番組終了後も愛され続ける「てさぐれ!部活もの」の魅力

2014/05/31 10:06 配信

アニメ

イベント「てさ部部会」の登壇者。萌舞子役の上田麗奈(左から3番目)、監督の石ダテコー太郎(左から2番目)らはお酒を呑みながら、掲載判断に困る奔放なトークを繰り広げた

5月29日、新宿のトークライブハウス・ロフトプラスワンでアニメ「てさぐれ!部活もの あんこーる」のファンイベント「てさ部部会vol.1~萌舞子の本音~」が開催。会場には約200人近くのファンが詰め掛け、立ち見客も出るほどの盛況を見せた。

「てさぐれ!部活もの」は日本テレビで'13年10月~12月に放送されたギャグアニメで、ことしの1月~3月には第2期の「てさぐれ!部活もの あんこーる」を放送。

監督は元お笑い芸人という経歴を持つ石舘光太郎氏(「あんこーる」では“石ダテコー太郎”名義)が、声優陣は西明日香、明坂聡美、大橋彩香の若手実力派声優3人に、アイドル音楽劇グループ・夢みるアドレセンスの荻野可鈴を加えた4人が主演を務めた。

関東圏のみの深夜15分枠で放送をスタートさせた「てさぐれ!部活もの」(以下、本作)は次第にアニメファンの注目を集め、放送に合わせて本編が配信されたニコニコ動画でも配信後に行われる満足度アンケートで毎回90%を超えるなど人気ぶりを証明。さらに放送終了から2カ月経った今でも継続的に番組イベントを始めとするファンとの交流が行われ、9月には約2000人の収容人数を誇る渋谷公会堂でのイベントも予定されている。

■“予定不調和”の面白さをアニメで実現した作品

本作がこれほどの人気を獲得した理由の一つには、既存のアニメのセオリーにとらわれない、作品上の仕掛けにあった。

各回に共通するストーリーは“部活動の新しいありかたを考える”がモットーの部活・てさぐり部を舞台に、西が演じる部長の結愛ら女子高生4人が「新しい○○部(野球部、剣道部など)」をあれこれ考えて一人ずつ発表していくというもの。

そして「新しい○○部」を発表するパートはすべて演じる声優たちの大喜利的なアドリブにより構成されていた。結果、本作はアニメながら、“たまたま聞こえてきた女子学生の会話”や“生放送のバラエティー番組”を観るような、次に何が起こるかわからない、“予定不調和”の面白さを味わえる作品になった。

放送時間の何倍もの収録時間を費やして行われていたという声優陣による“大喜利”は、回を重ねるごと脱線に脱線を重ねていった。間を外してしまったり、共演者の回答の意味を理解できず黙りこんでしまうこともしばしば。突拍子のない答えの応酬が恒例になり、1日に数話分を収録するためか疲労感によりお題への回答が投げやりなったり、果ては本番中にお腹を鳴らしてしまうなど、本来はNGになるようなシーンもそのまま作品内に組み込むことで、ファンも気兼ねなくツイッターやニコニコ動画で4人に“ツッコミ”を入れて楽しめる作りにもなっていた。

さらに、声優陣の個性にも自然と注目が集まった。特にてさぐり部の最年少部員・心春役の大橋は、それまで「エウレカセブンAO」('12年)などの作品で演じてきた正統派声優のイメージが一転、数々の天然発言で陽菜役の明坂を困惑させたり、“どんちき”なる造語を突然口に出し周囲から突っ込みを受けたりと、大ボケキャラとしての新境地を開拓している。

ほかにも、西のすぐに下ネタに走るボケ根性や、本作出演を黒歴史と言ってはばからないネガティブキャラの明坂、葵役の荻野の竹を割ったような正直な性格など、彼女たちの素の部分もそれぞれのキャラクターに反映され、彼女たち自身が放送中から出演ラジオやツイッター、ブログなどで作品について積極的に言及することで、影響は多方面に波及し、さらなるファン獲得につながっていった。

■制作スタッフの熱意も人気の原動力に

また、制作スタッフ陣がファンと活発に交流を行なっていることも、本作が持つ大きな魅力になっている。

現在フォロワー数約1万3000人を誇る番組の公式ツイッターでは、放送スタート前から番組プロデューサーの“ぬこP”氏と“よしお”氏らによる積極的な投稿が行われ、ツイッター用のアイコン画像を配布するなど、ウェブ上で口コミ的なアプローチを実施。また、本作のファンという洋菓子店の店主との交流がきっかけで洋菓子店とのコラボ商品が開発されたりと、ビジネス展開においても本編同様セオリーからも逸脱した自由な取り組みを見せており、結果、作品や声優陣と合わせて制作スタッフもファンからの認知と人気を集めることになった。

制作スタッフは番組終了後も作品のイベントを主催・参加しており、4月に秋葉原で行われ約500人近くを動員した「てさぐれ!催しもの」を皮切りに、5月以降も定期的に行われることが発表されている。また、現在の公式ツイッターも日に約10件投稿されるなど変わらぬ作品への熱意を感じさせており、29日に行われた「てさ部部会Vol.1」では、登壇者のうち萌舞子ほか18役を務める声優の上田麗奈以外は全員が制作スタッフという布陣ながらも、登壇者全員が多分に冗談を交えながら作品への熱い思いを語り、イベントは大盛況のうちに幕を閉じた。

既存のアニメ的なセオリーを崩していく戦略で確固たる人気を獲得した「てさぐれ!部活もの」。第3期放送への期待も高まる中、次回の番組イベントは6月14日(土)に東京・汐留の日テレホールにて大橋とスタッフが出演する「てさ部部会vol.2~どんちきショー2~」が予定されている。