特別な野球好きでなくとも、松中信彦という名前に聞き覚えのある人は多いだろう。平成で唯一、2004年に三冠王を達成し、2006年の「ワールド・ベースボール・クラシック」では日本の4番を務めた元福岡ソフトバンクホークスのスラッガーだ。
2015年に現役を引退し、現在は2019年に就任した野球の独立リーグ・四国アイランドリーグplusに所属する香川オリーブガイナーズのGM兼総監督を務める傍ら、今年7月には日本ハンドボールリーグのアンバサダーの役を担うことになった。
元プロ野球選手が引退後に他球技のアンバサダーになった背景とは? 松中氏にそのいきさつやハンドボールの魅力、アンバサダーとして見据えるハンドボールの将来などについて話を聞いた。
――まずは、現役を引退されてから2019年に香川オリーブガイナーズのGM兼総監督に就任されるまで、どのように過ごされていたのかを教えていただければと思います。
引退してからは、基本的には野球の解説と講演会の仕事ですね。あとは、長男のハンドボールに携わるというか、送り迎えをしたり応援に行ったりしていました。プロ野球選手のときは息子と接する時間がシーズンオフしかなかったので、子供との時間を多く持とうということで。
――日本のプロ野球でGMという存在が浸透してきたのはこの10年くらいだと思うんですが、具体的にGMとはどんな役職なのでしょうか?
日本プロ野球機構(NPB)のGMは、選手獲得だったりチーム編成だったり、言うなれば現場のトップですね。監督より上の立場で、監督人事を決めたりもします。
独立リーグの場合、予算や収益構造の違いから、NPBと多少権限の大きさは異なりますが、基本的には同様の立場です。独立リーグはNPBに選手を送り込むのが目的でもありますが、僕はGMとして(元阪神・)歳内宏明投手を獲得し、全力でサポートしました。
その結果、歳内投手を早速、NPBのヤクルトスワローズに復帰させることができました。これはGMとしての1つの成果だと思います。
――ご長男がハンドボールをやることに対して、父親として野球をやってほしかったという気持ちはあったのでしょうか?
いや、特に僕の中にそういう気持ちは正直なくてですね。何でもいいので、何かスポーツをやるなら「中途半端だけはやるな」という思いだけですね。やるならとことんやれと。
そういうことは常に言っていて、たまたま長男が選んだのがハンドボールで、そのおかげで僕もハンドボールの魅力を感じることができましたし、こうやってハンドボール界に進出といいますか、協力させていただけるようになりました。
きっかけは本当に息子のおかげだと思うし、野球だけじゃなくて他のスポーツに関われるのも、人生の中ですごくプラスだと思いますね。