NHKの大河ドラマ「軍師官兵衛」で、江口洋介演じる織田信長に従いながらも、反旗を翻してしまう播磨の武将・別所長治を演じる入江甚儀にインタビューを行い、役どころやエピソードなどを聞いた。
別所長治は13歳という若さで別所家の家督を継ぎ、二人の叔父に挟まれ当主とは名ばかりの立場に甘んじたまま成長する。後に黒田官兵衛(岡田准一)の説得によって当主としての自覚が芽生え、織田に従おうとするが、毛利の調略によって反旗を翻すことになる。やがて本陣である三木城は織田軍による兵糧攻めに遭い、長治は悲しい末路をたどることとなる。
――大河ドラマ初出演のオファーを受けたときの気持ちはいかがでしたか?
大河ドラマといったら、日本に住んでいる人なら誰もが知るような歴史的な作品で、そこに出演させていただけると聞いたときは、うれしい気持ちとともに不安な気持ちになりました。別所長治という役を積み上げていって、見てくださっている皆さまに、長治の葛藤が伝わればいいなと思いました。
――若くして当主になった長治の壮絶な人生をどのように感じましたか?
長治は若くして当主になって、叔父の存在のせいで自分の意志を通せないというのはつらかったと思います。右も左もわからない状態の中、官兵衛に助けてもらって、自分の意志を通すことができました。そうして別所家の家臣を何人も養い、何千人もの人間をまとめられるすごい人間だったと思います。最後に家臣を守るために自ら切腹した覚悟は素晴らしいものだなと思いました。
――自ら命を絶つ最期のシーンはどのようなお気持ちでしたか?
今回、切腹するシーンは描かれなかったんですけど、とてもつらかったですね。死んだ子供に言葉を投げかけるシーンは、言葉を出すたびにつらくなりました。自分がこんな状態に置かれてしまったら嫌だという気持ちがありましたが、家臣に対して役目を全うできるという意味では演じがいがありました。兵糧攻めに遭っていたので、長治もガリガリだったんです。実際に役作りで何日か前から炭水化物を抜いたりして減量しました。岡田(准一)さんにも「やせた?」って言われて、気付いてもらえてうれしかったです。
――最終的に官兵衛を裏切る形になってしまった長治の気持ちは、どのようなものだったんでしょう。
難しいですよね。一度信じ合ったのに裏切るといのは、そこが長治の幼さというか、最後まで貫き通せない意志の弱さだったと思います。自分の悪い部分には気付いていると思うので、そこの葛藤が常にあったんじゃないかと思います。
――官兵衛に対する気持ちは?
唯一心から信じられる人だと思っていました。官兵衛は人とのつながりを大切にする人だったので、最初から最後までこうした方がいい方にいくよという思いやりが伝わってきて、道を正そうとしてくれた官兵衛の気持ちが岡田さんから伝わってきました。最後のシーンは、「ここで落ちないと皆殺しにするぞ」と官兵衛が長治を脅すシーンだったんですけど、岡田さんの目を見ているとどこか思いやりがあって、長治の道を正してくれている気持ちが現れていました。
――共演時の岡田さんの印象はいかがでしたか?
岡田さんはいつも優しくしてくださいました。あまり一緒にいられる時間はなかったんですけど、クランクインのときに声を掛けてくれたりとか、常に気を使ってくださいました。すごくついていきたいと思える人でしたね。
―― 一番印象的だったシーンは?
最後のシーンで、辞世の句を詠んだところです。もっと悲しくなるかと思ったんですけど、長治がすっきりした気持ちだったので、意外にも自分もすっきりしていました。それは本当に自分で選んだ道だったから、これで良かったんだって、長治の人生の中で最も自分の意志をはっきりできたシーンだと思います。
――最後に「軍師官兵衛」を見ている視聴者の皆さんにひと言お願いします。
長治の葛藤する姿を見ていただきたいのと、長治の最期を気にかけていただきながら、「軍師官兵衛」を楽しんでいただければなと思います。
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