ホントに先の目標とか考えられなくて。それはこういう状況だからじゃなくて、ずっとイメージできないんですよね。特に活動が軌道に乗ってからは、1日1日、目の前にあるものに向き合ってるだけで。

R-指定:計画を立てれるところまで追いついてないというか。まあ、「オトナ」の歌詞にあるような人ですからね(笑)。

取材・文=ヤコウリュウジ

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