NHKの大河ドラマ「軍師官兵衛」で、一代で備前、美作の2カ国の国主に昇りつめた戦国大名・宇喜多直家を演じる陣内孝則にインタビューを行い、役どころや、エピソードへなどを聞いた。
直家は下克上の乱世において、毒殺、謀殺、裏切りなど手段を選ばず成り上がっていき、例を見ない悪らつさで知られている。織田軍の中国攻めの際も、毛利につくか織田につくか、旗色を明らかにせず、官兵衛は翻弄(ほんろう)されてしまう。
――宇喜多直家を演じての手ごたえは?
意外だったのが、若い人がこんなに宇喜多直家のことを知っているということにびっくりしたんです。面白い人なんですよ。人を食ったところがある、まさに乱世の武将という感じでした。ただヒットマンを雇ったりとか、毒殺とかってイメージがあるので、撮影現場に高いメロンパンを差し入れしたとき、スタッフが「毒入りじゃないんですか?」って冗談言ってきて、「お前は食うな」って言ってやりました(笑)。
――宇喜多直家を演じる上で心掛けたことは?
この人のポリシーというか、生きていくための自分の指針を持っていかなければと思いました。この人にとっては、勝ち抜くことが正義だったと思うんです。祖父が目の前で殺されたりしていて、彼にはそういう厳しいスタート地点があったんです。そういった背景を考えてイメージを構築して演じています。
――宇喜多直家という人物についてどう感じていますか?
一番この時代の人間を体現した人なんじゃないかなと思います。当時は裏切ることは決してひきょうなことではない。生きるか死ぬかですからね。ましてや家臣もいれば、家族もいて、それを守るために悪党と呼ばれながらも、ちゃんとした彼なりの生き方をしていたんだと解釈しています。
――宇喜多直家は官兵衛をどう思っていたのでしょうか?
宇喜多は官兵衛を買っていたんだと思います。買いつつ利用してやろうって気持ちがあったのかな。軍師としての力量も認めつつ、官兵衛を媒介として生き延びてやろうというしたたかな計算があったんじゃないでしょうか。
――主演の黒田官兵衛役・岡田准一さんの印象は?
岡田くんは役に対して真摯(しんし)というか、誠実ですね。視聴者の方の中には、岡田くんの黒田官兵衛がヒーローとして登場することを望んでいる人もいたと思うんですが、彼はちゃんと、周りの人間のアドバイスを受け止めながら成長していく、等身大の官兵衛を演じているところがすごくいいなと思いました。放送を見ていても、彼の存在感がどんどん増しているのが感じられて、それは彼のこれまでの下地があったからだと思います。
――岡田さんとの共演時のエピソードを教えてください。
彼は気持ちで演じているので、せりふをとばすことがあるんです。とばしても演技は流れるんですけど、ぼくは意外とせりふをきちんと言うタイプなんで、「あれ?とんだ」って(笑)。終わったあと、「おい岡田、おまえそうやって役者をつぶしていってるんだろ」って皮肉を言ったら、「じゃあ、ちゃんと言います」って(笑)。
――若手の共演者のキャスティングはいかがでしたか?
高橋一生くん、濱田岳くんとか、あの世代は、いわゆるザッツ時代劇、ザッツ大河みたいな演技をしない。かといって浮いていないのがすごく新鮮でいいですね。速水もこみちくんは誠実に時代劇たらんとしていて、一生くんと岳くんはいまどきの芝居で、このコントラストのキャスティングが非常にうまいなって思いました。
――今後の見どころを教えてください。
これから官兵衛が軍師としての存在感を増していくところが見どころですね。それと織田対毛利の城をとったりとられたりの丁々発止があって、そんな中で宇喜多の人を食った動きは面白いと思います。第17話(4月27日放送)で、仮病をつかっていた宇喜多がいけしゃあしゃあと「病がいえました」って登場してくるシーンがあるんですけど、ぼく大好きなんです(笑)。ぜひ見てもらいたいですね。
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