6月も下旬に入り、4月期連続ドラマも一段落したこの時期。各メディアでこぞって取り上げられるのは7月スタートの連続ドラマ。「HERO」(フジテレビ系)や「金田一少年の事件簿N(neo)」(日本テレビ系)などの王道アイドル主演作に加え、「家族狩り」(TBS系)や「昼顔~平日午後3時の恋人たち~」(フジテレビ系)など、背筋も凍るドロドロ系など、多種多様。そこで、今回は人気脚本家の執筆作品にスポットを当て、新ドラマをナビゲートしよう。
●尾崎将也「吉原裏同心」「匿名探偵」「ラスト・ドクター~監察医アキタの検死報告~」
まず、今クール3本掛け持ちという売れっ子ぶりを見せるのは尾崎。他のドラマより一足先に6月26日(木)にスタートする小出恵介主演の木曜時代劇「吉原裏同心」(NHK総合)をはじめ、約2年ぶりに復活する高橋克典主演ドラマ「匿名探偵」(テレビ朝日系)、そして寺脇康文が変わり者監察医を演じる「ラスト・ドクター~監察医アキタの検死報告~」(テレビ東京系)の個性あふれる3作品を手掛ける。尾崎といえば、4月期に放送された「ブラック・プレジデント」(フジテレビ系)はもちろん「結婚できない男」('06年、同)や「アットホーム・ダッド」('04年、同)など、コメディー色の強い作品を得意とする実力派。そして、彼の代表作といっても過言ではないのが堀北真希主演で好評を博したNHKの連続テレビ小説「梅ちゃん先生」('12年)だろう。第21回橋田賞をはじめ、第74回ザテレビジョンドラマアカデミー賞など各TV誌の賞レースを総なめにした。今クールは時代劇、ハードボイルド、職業モノというバリュエーション豊かなラインナップ。独特のセンスが光るせりふにも注目したい。
●大石静「ゼロの真実~監察医・松本真央~」「家族狩り」
次に武井咲がIQ150の天才監察医を演じる「ゼロの真実~監察医・松本真央」(テレビ朝日系)と直木賞作家・天童荒太のベストセラー小説を松雪泰子主演でドラマ化する「家族狩り」の2本を掛け持ちするのは大石。大石はこれまで「セカンドバージン」('10年、NHK総合)やNHK大河ドラマ「功名が辻」('06年)などの話題作を多数執筆してきた。特に舞台出身の無名若手俳優の抜てきに定評があり、NHK連続テレビ小説「ふたりっ子」('96年)の内野聖陽や「オードリー」('00)の佐々木蔵之介、同じく「オードリー」の堺雅人、そして「四つの嘘」('08年、テレビ朝日系)の長谷川博己など、枚挙にいとまがない。舞台出身というわけではないが「ゼロの真実-」の和田正人、「家族狩り」の市川知宏ら若手俳優の活躍に注目したい。
●井上由美子「昼顔~平日午後3時の恋人たち~」「おやじの背中」(10本の内1話のみ)
同じく日本を代表する脚本家・井上は「昼顔-」、オムニバスドラマ「おやじの背中」(TBS系)の1ストーリーを執筆。「14歳の母」('06年、日本テレビ系)や「白い巨塔」('03年、フジテレビ系)などの社会派作品を筆頭に、「GOOD LUCK!!」('03年、TBS系)や「エンジン」('05年、フジテレビ系)など木村拓哉主演で人気を博した作品など、数多くのヒットドラマを手掛けた“脚本家界の女帝”。テレビ朝日の新人シナリオ大賞の選定委員を務めるなど、若手の育成にも力を入れているが、自身もまだまだ最前線での活躍が期待される。今回は上戸彩主演のドロドロ系ドラマで、“平日昼顔妻”という言葉を社会現象にできるか?
●福田靖「HERO」
そして当然注目度が高い福田の「HERO」。「ガリレオ」シリーズ('07年ほか、フジテレビ系)や「DOCT0RS~最強の名医~」('11年ほか、テレビ朝日系)に加え大河ドラマ「龍馬伝」('10年、NHK総合)など、変わり者だがズバ抜けた才能を持つ男性が主人公の作品に定評がある。もちろん久々に帰ってくる「HERO」でも木村拓哉扮する型破りな検事・久利生公平がますます魅力的なキャラクターとして描かれているに違いない。
その他では、'02年にフジテレビヤングシナリオ大賞で佳作を受賞後「家族ゲーム」('13年、フジテレビ系)や「電車男」('05年、同)などのヒット作を生み出した若手実力派の武藤将吾が「フジテレビ開局55周年記念ドラマ『若者たち2014』」(同)を、'13年7月期の「天魔さんがゆく」(TBS系)から今クールで5期連続連ドラ脚本を執筆する日本一多忙な脚本家・福田雄一が「アオイホノオ」(テレビ東京系)を、「ブラッディ・マンデイ」('08年、TBS系)や映画「GANTZ」('11年公開)シリーズなどを執筆してきた渡辺雄介が「ST赤と白の捜査ファイル」(日本テレビ系)を、「ナースのお仕事」('00年ほか、フジテレビ系)シリーズなどを手掛けた金子ありさが「芙蓉の人~富士山頂の妻」を、「マイ☆ボス マイ☆ヒーロー」('06年、日本テレビ系)や「カバチタレ!」('01年、フジテレビ系)などを手掛けた大森美香が「聖女」(NHK総合)をそれぞれ執筆する。
もちろん前述の井上のほか、倉本聰、山田太一、岡田惠和、三谷幸喜、橋部敦子、坂元裕二、鎌田敏夫、池端俊策、木皿泉といった日本を代表する10人の脚本家が1ストーリーずつ執筆する「おやじの背中」(TBS系)も必見。毎年、夏クールは各局ともに苦戦を強いられるドラマ“厳寒期”と呼ばれる苦しいシーズン。しかし、ことしに関しては連続ドラマ界も“冷夏”ではなく、ホットな話題に事欠かなそう。キャストだけではなく、これらの脚本家にも注目して、夏ドラマを見てみては?
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