アニメ映画「サカサマのパテマ」吉浦康裕監督インタビュー(2)~パテマ、エイジ…。息づくキャラクターたち~

2014/03/31 20:31 配信

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インタビューその(2)はキャラクターについて聞いた(C)Yasuhiro YOSHIURA/Sakasama Film Committee 2013

――各キャラクターはどのように生まれたのでしょうか。

吉浦:最初は、パテマの方が内向的で、エイジの方が活動的というアイデアだったんです。でも、逆さまの状態でパテマがこの世界にいる、ということは、彼女はどこか別の社会からやって来たということですよね。そうするとむしろパテマは活発な性格でないといけない。そこで必然的にエイジの方は、ちょっと内向的にしよう、ということになりました。

――パテマというキャラクターを描いていく上で、大事にしたことは何でしょう。

吉浦:やはり、出会う状況が状況のキャラクターなので、誰もが「助けたい」と思えるキャラでないとダメだろうと(笑)。キャストの藤井(ゆきよ)さんにも「とにかく嫌みのない演技をしてください」とお願いしました。

――エイジはどうでしょうか。

吉浦:エイジはちょっと迷いました。最初は正統派の冒険活劇ものの主人公として書いていたんです。でも、脚本を読んでもらった女性スタッフの反応が良くない。エイジがいまいちカッコ良く見えないと(笑)。それで「どうしよう」となりました。パテマはお姫さま的にかわいらしくするということで落ち着いていたので、エイジは対比としてちょっとアンダーなキャラにしてみたらどうだろう、と。じゃあアンダーで、しかもかっこいいキャラというのはどういうタイプか? きっと不良っぽくて影があって、「耳をすませば」('95年)の天沢聖司みたいな雰囲気を持っているんではないかと。そんなイメージでせりふを書いてみたら、うまく転がり始めたんです。男性キャラクターで難しいのは、ちょっと油断すると自分自身の投影になっちゃって、逆にうまくせりふが出てこなくなっちゃったりするんですよ。むしろ自分とはタイプが違うキャラにした方が、せりふは書きやすいんです。

――悪役であるイザムラをどう描くかもこの作品のポイントだったのではないでしょうか。

吉浦:はい。悪者は悪者でもファンが付くような悪者にしたかったというのがひとつ。もうひとつ思い切ったのは、悪者には悪者の事情があるという点はバッサリと切り捨てたことです。もう気持ちいいぐらい悪者にしようと思って。そうなると、逆に書いていて一番気にすることがない楽しいキャラになりましたね。イザムラはとても人間的なんですよ。表情も豊かだし、サカサマ人を「罪人」っていっている割には、パテマを手込めにしようとする嫌らしさもあって。非常に人間臭いというか(笑)。今回は正統派冒険活劇映画にしようと思ったので、悪役は悪役らしくストレートにした方が作品として幸せになるかな、と思ったんですね。

――冒険もの、恋愛ものの要素がありながら、キャラクターのやりとりには随所でユーモアも織り込まれています。パテマを家においてエイジが出掛けようとするところ、ラスト近くで、パテマの幼なじみのポルタとイザムラの部下だったジャックが会話するところなど印象的です。

吉浦:ロンドン、パリなどで上映した時は、パテマがエイジを何度も呼び止めるくだりがバカ受けしまして、ほっとしました(笑)。「サカサマのパテマ」に限らず、どの作品もユーモアを込めたいな、というのはあります。僕は高校時代に演劇をやっていたこともあって、芝居的な笑いを入れ込んでみたいんです。今回も、シリアスな物語ではあるんですが、箸休め的にそういうシーンを入れたいなとは思っていました。

――(3)に続く