「自分は未熟者です」“監督”齊藤工がスタッフに感謝!

2014/06/23 18:06 配信

映画

監督業に挑んだ斎藤工(監督名義・齊藤工)は「映画の監督の仕事は、サッカーの監督の仕事に近い」と分析

ソフトバンクモバイルの総合エンタメアプリ・UULA[ウーラ]で配信中のショートフィルム「半分ノ世界」で監督を務めた俳優・斎藤工(監督名義・齊藤工)に、同作に懸ける思いを聞いた。同作は、5月29日から6月15日まで開催された国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア 2014」に出品。物語は、全日制高校に通う一人の女子高校生と定時制高校に通う青年が机を介して心の交流を描くラブストーリーで、「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア 2014」とUULAとの特別製作プロジェクトとして制作。大橋トリオの楽曲「HONEY」の歌詞に込められた世界観をモチーフにしている。

――監督として今作に関わった率直な感想を教えてください。

実は、もともと監督志望ではなく、企画や製作、買い付けやキャスティングをやりたかったんです。そんな中、(国際短編映画祭を主宰する)別所哲也さんから「監督」というお話を打診していただきました。監督ができるとは思っていませんでした。映画の監督の仕事は、サッカーの監督と近いなと思います。サッカーの監督は、フィールドに入ることができません。なので、その前で戦術を伝えたりします。映画監督も微調整などはしますが、戦うのは現場のピッチに立っているスタッフやキャストなんですよね。人に委ねるのが監督の仕事なんだなと思いました。

――監督として、支えてくれる現場スタッフとどのように接してきましたか?

変に背伸びをしないということです。自分が未熟であるということを表明することで、周囲が自然と足りない部分を補おうとしてくれるんです。補ってくださる皆さんにとっては余計な労力かもしれませんが、未熟な監督を補うという縮図ができたと思います。そこに自分がしゃしゃり出るのではなく、それをありがたく受ける。脚本家の方に「求心力がすごい。人運だ」と言われました。別所さんに声をかけていただけたのもそういうことだったと思います。

――実際に監督をやることに決まった時、どのようなお気持ちでしたか?

短編映像と音楽を融合させたショートフィルムの概要の説明を受けた時、これは劇場用の長編映画とは異なり、現代映画の発展形だと思いました。また、俳優という仕事をしていると、連続ドラマなどの仕事のループからなかなか抜けられないのですが、15分のショートフィルムなら、俳優と監督を分業という形でギリギリ成立させられそうだと感じました。

――15分間の限られた時間の中で、伝えたいメッセージを集約させるのは難しかったのでは?

(今作は)楽曲からインスパイアされたものでしたし、ジャンルも恋愛というルールがある中での制作でした。実は、選択肢が多すぎると、自由すぎて逆に不自由だったりするので、(今作のように)選択肢が限定されていると、いろんなものがクリアになるんです。それと、物語と大橋トリオさんの楽曲の接点を具体的なものというより、感覚的なものにしたいという思いが漠然とありました。歌詞も具体的な恋愛を描いたものではなかったので、僕の中では、これはいろんな発展ができるなと。曲ありき、脚本ありきだと思いましたね。そこには特にこだわりを持ちましたね。

――映画で大事にしているものは?

映画って余韻だと思うんですよ。イギリス映画に多いんですが、シビアなテーマの内容でも最後に救いがある。そんな映画を見終わった後は、日常の光がちょっと増して見えたりすると思うんです。(今作も)最後に救いを持ってくる構図にしたいと思いました。今作は「人の死」や「車椅子」など、ドラマを制作する上で分かりやすくて、ちょっとずるいテーマです。車椅子の人がどれだけ不自由しているのがというのは、健常者から見たものとイコールじゃないと思います。実際、僕たちが思う以上にたくましく、足りないものを何かで補おうとする強さを持っているんです。そういう強さを「弱者」として描いてしまうと失礼に値すると思っていたので、「ハンディキャップ」を「反動」として描くことで力強さを描きました。

――キャスティングについてはいかがですか?

最初は、ヒロインの相手役の青年をおじいちゃんにしようと思っていたんですよ。絶対に恋愛に成立しないような並びにしたかったんです。だた、周囲から「恋愛」という要素がほしいというオーダーがあり、今の並びになりました。とはいえ、同世代にしてしまうとベタすぎるので、映画「レオン」('94年)で、(殺し屋の主人公と家族を殺されたヒロイン)の二人の年齢層をモデルにしました。女性から見たら、恋焦がれる対象であり、男性から見たら守るべき対象という印象が持てる絶妙なバランスに着地できたと思いますね。

――最後にファンに向けてメッセージをお願いします。

映画は見ている時間は、小さな旅に出ている気がしていて、いろんな人の人生をシェアさせてもらっている時間であると思っています。今作が、見てくれた人に対して、背負っちゃっている十字架など、さまざまな問題に向き合う原動力の足しなればと思います。また、作品は見てもらわないと作品が成立しないので、ダマされたと思ってぜひ見てほしいですね! 僕の身に余るほどのキャスティングと制作陣が集まり、そのみんなが才能を発揮してくれているので、大変満足したものができました