「おやじの背中」第2話脚本は坂元裕二! 徹底して「俳優の力を見せる」ヒットメーカー

2014/07/20 12:00 配信

ドラマ

好スタートを切った日9ドラマ「おやじの背中」。1時間1話完結ならではの濃密さも視聴者を引き付けた(C)TBS

日本を代表する10組の脚本家が週替わりで執筆する「おやじの背中」(毎週日夜9.00TBS系)。作家性を重視した久々の本格派ドラマとあり、初回の岡田恵和脚本「圭さんと瞳子さん」は15.3%の視聴率を獲得と好スタートを切った(視聴率はビデオリサーチ調べ、関東地区)。7/20(日)放送の第2話は、坂元裕二脚本、役所広司と満島ひかりが父娘を演じる「ウエディング・マッチ」。その見どころを坂元の代表作や、取材時のコメントから掘り下げてみよう。

坂元は'67年生まれ。'87年、第1回フジテレビヤングシナリオ大賞を受賞し19歳でデビュー、とキャリアは長い。'91年には「東京ラブストーリー」が社会現象化するほどの大ヒットとなった。

もっとも、近年の作品で坂元裕二を知った人には、彼が「東ラブ」の作者とは意外に思われるだろう。'07年の「わたしたちの教科書」(フジ系)以降、坂元は人と人との関係を深く見つめ、残酷なまでのぶつかり合いをセリフに込めた社会派作品へと、大きく舵を切っていく。

その後は、虐待された子供と、彼女を救う教師の物語「Mother」('10年日本テレビ系)、殺人事件の加害者家族と被害者家族を描いた「それでも、生きてゆく」('11年フジ系)、アラサー夫婦の機微をつづる「最高の離婚」('13年フジ系)と、高いクオリティのオリジナル脚本を連発。「わたしたちの―」以下4作はいずれもザテレビジョンドラマアカデミー賞脚本賞を受賞しているが、彼の言葉は驚くほど一貫している。

「素晴らしい俳優陣に出会えて、とにかく幸せでした。俳優の演技によって、登場人物の一人一人が実在する人物かのように感じられたため、私はただそれをなぞるように描くだけでした」('10年、「Mother」での受賞時)

「俳優さんを魅力的に描くことを常に念頭に置きながら脚本を書きました」('11年、「それでも―」での受賞時)

「いつもそうですが、俳優の力を見せることが何よりの目標でした。4人の底知れない魅力の幅には、脚本家としての想像を超え、視聴する一人としても感服しました」('13年、「最高の離婚」での受賞時)

坂元は「俳優の演技を見せること」を徹底しているのだ。結果、どの作品の長ゼリフも、視聴者の心に、記憶に残る名演として刻み付けられている。ドラマアカデミー賞でも、これらの作品が脚本賞だけでなく、もれなく作品賞、主演男女優賞、助演男女優賞も総なめにしている。坂元の脚本が俳優の演技をはじめ、すべてのクオリティをけん引している何よりの証拠だろう。

さて、今回の「ウエディング・マッチ」は、元ボクサーの父・草輔(役所)と、幼いころから彼の指導を受け、すべてをボクシングにささげてきた娘・誠(満島)の物語。五輪への選考会直前、草輔と若い女性の関係が発覚し、普通の女の子としての生き方をあきらめてきた誠の思いが爆発する。言葉でのぶつかり合いと、ボクシングという生身のぶつかり合い。長いセリフに時折笑いを織り込みながら、父娘の濃い感情が交わされ、坂元の面目躍如の1編となっている。「それでも―」でもヒロインを務めた満島との相性は言わずもがな。第2話もしみじみとした名作となる予感だ。