実力派・個性派俳優たちの“連ドラ初主演”作品が目立つ今期ドラマ。ドラマ「新解釈・日本史」(TBS系)は、個性派俳優・ムロツヨシが連ドラ初主演となる作品で、監督・脚本などを「天魔さんがゆく」('13年、TBS系)、「裁判長っ!おなか空きました!」('13年、日本テレビ)の脚本・演出で知られる福田雄一氏が担当。日本史の有名エピソードを題材にした、いわゆる“歴史ドラマ”でありながら、ムロや上地春奈、お笑いコンビのシソンヌらキャストにより随所に挿入されるギャグや宇宙人が登場するなどの視聴者の意表をついたはちゃめちゃな演出で人気を集めている。
ムロはこれまで、ドラマでは「勇者ヨシヒコと魔王の城」('11年、テレビ東京系)や「メグたんって魔法つかえるの?」('12年、日本テレビ)、さらに現在公開中の映画「薔薇色のブー子」「女子ーズ」などの福田演出・監督作品に出演。各作品でさりげない個性を光らせる名脇役として作品を支えているが、ドラマ「新解釈・日本史」では福田氏はなぜムロを主演に起用したのか?
その謎を解くため、今回はドラマ「新解釈・日本史」の前田利洋プロデューサーに、主演にムロを起用した経緯や福田作品ならではともいえる制作の裏話についてお聞きした。
■すぐに決まった作品コンセプトと“主演・ムロツヨシ”
――まずドラマ「新解釈・日本史」の企画はどのような過程で生まれたんですか?
僕らスタッフ陣と福田雄一監督で初めて打ち合わせした後には、作品の概要が固まっていました。まず、福田さんが歴史ものをやりたかった。あと、福田さんの深夜ドラマの作り方として、ザッピングしながらテレビを見ている視聴者がフッと止まってくれる、インパクトのある画が作れるものがいい、という2つの方向性があったんです。
――そこから「歴史をifの世界で新解釈してみる」というアイデアも生まれた?
そうですね。福田監督は前から、まさにドラマ「新解釈・日本史」のような視点を持っていたらしいんです。その時は「坂本龍馬って、いろいろ偉業は言われているけど、今に置き換えて考えるとチャラい敏腕プロデューサーじゃん!」という“新解釈”ネタで盛り上がって、これは面白いと。
――福田さんが歴史ものをやる、というところも意外でした。
福田さんの持つ魅力として、ファンのパイの大きなところで視点を変えて刺さるものを作る、ということがあると思うんですよ。テレビゲームという大きなパイから「勇者ヨシヒコと魔王の城」を作ったり、ホラーという大きなパイから「天魔さんがゆく」を作ったりとか。
だから歴史もパイが大きいからいいじゃないか、“みんなが持っている偉人像からちょっと視点を変える”という仕掛けもいいじゃないか、という話で盛り上がったんですね。だからもう最初の打ち合わせで作品の方向性は決まっていた、と言っても過言じゃなかったと思います。
――その中で主演をムロツヨシさんにする、というのはどこで決まったんですか?
それもすぐでした。というのも、打ち合わせしたのが福田さん演出で、ムロさんも出演されていた「フル・モンティ」というミュージカルの舞台本番前だったんですよ。それで、主演はどうしようかという段階になったときに、福田さんから「ムロさんはどうですか?」と提案があったんです。
――福田さんのアイデアだったんですね。
そうです。そこで、プロデューサー陣も福田さんも全員が「確かに、ムロさんだよなあ」となったんです。僕としては、ムロさんは個人的にもごく好きな俳優さんでした。もちろん、世間的な評価でも“ネクストブレイクする俳優”の7位に入っていましたし、話題性の面でも十分と思っていました。でもまあ、とにかく「フル・モンティ」のムロさんが抜群に面白かったんですよ。だからもう、僕の中ではムロさんで間違いないと。
あと、福田さんは、ムロさんが「muro式」という舞台で薩長同盟を題材にしたお芝居をやられているのも見ていたみたいです。だから、歴史ものをやるならムロさんだっていうところがあったのかもしれません。
■宇宙人の登場もギリギリ“新解釈”
――なるほど。前田さんが感じる、役者としてのムロさんの魅力はどこにあると思いますか?
いい意味で“ずるい”存在ですよね。主演じゃないところでも、ちょっと出ただけでその場を持って行っちゃうじゃないですか。
――それはムロさんが“初の連ドラ主演役者”として臨まれている本作でも変わらず?
変わらないと思います。というか、現場を見ていてもムロさんに“主演役者だから”みたいな気負いは全然ないように感じています。本人もそういうのはあまりないとおっしゃっていました。だから、ムロさんは主演になっても変わらずムロさんでしたね。
――ドラマ「新解釈・日本史」のプロットはどう固めていったんですか?
プロットは、先ほど言った打ち合わせの延長みたいに作り上げています。打ち合わせには本編で歴史解説をお願いしている東進ハイスクールの金谷俊一郎先生にも来ていただいて、まず福田さんが歴史上の人物の名前を出して「この人、実はこうなんじゃない?」とネタ出しする。それで、そこに金谷先生が「そういうことなら、史実ではこういうこともあったんですよね」って教えてくださるんです。それで、史実とどこかで繋げられるところがあれば、ネタとして採用すると。
――あくまで史実ありきの「新解釈」だと。
いくら福田さんのネタが面白くても、まったく史実と反することならダメなんです。だから、伊能忠敬の回では宇宙人が出てきたりしていますけど、あれも一応「伊能忠敬の正確な世界地図は、日本人だけではなく外国人のシーボルトもペリーも“この世の者が作ったものなのか”というぐらい驚いた」というところからふくらませているので、まあギリギリ「新解釈」かな、という感じで作っていました(笑)。
(後編へ)
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