そんな男らしさを垣間見せながらも、たすきをほどいて茶室に入れば一転して和菓子の老舗の若旦那らしい品の良さが漂う。
3話後半、草薫会の茶事で菓子に込めた想いを語る場面では、スッと頭を下げた時の流れるような動作が目を引いた。
膝に軽く手を置き、背筋を伸ばして父への思いを口にする姿には、一本筋の通った決意が漂う。和服姿ならではのピンと張りつめた緊張感も心地よい。茶事の後、控えの間で上半身をひねって荷物の風呂敷を結ぶ動作からも、全身に神経が行き届いていることが窺える。
極め付きは3話ラストシーン。床の間の“不毛語戒”の掛け軸を真っすぐに見据えていた椿が膝を浮かせ、七桜に向き直った場面だ。椿はさらに膝を一つ進めてぐっと身を乗り出し、「あんたは本当に花岡七桜なのか、それとも…『さくら』なのか」と口にした。
突如あふれ出す、生身の男性としての色気。品のある所作を端々で印象付けているからこそ、こうした場面で見せるふとした非日常の仕草が、椿の心の奥底にたぎる憎しみや恐れ、不安といった感情を映し出す。
七桜に心奪われ始めた椿。今後、ドラマは七桜の正体を巡ってより一層混迷を深めていく。
番組公式Instagramで9月1日に公開された動画で、横浜は「椿がすごく可愛らしくなっていきますね、人間らしくなっていきます。皆さん、ぜひ注目してください」と見どころを語る。序盤できっちりとした和の美しさを見せた後で、“整った美しさ”をあえて自ら崩し、人間らしくなっていく――そんな椿の変化にも注目したい。
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