あえて“昼ドラ”に挑戦することの意味とは?大石静インタビュー

2012/01/22 17:00 配信

ドラマ

昼ドラ初挑戦となる大石静

「セカンドバージン」('10年NHK)、「蜜の味~A Tast Of Honey~」('11年フジ系)など数多くの話題作を手掛けた脚本家・大石静。大石の最新作が、上方芸能のトップに輝いたミヤコ蝶々(日向鈴子)の一代記を描いた昼ドラ「鈴子の恋」(東海テレビ、フジテレビ系)だ。

“昼ドラ”は、平日の月曜から金曜、お昼の決まった時間帯に放送される昼の帯ドラマのこと。そのため放送話数が60~65話と多く、収録のハードスケジュールなど役者、脚本家、スタッフへの負担は大きくなる。

そんな“昼ドラ”初チャレンジとなる大石。なぜ挑戦を決めたのか、テレビ全般にかける思いを話ってもらった。

「テレビは日常空間に置かれているもので、『毎日観る』というのはもっともテレビらしい形態だと思います。昔は朝、昼、晩と帯ドラマがあったのに、今はそれがなくなってしまった。きっと脚本を書くのも、演じるのも、大変だからでしょう。でも、長年テレビの仕事をやってきて思うのですが、毎日観るものがあるというのは、やっぱりすてきなことですね」

最近では昼帯の番組で、韓国ドラマを目にすることも多い。大石は、そのことに対しても率直な意見を明かす。

「韓国のドラマは本国では月曜、火曜など2日続けて放送する形態となっています。日本では、韓国で放送したドラマをまとめて毎日流す。だから奥様たちの気持ちがつかみやすいんだと思います。毎日放送することの意味は、これでもわかりますよね。日本のドラマのほうが、韓流ドラマよりも脚本も、映像もレベルが高い。何で『毎日放送すること』に挑戦しないのか、局の弱腰を感じます。予算や時間がないなど理由はあるかも知れませんけど、お金を掛けないで1つのセットで、色々見せるとかテクニックさえあれば、何とでも出来ると思います。各テレビ局が生き残っていくためにも、毎日観るというような形態を、もっと大事にしてほしいです」

また、帯ドラマへの挑戦は若手脚本家たちの成長も促すと語る。

「どんどん台本を書かなくちゃいけないので、若手の脚本家も上手くなるし、鍛えられます。たまに単発ドラマの脚本を書いたって上手くならないですよ。怒涛のように書かないと。 また、オリジナルドラマをやらないとダメです。小説家や漫画家にできることが、なぜ脚本家にできないとテレビ局は思うのでしょうか。自分の中から出てきたものを、ゼロからドラマに構築する作業をしないと、脚本家もプロデューサーも育ちません。昔は、オリジナルドラマが当たり前で、そういう時代にすごい作家が育ち、今でも第一線で活躍しておられます。各局、シナリオコンクールをやっているのですから、新人こそオリジナルで鍛えてほしい。プロデューサーも原作を探しているようではダメですよ。もっと自分の心の中を見つめないと」

大石が今まで携わってきた作品の数は60にも及び、ミヤコ蝶々を手掛けるのは2回目となる。

「'07に久本雅美さん主演で『ミヤコ蝶々ものがたり』(テレビ朝日系)を書いたときは、2時間の単発ドラマでした。その時は南都雄二との出会いと別れを書いてくれと言われ、蝶々さんの前半生は省きました。でも資料を調べると、蝶々さんの少女期から三遊亭柳枝との結婚と離婚のあたりが、すごく面白いのです。今回は長いスパンなので、前に諦めた部分を思いっきり書きました」

「ふたりっ子」('96年NHK)での内野聖陽、「セカンドバージン」の長谷川博己など若手俳優の抜てきにも定評がある大石。「私がすごいんじゃなくて、役者さん本人の力ですよ(笑)」と苦笑いしつつも、今回ミヤコ蝶々を演じる映美くららが作品のポイントだと明かす。

「映美くららは、一度宝塚歌劇の娘役でトップを極めているので、既に選ばれた人特有のオーラを持っています。美人ですし、芝居も達者だし、何よりも色気があります。ミヤコ蝶々の役をもらった喜びと気概、何が何でも成功させたいという思いは、画面からも感じられるのではないでしょうか。16歳から中年の成熟した年代までを演じますが、視聴者の皆様には、映美くららの成長も楽しんでいただきたいですね」