岡田准一の「特攻に行く場面の君が好き」DVD発売「永遠の0」山崎貴監督インタビュー(2)

2014/07/23 09:00 配信

芸能一般

87億円という興行収入について「嬉しい誤算」と、山崎監督

(Part.1からの続き)このシーンのほかに、もうひとつ岡田の表情が印象深い、と監督が語る場面がある。映画のラスト、特攻へ向かう際の表情だ。

「攻めに行くラストの岡田くんの顔は好きですね。久々に、ブルーレイで大きいスクリーンで見たんです。『あぁ、久々に見ても本当にいい顔してるな』って思いましたね。こんなに時間が経って、次の映画も撮った後なので、ちょっとお客さん感で見られるんですよ。いい顔してるじゃんて(笑)。ものすごくいろんな思いが内包されている混沌とした表情をしているので、そういうものをちゃんと記録できて良かったな、と思ってます」

特攻へと向かう宮部に対して、見る側も悲しさ、切なさとさまざまな感情が入り混じり涙がこぼれるが、その場面で岡田に対して、どんなリクエストをしたか尋ねると―

「単純な思いじゃないんで、いろんな怒りとか悲しみとか、もしかしたら喜びとかあるかもしれない。さまざまな感情が同時に顔に表れてきているような、複雑な表情をしてください、って。今までいろんなシチュエーションを宮部となって過ごしてきたわけだから、特攻に向っていくことが単純なことではないってことはもちろん岡田くんも分かっているだろうし、そのいろんな思いを全部内包した表情をしてほしいんですよね、って。撮影半ばに(笑)。どうしても、中途半端な時期に撮らなければならなくなってしまったんです。映画を決めるシーンでもありますし、OKかどうかジャッジするのが怖かったです。テイク何度目くらいかな、4度目か5度目だったと思うんですけど、何度かやってもらった後で、『あ、今だ!』と思って、OKって(思わず)言っちゃった感じです」

DVDの特典映像のメーキングでは、監督が俳優陣と話しているシーンが多く映し出される。演出プランに関して問うと「その場しのぎ、というか、自分の考えてたきたものは大事ではない」と口を開く。

「もちろん(演出プランを)持っているんですけど、それは大して大事じゃないですね。その場その場で生まれるものの方が『活き』がいいし、役者さんの考えが入ってきた方が面白い。役者さんも考えてくれる人をキャスティングしているし、それは人と人が作るものだから自分の考えにこだわるのがあまり好きじゃないんです」

音楽に対しても同様で、0戦が飛ぶ際に流れる印象的な高音の音楽に関しても長年タッグを組んでいる佐藤直紀氏の「大丈夫」という言葉を信じた。

「気持ちをザワザワさせたいということと、ミニマムな曲にしたい、と佐藤さんに伝えていて。それであの曲ができてきたんですよ。確かにミニマムと言ったけど、ここまでミニマムかっていう(笑)。ほぼ、チャチャチャチャチャチャチャチャっていう一定のリズムがずっと続いていて、『え、これ大丈夫なんですかね?』言ったら、佐藤さんが『何度もこの曲がかかると、どんどん良くなるから大丈夫です』って、ものすごい自信を持って言っていたので、ちょっといいのか悪いのか分からないと思ったけど(笑)、これでいきましょう、って。そしたら佐藤さんの言った通りで、悲しい運命が待ち受けているザワザワ感がありました。あの曲がかかると緊張もするし、何か大変なことが起こっている感じもするし、すごくいい曲だと、今では思えるんです」

戦争を題材にし、生きることを問い掛ける、見る人によっては重く感じる作品かもしれないが、87億円の興行収入というのは、並の数字ではない。老若男女、多くの人に愛された証であるこの数字をどう受け止めているのだろうか。

「どういう人たちが映画館に足を運んでくれているのか、常に分からないんですよ。すごく難しいことを受け止めることができる人もいれば、娯楽作品じゃないと楽しめない人もいるし。だからその中で捨てたもんじゃないな、っていう感じは、正直ありましたね。(87億円という)この数字になるのは、リピーターの方や口コミなどの存在なしにはあり得ないし、何度も足を運んでくれた人や、周りにすごく紹介してくれた人たちが想像以上にたくさんいて、好きになってくれた人も多くいてくれたということですよね。今回は、結構突き放した演出をしているつもりなんです。今までの作品に比べれば、説明不足の部分がいつもよりは多いですし、分かりづらい演出みたいなものもしているし。でも、みんな受け止めてくれているんだな、っていうのは、意外だったし、嬉しいです。大きい作品にはお客さんがたくさん来なきゃいけない、と思ってずっと作り続けているので、どうしても丁寧に丁寧になっていっちゃうんです。説明過剰というか、親切のつもりがお節介になっているというか。でも、もう少し絞りこんでいっても、お客さんは拾ってくれる、もちろん取りこぼしている人もいるかもしれないけど、拾ってくれる人の方が多いんだな、っていうのは嬉しい誤算でした」