4月クール刑事ドラマ8本の平均視聴率が確定! 元刑事がその出来栄えを総括!

2014/06/27 14:05 配信

ドラマ

平均視聴率が12.2%の小栗旬主演「BORDER」。最終回は14.4%を記録した

4月スタートの春ドラマが続々と最終回を迎え、刑事や警察関係の舞台にした捜査ドラマ8本の平均視聴率が出そろった。※以下の視聴率はビデオリサーチ調べ、関東地区

月曜夜8:00「ホワイト・ラボ・警視庁特別科学捜査班」(TBS系)7.9%

火曜夜9:00「ビター・ブラッド・最悪で最強の親子刑事」(フジ系)10.7%

水曜夜9:00「TEAM・警視庁特別犯罪捜査本部」(テレビ朝日系)9.5%

水曜夜10:00「SMOKING GUN・決定的証拠」(フジ系)7.4%

木曜夜7:58「刑事110キロ」(テレビ朝日系)7.7%

木曜夜9:00「BORDER」(テレビ朝日系)12.2%

木曜夜9:00「MOZU Season1・百舌の叫ぶ夜」(TBS系)11.0%

木曜夜11:58「トクボウ警察庁特殊防犯課」(日本テレビ系)4.0%

視聴率が10%超えた捜査ドラマは3本と、好調だったとは言いがたい。そんな捜査ドラマの出来栄えを捜査のプロはどのように見たのだろうか。元刑事で犯罪ジャーナリスト・小川泰平氏に聞いた。

■リアリティーの使いどころが明暗を分ける

8本の中で視聴率が一番高かったのは「BORDER」。ある事件によって死者と対話する能力を身につけた主人公の刑事(小栗旬)が、殺された事件関係者の声に助けられながら、事件を解決へ導くしていくというリアリティーさに欠ける設定だが、意外と小川氏の評価は高い。

「死者と対話できるという、ありえない設定に最初はどうかな、という感じでしたが、回を追うごとに面白さが増していきました。死者の声によって犯人が分かるのですが、淡々と捜査を進め、立証していく姿は実にリアリティーがありました。霊感がある刑事なんていないと思いますが、『おかしい』と直感して地道に突き詰めていく姿は実際の刑事にもいるタイプですね。また、放送中に全国各地で変死体が見つかる事件が続きました。元刑事としては、『遺体が教えてくれたら…』という思いに駆られましたね」(小川氏)

そして、「BORDER」と同じ時間帯に放送されていたのが「MOZU―」だった。

繁華街でおきた爆弾テロに、警察庁公安部に所属する倉木(西島秀俊)の妻・千尋(石田ゆり子)が巻き込まれ死亡。倉木が妻が死んだ理由を知るべく爆弾テロ事件について捜査していくと、国家転覆を狙う恐るべき陰謀が隠されているというストーリーだ。

「『MOZU―』は重厚でまともな刑事ドラマなので、最初は面白く見ていたのですが、爆弾テロを始め、ストーリーが進むにつれ、どんどん過激になってきました。過激さが過ぎるのも逆にリアリティーさに欠けていくのではないでしょうか」(小川氏)

初回の視聴率は「BORDER」が9.7%で、「MOZU―」は13.3%だったが、途中で逆転し、最終回は「BORDER」が14.4%で「MOZU―」13.8%。全話平均でも「BORDER」が「MOZU―」を上回り、小川氏の見解にも通じる。

さらに、この2本と同じ木曜深夜に放送されていたのが、「トクボウ」。ボサボサの髪に黒縁眼鏡、黒のスーツ。盗聴などの違法捜査を平然と行い、「害虫」(=悪人)に対してあらゆる方法で仕置きをする朝倉(伊原剛志)が主人公だ。

「逮捕状もなく、縄で縛って捕まえる古典的な姿や、安達祐実さん演じるミニスカートをはいた若い女性の警視正など、階級、部署などどれをとってもありえない。しかし、これくらい最初から最後までリアリティーに欠けると、くだらなさ過ぎて面白いですね(笑)。『刑事版 必殺仕置人』といったところでしょうか。現職の刑事でもできないので実に痛快でした」(小川氏)

■魅力的な脇役キャラクターが不在

一方、主人公のキャラクターが立っている半面、脇役が目立たなかったとの声も。

「大ヒットした『相棒』('00年ほかテレビ朝日系)など、主人公をライバル視する捜査一課メンバーや鑑識課員など、メーン以外のキャラクターの立場や振る舞いなど細かな部分までリアリティーが追求されていました。しかし、今回の8本はいずれも主人公がすご過ぎる人ばかり。キャラが立ち過ぎていて、脇役の影が薄かったですね」(小川氏)

特に「刑事110キロ」は、主人公・花沢(石塚英彦)の上司・鬼久保(石丸謙二郎)が殺人事件の犯人を隠匿する不祥事を起こし、花沢がそれを暴いたことで第1弾から登場していた脇役を消す結末となった。

「実はリアリティーと言う面では『刑事110キロ』がダントツです。110キロという体重は珍しくないですし、花沢のような愛されキャラがいたり、管内の駐在所に地域になじんだ先輩警察官がいて、手伝ってもらったりすることは良くあることなんです。最終回までは期待通りだったんですが、上司の不祥事を暴いて捕まえるというのは誰も浮かばれない展開でした。花沢刑事が出世して一課に異動するとか、部下を持つとか期待しましたが、第3弾はないのか、と思わせる結末に感じました」(小川氏)

■イケメンに刑事役は似合わない!?

「BORDER」「MOZU―」の小栗旬VS西島秀俊対決、「ビター・ブラッド」の佐藤健&渡部篤郎による親子バディ刑事、「SMOKING GUN」で香取慎吾演じるオシャレパーマにヒゲを生やした科捜研調査員など、イケメン出演者が並んだことでも話題となった。

「『ビター・ブラッド』のイケメン親子ですが、親子で刑事は実際にもいます。2人で捜査に行くことはないですが、家で事件の話をしたり、先輩に『おまえのオヤジは~』なんて昔の話を聞かされたりして、ドラマ同様良くなかった親子関係が修復した、なんて話はよく聞きます。ただ、捜査や仕事の進め方は普通過ぎるくらい普通でしたね。設定やイケメン出演者が目立ちましたが、コワモテな刑事、警察関係者のイメージと離れている人も。刑事ドラマが人気なので、人気俳優を使うのも手なんでしょうが…」(小川氏)

■7月クールは3本の刑事ドラマが放送

4月クールの結果を受けてか、地上波7月クールの刑事ドラマは3本に。7月9日(水)夜9:00からは「警視庁捜査一課9係」(テレビ朝日系)がスタート。加納(渡瀬恒彦)率いる警視庁捜査一課9係の捜査官らが難解な事件を解決するサスペンス。

7月15日(火)夜10:00からは「東京スカーレット~警視庁NS係」(TBS系)がスタート。男社会の警察組織の中で奮闘する新人女性警察官・杏(水川あさみ)とベテラン刑事・阿藤(生瀬勝久)がさまざまな事件を解決する一話完結ドラマだ。

7月16日(水)夜10:00からは「ST赤と白の捜査ファイル」(日本テレビ系)がスタート。法医学のスペシャリスト・赤城(藤原竜也)と気弱なエリート警部・百合根(岡田将生)のコンビがST(警視庁科学特捜班)メンバーと科学捜査で犯人を追い詰めていく。

リアリティーの使いどころや、際立った脇役の存在、キャラクターと出演者のマッチングに注目して見てもらいたい。