舞台「文豪とアルケミスト」の核は文豪たちの苦悩! 平野良×吉谷光太郎が語る、譲れないこだわり

2020/09/07 20:00 配信

2.5次元

“渋め”の最新作は「観て楽しい、考えて楽しい」作品に


――シリーズも第3弾となりますが、「文劇」において外してはならない芯はどこにあるのでしょうか?

吉谷:文豪は言葉を生業にした人ばかりなので、言葉のエネルギーや、役者から発せられるセリフに関しては、他の作品よりケアしています。勢い任せに言うのではなく、キャラクターの言葉を役者が自分自身に落とし込み、いかにセリフに内包された思いを突き詰めるか。ここはこだわるべきところでしょう。

文豪たちはノリで戦っているわけではないですよね。戦う姿に、文豪としての苦悩が見えなければいけない。彼らの一刀一刀が一筆に見えるような表現ができれば、よりこの作品の深みが伝わると思います。ともすれば深みを伝えないまま終わってしまう可能性もありますが、それは嫌なんですよ。

演出を務める吉谷光太郎


――それでは、「綴リ人ノ輪唱」がどのような作品になるのか、ヒントを教えてください。

平野:華やかさもありつつ、お話の軸は渋めだと思います。どの文豪も苦悩の色が濃くなっているんじゃないかな。

夏目漱石の「それから」なんかもそうですが、文学、特に純文学はあらためてタイトルを見て「なるほど」と思うことがありますよね。今回の「文劇」も似たところがあり、終わった後に考えさせられる作品になると思います。観て楽しい、考えて楽しい作品ですが、楽しさの種類はこれまでと違うかもしれませんね。

吉谷:僕も同じことを考えていました。終わった後の余韻や、どう引っ掛かりを残すかが目標ですよね。観終わって「ああ、そういうことか」となるはず。楽しみにしていてください。

――今回の文豪たちは詩人が多く、無頼派の仲間もいません。太宰の在り方は、第1弾とどのように変わりそうですか?

平野:第1弾を経てどうなるというより、一度リセットして、舞台「文豪とアルケミスト」の世界観で作り直す感覚。太宰の在り方も、第1弾より少し深めに核を置いておこうと思っています。繊細なところはより繊細に、勢いだけではないところもありますから。

太宰治役の平野良