NHKは2月14日(火)まで東京・渋谷のNHK放送センターで「番組技術展」を開催中。この技術展は、日常の番組制作の中から生まれたアイデアを基に全国のNHKの技術者が製作した機材などを発表する目的で毎年開催されており、ことしで41回目を迎える。展示機材の中には実用化されたものから試作品まで含まれる。
近年、ドラマの制作には映像合成が多様されているが、従来は大型の機材が必要で、ロケ地へ持ち運ぶ場合、手間と運送コストがかかっていた。そこで開発したのが「VFX合成支援システム」。ノートパソコンにインストールできるため、軽量化されたほか、バッテリーでの運用も可能に。ドラマ「TAROの塔」('11年)では、主人公がパリで川に飛び込むシーンがあったが、この機材を使用し、パリの背景と、日本で別途撮影した主人公が飛び込み水面で浮かぶシーンを合成したという。ほか、沖縄ロケがあったドラマ「テンペスト」('11年)の群集を合成するシーンでも活躍した。
災害時に強いネットワーク作りも進められている。各地に設置された天気カメラがどこのものかすぐに分かるよう、地名を制作用のディスプレーの上に表示するシステムも展示された。これは、天気カメラから放送局へ送られてくる映像信号の中に、地名情報を挿入することにより自動で表示できるようになったもので、災害時に情報が錯綜した場合でも映像を取り違えることなく放送できる。また、通常天気カメラは携帯電話網を利用して操作するが、東日本大震災では、電話の不通が発生した。そこで、電話網よりも強いインターネット回線を通じ、電子メールを使って天気カメラを遠隔操作する技術も披露された。
ほか、これまでは高い所から俯瞰する映像はビルの屋上や電線工事などで使うクレーンにカメラマンが上がり撮影していたが、バルーンにカメラを設置し俯瞰撮影することができるバルーンカメラを開発。また、「折り畳み防滴型LEDライト」はすだれのような素材に4000個のLEDを装着。丸めて持ち運びができる上、防水加工も施されているため、ロケなどで威力を発揮することが予想される。
ロボットカメラ操作の体験型展示など、直接機材に触れることができる「番組技術展」は合計34点展示。特別展示として、東日本大震災の取材で活躍した放送システムや、「宇宙の渚」('11年放送、'12年に「NHKスペシャル」でも映像素材を使った番組を放送予定)でも活躍した、宇宙飛行士の古川聡氏が国際宇宙ステーションからオーロラなどを撮影したのと同型の超高感度カメラも公開されている。
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