――前回、アデサニヤはヨエル・ロメロ相手に防衛戦を行い、判定で勝ちはしましたけど、ずっと距離をとって“お見合い”の展開になり、大ブーイングを浴びる結果となりました。
「アデサニヤっていうのは、もともと離れた距離で戦う選手だし、なおかつ相手にも中に入らせないようなプレッシャーをかけるので、お見合いになる可能性は確かに高いんですよ。ただ、ああやって前に出てこない相手に対して、自分がイニシアチブを握ることができなかったこともたしか。だから、前回のロメロ戦を“やっちまった”と本人が認識しているかどうかで、今回の試合のやり方も違ってくると思うんです」
――コスタとロメロは、同じような背格好のハードパンチャーなので、前回の戦い方を修正してくるかどうかが、ひとつのポイントだと。
「一方、コスタの方は、あのタフなロメロと真っ向から殴り合いを展開して、僅差の判定でありながら殴り勝っている。それは自信になったと思うんですよ。ロメロの打撃に倒れなかったという、打たれ強さも証明しましたしね」
――では、同じロメロ戦で考えると、コスタの方がメンタル的にいい状態で臨んでくるかもしれないですね。
「コスタからしたら、ロメロに真っ向勝負で勝っている。アデサニヤはポイントを取って、ギリギリ勝っている。相性もあるので一概には言えませんが、精神的にはコスタにとってプラスにはなっていると思うんですよ」
――ロメロの強打にも怯まなかったので、もしアデサニヤの打撃を何発かもらっても、構わず前に出てくるかもしれません。
「コスタのやりたいことは明確なんです。距離を潰せるタイミングがあれば、間違いなくいく。1ラウンド中、5分間ずっと前に出続けることは無理なので、お互い遠い間合いを取る中、例えばコスタが2~3回仕掛けることができれば、よっぽどクリーンヒットをもらわないかぎり、ジャッジはコスタにあげますよね」
――そうなれば、コスタの方が攻めているという形になります。
「そういうことを考えると、アデサニヤにはもう一つ武器がほしい。例えば、もっとヒジが使えるようになるとか、腕をたたんでの近い距離でのパンチだったりとか。あとはグラップリングですよね。もともと首相撲は得意ですけど、組みの展開になっても、相手に主導権を握らせないようにできるかどうか。だから、アデサニヤはチャンピオンですけど、今回はそういったところをどれだけ洗い直してきたかどうかが試されるんじゃないかな」
――アデサニヤがブーイングを浴びたロメロ戦を経て、どう変わったかが問われる、と。
「“試されるチャンピオン”というのもかわいそうなんですけど、UFCはそういうことがけっこう多いんですよ。前回、UFC252のヘビー級タイトル戦も王者ミオシッチが、いかにして挑戦者コーミエを攻略するかという感じがあったり。UFCチャンピオンっていうのは大変ですよ。毎回、違いタイプの最強の相手と戦って勝ち続けなきゃならないわけですから」
――しかも、コンテンダー全員が、チャンピオンの戦い方を研究しています。
「だから個人的な希望としては、この前のロメロとの試合後に色々言われたことを発奮材料にしたアデサニヤが見たいですね。アデサニヤはチャンピオンですけど、まだまだ可能性を秘めた発展途上の選手だと思うので」
――総合格闘技の頂点であるUFC王者でありながら、まだ未完の大器だと。
「覚醒するのはこれからなんじゃないかと思います。逆にコスタにしたら、いまがアデサニヤを倒すチャンスかもしれない。いずれにしても、アデサニヤが前回と比べてどう変わったかがポイントになると思います」
(取材/文・堀江ガンツ)
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