「火車」上川隆也インタビューPART1「全く新しい人物に出会ったという感じ」

2011/11/02 10:00 配信

ドラマ インタビュー

休職中の刑事・本間を演じる上川隆也

テレビ朝日系で、11月5日(土)に放送される宮部みゆき氏の傑作ミステリー「ドラマスペシャル『火車』」で、主演を務める上川隆也にインタビューを敢行。休職中の刑事・本間俊介という役についてやドラマの見どころ、役者“上川隆也”に関することなど、余すことなく語ってもらった。

――本作への出演が決まったときの感想を教えてください

最初に脚本を読ませていただいたのですが、作品が面白く、とにかくこの役を演じたいと思いました。プレッシャーよりもむしろ、演じさせていただけるといううれしさの方が強かったですね。

――ことしの4月クールに放送された「遺留捜査」でも刑事役でしたが、今回は珍しい“休職中の刑事”の役ということですが?

「遺留捜査」の糸村刑事がどこか、外からの影響を受けづらい、どこ吹く風な男に対して、今回の本間はいきなり傷を負ってしまったところから始まるんですよ。身体的にも精神的にも。そういったキャラクターの違いが明確にありますよね。もちろん警察組織の中にいる一職員という面では同じ存在ですけど、パーソナリティーからして全く違う男ですから、同類項とは決して思えないんですよ。全く新しい人物に出会ったという感じですし、直前に撮影した「遺留捜査」の物語は、一切そこに影を落とすことなく演じられました。

――休職中の人を演じるというのは難しいところがありますか?

そうですね、そこがまた宮部さんが巧妙に作り上げられた設定で、休職中だからこそどこか私立探偵的な位置で事件と向き合うことになっていくということが面白いところの一つだと思うんです。組織力に頼ることなく、足で稼がなければいけない。作品自体、情報が一つ一つ明らかになっていく中で、対象の存在がより謎をはらんでいくというような筋立てになっているので、これがいざ組織を総動員して追いかけてしまったらきっと面白みに繋がらなかったであろう事件、というかエピソードでしょうから、そこもまた作品の魅力の一つになっているでしょうね。

――上川さんから見て、本間俊介という男はどんな人物ですか?

これは脚本にも原作にも決して描かれているわけではないんですけど、類推するに彼は“職務”と言うものに対して、強い意欲、熱意を持って臨んでいたんだろうなと思いますね。警察官というものに誇りも抱いていたでしょうし、だからこそ負ってしまった傷は反動として大きくなるという部分があったでしょうし、きっと真面目なんでしょうね。だからこそ強く自分を見つめてしまうところがあったのだと思います。

――上川さん自身はいったん撮影が始まるとのめり込んでしまうタイプですか?

僕はそういうたちではないですね。常に散漫ですよ(笑)。どんなに役どころがシビアだったり、体力的な面で無理をする部分があったりしてもそれは撮影だったら撮影を、舞台だったら舞台を降りるまでのことであって、終わってしまえばそれまでなんですよ。あまりそこは引きずらないですね。なので、役柄が僕自身に影響を与えるということはないんですよ、もともと。意識してしているものではなくて、役はあくまで役、別の何がしでしかないんですよ。日々行ったり来たりしているだけの存在なので。僕は楽観的なんでしょうね…。本間さんみたいに自分の身を真面目にというか、深く考え込んでしまうような律儀さは僕にはあまりないんですよ。

――“真面目でストイックな役者さん”というイメージだったので、意外です(笑)

もちろん現場では真面目にやらせていただいてますよ! でも、それはあくまで現場が終わるまでのこととして捉えてますね。

――もし、ご自身が休職期間になってしまったら本間のように自分と向き合うことはあると思いますか?

いやあ、そういった想像すらしたことがないですね。もう想像すらできないですよ、自分が仕事から離れているということを。じゃあ、今改めてそうなったときのことを想像してみても、そのときに考えることって自分のことじゃないと思うんですよ。むしろ「早く仕事をしたい!」という“対象”としての仕事のことばかり考えてしまいそうで、自分を省みる以前の問題になってしまいそうですね。彼(本間)は自省行為に入っていて、反省しているのですが、僕はしないだろうなあ(笑)

――では、もしまとまったお休みが取れたらどうされますか?

そんなに長い休みは僕にはきっと無理でしょう(笑)。すぐに芝居をしたくなるでしょうね。芝居欲求だけにかられている気がします。

(「火車」上川隆也インタビューPART2へ続く)

関連人物