ことし3月から始まり、週平均視聴率を開始から12週連続で21%以上をたたき出し、絶好調の連続テレビ小説「花子とアン」(視聴率はビデオリサーチ調べ。関東地区)。前作の「ごちそうさん」、前々作の「あまちゃん」の人気に後押しされながらも、非常に高い評価を得ている。'61年に「娘と私」から始まり、現在までの53年間、数々の名作と名ヒロインたちを世に輩出してきた連続テレビ小説の魅力を考察した。
■オーディションによって選ばれるヒロインたち
大女優への登竜門ともいわれる連続テレビ小説のヒロインは、基本的にオーディションで抜てきされるが、近年ではオーディションなしでキャスティングされることも増えている。「ゲゲゲの女房」('10年)の松下奈緒、「おひさま」('11年)の井上真央、「梅ちゃん先生」('12年)の堀北真希らは直接オファーを受けてキャスティングされた。近年のオーディション組のヒロインは、「あまちゃん」('13年)の能年玲奈、「てっぱん」('10~'11年)の瀧本美織、「カーネーション」('11年)の尾野真千子ら。それまで目立った活躍はみられていなかったが、連続テレビ小説を経て、今では立派に主役を飾れる女優として活躍している。半年間もの間、歴史あるドラマの主役に立たされることによって演技力が鍛えられることもあるが、視聴者側としては実力ある新人女優の新鮮さがその後の人気につながっている。過去にさかのぼると、「つばさ」('09年)の多部未華子、「瞳」('08年)の榮倉奈々、「ちりとてちん」('07~'08年)の貫地谷しほりは記憶に新しい。「ファイト」('05年)の本仮屋ユイカ、「てるてる家族」('03年)の石原さとみ、「ちゅらさん」('01年)の国仲涼子も連続テレビ小説出身だ。90年代では、女優として活躍目覚しい「あすか」('99~'00年)の竹内結子や、現在バラエティーでも活躍を見せる遠野凪子(現・遠野なぎこ)も「すずらん」('99年)でヒロインの座を射止めている。
■震災被害を受けた人々を描く
さまざまな時代や歴史を映し出してきた連続テレビ小説。「あまちゃん」では、終始コミカルな展開でありながら、東日本大震災で被害に遭った岩手の状況を描写し、主人公たちの苦悩がリアルにつづられた。それから約90年前、関東大震災を描いたのが「凛凛と」('90年)と「ごちそうさん」。「ごちそうさん」では、大阪から見た関東大震災という視点で東京から避難に来た人たちとのエピソードが活写された。「甘辛しゃん」('97~'98年)では、'95年の阪神・淡路大震災の被災状況を表現。佐藤夕美子演じるヒロイン・泉の義理の兄・拓也(岡田義徳)が倉の下敷きとなり、命を落とすシーンは衝撃的だった。
■実在の人物をモチーフにした物語設定
「赤毛のアン」の翻訳者・村岡花子が主人公の「花子とアン」のように、実際の人物を描かれることも多く見られる。「ゲゲゲの女房」は漫画家・水木しげるを向井理が演じ、その演技力の高さを見せつけた。「あぐり」('97年)は小説家・吉行エイスケの妻をモチーフにしたストーリー。望まない結婚を強いられるヒロインだったが、夫・望月エイスケ演じた野村萬斎は素晴らしい存在感を示し、その突然の死は、視聴者に大きな衝撃を与えた。「カーネーション」ではデザイナー・小篠綾子の生涯にスポットを当て、「モテキ」の大根仁監督をして「近年の朝ドラの中で最高傑作だ」と言わしめている('12年NHK総合で放送されたトーク番組「新春TV放談」にて)。魅力的な女性の恋愛・結婚・子育てなどリアルな人生を追求し、半年かけてじっくり描くことによって視聴者の深い共感を呼ぶのではないだろうか。
■新しい試みを見せる今後の朝ドラ
連続テレビ小説は時代背景や舞台なども比較的自由度が高い。9月から放送が開始する「マッサン」では、初めて外国人がヒロインを演じるという試みを行い、今から関心度は高まっている。そして来年の「まれ」は、石川県を舞台にした女性パティシエの物語。近々オーディションも開始される。今後どのような作品やヒロインたちが登場し、日本の朝を盛り上げてくれるか楽しみだ。
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