小説家・中山七里インタビュー シリアスな報道サスペンス執筆で「これのどこが“ほっこり”なんだって自分で思いました(笑)」

2020/10/15 06:00 配信

ドラマ

10月18日(日)よりスタートする「連続ドラマW セイレーンの懺悔」と、11月22日(日)よりスタートする「連続ドラマW 夜がどれほど暗くても」(共にWOWOWプライムにて放送)。この“報道サスペンス”2作品の原作を手掛けたのは、2020年1月にデビュー10周年を迎えた小説家・中山七里だ。

この2作品以外にも、綾野剛北川景子の共演で話題の映画「ドクター・デスの遺産−BLACK FILE−」(2020年11月13日公開)など、続々と作品の映像化が予定されている中山にインタビューを敢行。両作品に込められた思いや、昨今の報道やメディアを取り巻く状況への警鐘、そしてドラマ化への期待などを語ってもらった。

「セイレーンの懺悔」「夜がどれほど暗くても」の2作品がWOWOWにて映像化される小説家・中山七里(C)浅野剛


――今回「セイレーンの懺悔」「夜がどれほど暗くても」という2作品が立て続けに実写ドラマ化されることになりました。改めまして、この2作品のドラマ化についてのご感想をお聞かせください。

中山七里:「セイレーンの懺悔」は2014年の1月に書いた小説で、「夜がどれほど暗くても」は2018年の10月に書いた小説なんですね。なので4年半くらい間が経っているんですが、今回偶然連続(でドラマ化)になったものですから正直驚いています。

しかもテーマがマスコミを舞台にしたものですから、その符合があったことにもびっくりしています。恐らくそれは、私は今年デビューして10周年なんですけれども、「そのお祭りの中の一つのイベントかな?」くらいにとらえていますね。

――これまでWOWOWでは「ヒポクラテスの誓い」(2016年、WOWOWプライム)などがドラマ化されてきましたが、中山さんからご覧になってWOWOWドラマの印象はいかがでしょうか。

中山:どの作品も映画のようなクオリティーなので、「映画館に行けなくても見られる映画」という印象ですね。

昨今のメディア報道の印象は「中立はどこにあるんだろう?」


――まず、「セイレーンの懺悔」はテレビ局の報道番組が舞台の作品です。ある誘拐殺人事件を警察サイドではなく、報道番組の記者の目線から追っていく展開は非常に緊迫感がありました。あえて報道番組の女性記者を主人公としたのは、どのような意図がお有りだったのでしょうか。

中山:この作品は、掲載誌が小学館の「きらら」という文芸誌だったんです。担当の方にお伺いしたら、購読されているのは若い女性の方が多いということで。それならば、「主人公には若い女性を据えた方が物語としては好まれるのではないか」と思ったのが発端だったんです。ですので、読者層に合わせて主人公を女性記者にして書いていきました。

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――近年は犯罪被害者に対するメディアの報道のあり方について盛んに論じられていますが、そうした報道が視聴率に結びつくということは「視聴者のニーズに即している」ということでもあります。中山さんは最近のワイドショーや報道番組をご覧になっていてどのような印象をお持ちでしょうか。

中山:(報道の主張が)右に傾いたり、左に傾いたりというのが目立ちすぎて、「中立はどこにあるんだろう?」という思いがあります。もちろんそれは諸外国も一緒で、たとえばアメリカだったら共和党寄りの報道があったり、民主党寄りの報道があったりするわけじゃないですか。

それ自身は別に非難されることではないんですが、視聴者というのは「テレビで言っているんだからこれは本当だろう」と、報道される内容を信用するじゃないですか。その思い込みを考えた時に、やっぱり偏向報道というのは怖いなという思いはありますね。

ただ、当の本人は偏向していてもなかなかそのことに気づかないんですよね。報道する側は、自分が今右に行ってるとか左に行ってるっていうのは恐らく自覚できない。今回この2作品の舞台にマスコミを選んだのは、そういうような場所で主人公が成長していく過程を書きたかったというのはありますね。