8月29日から31日にかけて、山梨・山中湖交流プラザきららにて行われたロックフェス「SWEET LOVE SHOWER 2014」。30日に行われた2日目の模様(後半)をリポートする。
夕方にさしかかり日も傾いてきた頃、山中湖の湖畔にたたずむ小さなステージ・WATERFRONT STAGEには、この日唯一の出演者・青葉市子が登場。サウンドチェック時は、LAKESIDE STAGEで演奏中の[Alexandros]の曲に合わせてコードを爪弾いてみせる。また、[Alexandros]・川上洋平(Vo、Gt)の「愛してるぜ~!」という言葉が気に入ったようで、「言ってみたい…」と漏らすなど、ロケーションと相まった穏やかな雰囲気に。そんな中、定刻から5分ほど遅れて、「レースのむこう」でライブをスタート。透明感のある歌声と、流麗なアコースティックギターの調べに誘われ、湖でカヌーを楽しんでいた人々もステージの方へ集まってくる一幕も。
巧みな演奏と豊かな叙情性を持った楽曲に、集まった観客たちも固唾を飲んで聴き入っていく。しかし、一度演奏が終わると「富士山がきれいですな」と語るなど、フワッとした言動で緊張感とは無縁の空間を醸し出していく。スタッフから残り時間が4分と聞かされると、「あと3時間くらい歌っていたい…」と明かし観客を喜ばせる。最後は「絶対間違うな…」と言いながら、新曲「なつばくだんふゆだるま」を披露。ロックバンドが多い中、アコースティックギター一本で味のある弾き語りを聴かせてくれた。
Mt.FUJI STAGEの夕方を熱くしたのは、ことしで同フェスに6年連続出演となるTHE BAWDIES。ROY(Vo、Ba)が「夏が終わってしまいますね。でも終わらせたくないですよね?皆さん!お夏の足元にしがみつきたいんじゃないですか!」と観客を煽りながら、「ROCK ME BABY」になだれ込み、観客のボルテージも上がっていく。さらに「我々BAWDIES、日本に古くからあるお中元という文化を忘れておりません。夏に出会った皆さんに“お中元”をお渡ししたいと思います!」(ROY)という言葉とともに、「まだお父さん、お母さんにも聴かせたことのない」という新曲も。観客へ最高の“夏の贈り物”となった。終盤には童話「マッチ売りの少女」のような寸劇から「HOT DOG」を披露するなど、サービス精神旺盛な彼ららしいライブとなった。
ここからはタイプの異なる“大物”2人が立て続けにステージへ。まずLAKESIDE STAGEに現れたのは岡村靖幸。'11年の「SWEET LOVE SHOWER」から本格的に活動を再開した“岡村ちゃん”。それ以来となるこのステージで幕開けを飾ったのは、ことしリリースされた「愛はおしゃれじゃない」。続けて「ビバナミダ」を披露し、早くも自身のステージが“復活”の場から“最新型”を見せる場に変わったことを見せつけていく。一方、続くメドレーでは「Vegetable」や「聖書(バイブル)」といった80年代のナンバーも惜しげもなく演奏し、まさに新旧そろい踏みのセットで観客を熱狂させていく。
マニピュレーター・白石元久による恒例のMCタイムでは、「SWEET LOVE SHOWER、いい名前ですね。愛のシャワー、降らしちゃってますか?」などと語りかけ笑いを誘う。さらには残りがあと2曲であることを告げ、「世の中おかしいですよね?」と、観客だけでなく岡村本人にも尋ねる一幕も。そんなやり取りの後、満を持して披露されたのは「あの娘僕がロングシュートを決めたらどんな顔するだろう」。青春の1ページを切り取った名曲が夕暮れ時を彩っていく中、アコースティックギターを放り出してキレのあるダンスを踊っていく岡村。サビでは歌詞に合わせて観客が一斉にジャンプするなど、多幸感あふれる空気がステージを包んでいった。最後の「だいすき」では、「SWEET LOVE SHOWER、俺は君がマジで大好きです!」と叫んだ岡村。短いながらも濃厚なライブとなった。
岡村靖幸のライブ終了後、観客が大挙としてMt.FUJI STAGEへ押し寄せる。お目当てはもちろん、日本が誇るポップマエストロ・山下達郎。晴れ間が多かったこの日も雲に隠れ、なかなか姿を現さなかった富士山だが、「このライブのため」と言わんばかりのタイミングで9割がた姿を現し、ステージの奥に堂々と鎮座する。日も沈みかける完璧なシチュエーションの中、サポートメンバーと共に登場した山下は「THE THEME FROM BIG WAVE」からライブをスタート。「こんばんは山中湖!2年ぶりのSWEET LOVE SHOWERです。ちょっと涼しいですけどあったまりましょう!しばらくの間お付き合いを」というあいさつとともに、'70~'80年代前半の楽曲を中心とした爽やかなナンバーを立て続けに披露していく。
5曲をほぼノンストップで演奏した山下は「一番いい感じの時間ですけど、皆さん冷えるだろうと思ってアップテンポな曲でやってみました。ただ、全部アップテンポだとおじさんの体が保ちませんので(笑)」と笑いを誘う。そして「夏の終わりですが夏の曲を」という言葉とともに「僕らの夏の夢」を披露。フェスに集った若い観客にとっては、近年のこうした穏やかな楽曲の方が印象が強いかもしれない。そして驚きだったのは続けて披露された「プラスティック・ラブ」。この曲の途中、何と山下の妻である竹内まりやがサプライズで登場。大きなどよめきと歓声に包まれながら、夫婦による極上のハーモニーを披露した。
ステージでの夫婦共演という貴重なシーンに、山下も「ちょっと得した気分でしょ?」とニヤリ。その後のMCでは、「2年前にも話した」という富士山や山中湖にまつわるエピソードを明かした。「SILENT SCREAMER」では、山下がパーカッションをたたいたり、竹内が再びコーラスとして参加したりするなど見せ場を作った。最後に「このSWEET LOVE SHOWERが終わると夏が終わります。秋も冬も、来年の夏も、皆さんにとっていい季節でありますように」(山下)という言葉を添えて、「さよなら夏の日」をハンドマイクで熱唱。まさに夏の終わりを彩る名曲に、観客からの温かな拍手が鳴りやまなかった。
2日目のヘッドライナーを務めるのはMAN WITH A MISSION。ことし全米デビューも果たした今乗りに乗っている彼らが、満を持してトリという大役に挑んだ。冒頭の「evils fall」から息つく間もなく攻撃的に盛り上げていく“オオカミ”たちに、観客もヒートアップ。さらにJean-Ken Johnny(Gt、Vo)がもう1匹オオカミが紛れ込んだことを告げ、その言葉とともにオオカミのお面を被った男が登場。その正体はDragon Ash・Kj。そのまま6匹(?)でNIRVANA「Smells Like Teen Spirit」のカバーを披露し、熱狂の渦に観客を誘っていく。アンコールではメンバーが客席に乱入するなど観客を煽り立て、最後は5匹の雄叫びが山中湖に響き渡らせた。
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