大河ドラマ「軍師官兵衛」が7月13日(日)の放送でついに“本能寺の変”を迎え、江口洋介演じる織田信長が、春風亭小朝演じる明智光秀によって討たれる。これまで、大河ドラマではこの歴史的大事件をさまざまな名優たちが演じ、数々の名シーンを残してきた。そこで、これまでの大河ドラマで描かれた信長の名ぜりふとともに、作品を振り返ってみよう。
■「明智光秀か、ありそうなことじゃ」
信長の人生がポルトガル人宣教師のルイス・フロイスの視点から描かれた「信長 KING OF ZIPANGU」('92年)では、当時トレンディードラマでの活躍真っ只中だった緒形直人が演じた。緒形は「同・級・生」('89年、フジ系)や「予備校ブギ」('90年、TBS系)などで大人しい青年を演じることが多かったが、存在感と威圧感のある信長を演じきり、その演技の幅を見せつけた。最終回で光秀の謀反を知った信長は「明智光秀か、ありそうなことじゃ」とつぶやき、明智軍と対峙。修験者・加納隋天(平幹二朗)という架空の人物の死を見届けた後、自ら腹を切った。豊臣秀吉を仲村トオル、徳川家康を郷ひろみ、光秀をマイケル富岡が演じるという異色のキャスティングも話題になった作品だ。
■「水色桔梗、美しき旗じゃ」
竹中直人主演の「秀吉」('96年)では、渡哲也が演じた信長の最期のシーンが当時大きな反響を呼んだ。光秀(村上弘明)が謀反を起こし、当時19歳だった松岡昌宏が熱演した森蘭丸らが応戦。光秀の大軍勢を見た信長は「光秀め、やりおるわ! 水色桔梗、美しき旗じゃ」と笑い、共に戦う弥助に「楽しくやれ!」と語りかけながら戦った。炎に包まれる本能寺の中で、信長は「敦盛」を美しく舞った後、自ら首をかっ斬り、鮮血がほとばしる中絶命する壮絶なシーンとなった。
■「犬! 又左衛門! さらばじゃ!」
前田利家(唐沢寿明)の妻・まつを演じる松嶋菜々子と、信長演じる反町隆史の夫婦共演が話題となった「利家とまつ」('02年)。作中で、信長がしばしば口にしたセリフ「であるか」は流行語にもなった。織田家内の猿・秀吉(香川照之)と犬・利家の友情と対立が主に描かれていた作品だったが、光秀(萩原健一)に謀反を起こされた信長が、最期に「犬! 又左衛門(利家)! さらばじゃ!」と語り掛け、火の中へ去って行く姿は鮮烈な印象を残した。
■「そうか光秀、お主も天下が欲しかったか」
大河ドラマで描かれた信長として一番記憶に新しい作品「江~姫たちの戦国~」('11年)では、豊川悦司が信長を熱演。光秀(市村正親)の謀反を知った信長は、「そうか光秀、お主も天下がほしかったか」とつぶやき、大軍と相対する。炎の中、本能寺の奥へと向かった信長の前に、めいの江(上野樹里)の幻が現れ、「わしは思うまま存分に生きたぞ」と語り、涙を流しながら歩く後ろ姿で終わり、切腹のシーンは描かれなかった。
■「信じるは己のみ」
上杉景勝に仕えた家老・直江兼続(妻夫木聡)の生涯を描いた「天地人」('09年)では、吉川晃司が信長を演じた。本能寺の変では、死を覚悟した信長の前にすでに病死している上杉謙信(阿部寛)が亡霊となって現れ、信長に天下人の道を説く。「信じるは己のみ」と語る信長に対し、謙信は「さても悲しき男よ」と言う。そして本能寺は焼け落ちるのではなく、爆発するというこれまでにない描かれ方を見せた。これは、本能寺は火薬の貯蔵庫になっており、火薬に引火して大爆発を起こし、そのため信長の遺体は見つからなかったのではとされる一説を用いたものだった。
■愛を説いた「へうげもの」の信長
番外編として、'11年にNHK BSプレミアムでアニメ化された山田芳裕の人気漫画「へうげもの」では、「天地人」と同様に本能寺の爆破シーンが描かれている。この作品では、秀吉が光秀を謀反に追い込んだとされる“秀吉主犯説”を用いている。さらに、秀吉は本能寺に自ら忍び込み信長を惨殺する。秀吉に胴から真っ二つにされた信長は斬られた後、自分を斬った刀が高価ではないことを叱り、秀吉に「愛」を説いて絶命するという、漫画でありながら信長の巨大さを感じさせる名シーンとなった。
■オリジナリティのある「軍師官兵衛」の本能寺へ
今回、「軍師官兵衛」で描かれる“本能寺の変”について、製作統括を務める中村高志氏は「本能寺の変というのは、数多くの大河ドラマで何度も繰り返し描かれてきました。今回、数多くの作品も参考にしながら、『軍師官兵衛』のオリジナリティーを付け加えた信長の最期を描いております。江口洋介さんも大変な熱演です」とコメントした。7月13日(日)にどのような“本能寺の変”を見せてくれるか期待がふくらむ。
なお、放送直前の7月13日(日)夜7:30からは「まだ間に合う!『軍師官兵衛』本能寺直前SP」も放送されるので、こちらもチェックしてみよう。
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)