特別な野球好きでなくとも、松中信彦という名前に聞き覚えのある人は多いだろう。平成で唯一、2004年に三冠王を達成し、2006年の「ワールド・ベースボール・クラシック」では日本の4番を務めた元福岡ソフトバンクホークスのスラッガーだ。
2015年に現役を引退し、現在は2019年に就任した野球の独立リーグ・四国アイランドリーグplusに所属する香川オリーブガイナーズのGM兼総監督を務める傍ら、今年7月には日本ハンドボールリーグのアンバサダーの役を担うことになった。
元プロ野球選手が引退後に他球技のアンバサダーになった背景とは? 松中氏にそのいきさつやハンドボールの魅力、アンバサダーとして見据えるハンドボールの将来などについて話を聞いた。
<インタビュー前編>の続き。
――日本ハンドボールリーグのアンバサダーに就任されてまだ1カ月ほどではありますが、アンバサダーとしての活動内容や、今後の展望を教えていただければと思います。
8月29日から開幕するんですけど(※本取材時は開幕前)、新型コロナウイルスの影響でなかなか活動も普通にはできないですし、やっぱり無観客でのスタート、オンラインでの配信になると思うんですね。(※日本ハンドボールリーグ機構は試合開催直近の状況に応じてレベル1~4の対策を実施)
そこで自分にできるところは何かというと、熊本はオムロンの女子ハンドボール部“ピンディーズ”の本拠地で、親交があった永田しおり選手から「見に来てくださいよ」と言われていて、リーグからOKが出たので見に行くことになったんです。
それを聞いたのか、オムロンから「解説してくれませんか」と言われて、「僕でよければ」ということで開幕戦の解説をすることになりました。
今年に関しては、コロナの影響でお客さんを入れられなかったり、イベントができなかったりする中で、僕の役割というのはやはり“ハンドボールを知ってもらう”ことだと思っています。野球ファンの人たちに「松中がハンドボールでどんな解説をするのかちょっと見てみよう」と興味を持ってもらうことが一番、今年に関しては大事なのかなと。
この前、吉田会長も言っていたんですけど、(フルコンタクトの)コンタクトスポーツで開幕するのはハンドボールが最初なんです。そういう部分では慎重になるところもあるでしょうし、難しいところもあるんですけど、自分ができることは、こうやってオンラインでどんどん出ること。関東は(同じくアンバサダーを務める)宮崎大輔君に出てもらって発信していく。そうやっていくことが大事なのかなと。
一番良くないのはリーグの中断、中止だと思うので、そうならないように。Jリーグは中止になった試合もありますけど、リーグ全体の運営は続いているので、そういうところを手本にしてやっていければなと。
ハンドボールが成功することで、ラグビーとか他のコンタクトスポーツにも、こうすれば開催できるんじゃないかと示せると思うので、それだけでも注目度が違うと思うんですよね。
やっぱりハンドボールはメディアの方とかに注目してもらわないといけない。発信していかないと興味を持ってもらえないので、先程も言ったように「松中がハンドの解説するの?」と興味を持ってもらえるだけでも、僕の今年の役割としてはOKだと思うので、そういう形で携わっていければと思っています。
――昨年4月には福岡に小学生のハンドボールチーム「KINGS」を設立されましたが、これはどういういきさつがあったのでしょうか。
福岡のハンドボールは、中学はすごく強いんですけど、高校になるとガタッと弱くなっちゃうんですね。でも、現場の先生たちの熱意というのはすごくあるんです。だから、いい意味で僕を使って、福岡のハンドボールをどんどん発信していきましょうということで。
発信していくためには強くならないといけない、そのためにはちゃんと“底”の部分、つまり小学生からきちっとしたチームを作って、小中高を通して福岡のハンドボールの攻め方、守り方の基礎を決めて、その応用は先生たちで頑張りましょうと。
郊外の方にはあるんですけど、KINGSを立ち上げた福岡市中央区にはチームがなかったんです。中央区はドッジボールがすごく盛んなので、ドッジボールの延長として、もっと競技人口を増やせるチャンスかなと思って、先生たちと話をして、立ち上げました。
子供は少しずつ増えてますけれども、まだ十分認知されていないと思うので、あと何年かしたときにはもっと子供が増えていればなと。そのためにスポンサーの方にもしっかり入っていただいて、保護者の負担にならないように考えながらやっています。