アメリカを代表する不朽の名作「ウエスト・サイド物語」。'11年に「ウエスト・サイド物語」の映画製作50周年を迎えたことを記念して、当時の映画会社、ユナイテッド・アーティスツと、バーンスタイン協会による、新しいプロジェクトがスタートしている。最新鋭のスクリーンで、新しくリマスターされた映画を、音声とせりふのみを残して上映。それ以外の音楽部分は全て抜き出されていて、そのレナード・バーンスタインによる全曲を、世界各公演開催地の最高のオーケストラが、映像に合わせて生演奏する。映像を見ながらのコンサートは数多くあったが、映画本編とオーケストラによる“シンクロ・ライブ”は世界初の試みになる。
この企画は、'11年7月のロサンゼルスを皮切りに、ニューヨーク、シカゴ、シドニーで公開。ことし6月にはロンドンで開催し、9月には日本での公演が控えている。日本公演の指揮者は、“バーンスタイン最後の愛弟子”である、佐渡裕氏が務める。佐渡氏は'87年、アメリカ・タングルウッド音楽祭に参加し、バースタインに師事すると、'90年にバーンスタインが亡くなるまで、アシスタントとして世界各地の演奏会に随行した。その後、バーンスタインの遺志を継いで日本で「ヤング・ピープルズ・コンサート」を開催。'11年5月には、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会に、近年では小澤征爾以来の日本人指揮者として招かれている。
この公演を前に、故レナード・バーンスタインの娘、ジェイミー・バーンスタイン氏と、バーンスタイン・オフィスの元広報部長、クレイグ・アークハート氏が来日。「ウエスト・サイド物語」とレナード・バーンスタインについて語ってもらった。
――今回の“映画&オーケストラ”という企画はどのようにして生まれたのでしょうか?
ジェイミー・バーンスタイン「やはり技術の進歩があったことですね。映画のサントラのオーケストラの部分をきれいに排出し、ボーカルの部分を残すことが可能になったからです」
――50年前に製作された映画のオーケストラ・スコアを再構成することに苦労されたのではないでしょうか?
クレイグ・アークハート「非常に大変な作業でした。古い映画ですので、そのスコアが残っていなかった。バーンスタイン・オフィスの担当者が図書館や関係各所でリサーチをし、資料をかき集めて再編集しまして、フルオーケストラで演奏できるように再構築するまで1年ほどかかりました。学術的な面でもリサーチは大変なものでした」
ジェイミー「ハリウッドでは膨大な予算を使いますので、劇場版の音楽と映画版の音楽のスケールは倍以上違うのです。これだけの大きなスケールですから、再現することも非常に困難なものでした」
――それだけの作品ですと、過去に映画を鑑賞した人にとっても新しい発見があるのではないでしょうか?
ジェイミー「インパクトは非常にあると思います。音楽的も視覚的にも同じものではありますが、音のスケールはすばらしいものになっております」
クレイグ「ライブのオーケストラを聴きながら映画を観るということは、今までにないようなすばらしい経験になると思います。観にきてくださった観衆の方や批評家の方々が口をそろえておっしゃるのは、心から感激をしたと。映画とコンサートを合わせた公演とはこのような姿であるべきだという言葉をいただきました」
――それでは、レナード・バーンスタイン氏はジェイミーさんにとってどのような父親でしたでしょうか?
ジェイミー「生まれたときから父と音楽は常に私の近くに存在していましたね。家にはいつも音楽が流れておりました。父はクラシックのみではなく、ジャンルを問わず何でも楽しんで鑑賞しておりましたので、ビートルズ、ローリング・ストーンズ、マイケル・ジャクソンなども好んで聞いておりました。私が小さいころ、父が音楽の説明をする時にポップミュージックを用いるんですよ。カーステレオを流している時に、『よく聞いてごらん。ここの音で転調するだろう。そしてこんなふうに展開していくんだよ』という話をしてくれたんですね。その延長線として『ヤング・ピープルズ・コンサート』があり、同じような手法で音楽の話を展開しておりました」
――ありがとうございます。最後に日本公演を楽しみにしているファンの方へメッセージをお願いします。
ジェイミー「映画『ウエスト・サイド物語』が好きな方にとっては、大きいスクリーンで、今までにないような大迫力の音響効果で観ることができますので、二重の喜びになると思います。どうぞ楽しんでください」
クレイグ「全部言われました(笑)。楽しみにしていてください」
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