漫画家・ヤマザキマリの白熱教室「ジョブズが嫌いだった」秘話も

2014/10/14 22:54 配信

芸能一般

壇上から学生に語りかけるヤマザキマリ氏

「テルマエ・ロマエ」で知られる漫画家・ヤマザキマリ氏が10月10日、東京・TOKYO FMホールにてトークイベント「FM FESTIVAL 2014 未来授業~明日の日本人たちへ~『未来を変えるイノベーションは起こせるのか?』」に出席。「自己イノベーション=自分の限界を超える方法」をテーマに、集まった約200人の学生たちに向けて約1時間半の“公開授業”を行った。

14歳のとき単身でドイツ、フランスを旅して以来、人生の半分を海外で過ごしているというヤマザキ氏。現在はイタリアに在住しながら、雑誌「Kiss」(講談社)で伝記漫画「スティーブ・ジョブズ」を、また「新潮45」(新潮社)で「プリニウス」(※とり・みきとの共作)を連載中だ。公開授業内で学生に語った内容の中から、いくつかのトピックを以下に紹介する。

■自己イノベーションには「異質なものを排除しない勇気」が必要

「変わっている人と付き合うのは苦痛?」という学生への質問から始まったディスカッション内で、ヤマザキ氏は漫画のモチーフにもしている故スティーブ・ジョブズについて語った。商業主義的なものには嫌悪感があるというヤマザキ氏は、アップル社を率いるジョブズのことが好きではなかったとして、生前から漫画の題材にする依頼があったものの断っていたという。だが'11年ジョブズが亡くなったとき、住んでいたアメリカ・シカゴのアップルストアの前で泣く人たちを見て、その存在の大きさを再認識。死後すぐに発刊された伝記(※ウォルター・アイザックソン著)を読み、漫画化に取り組むことを決めたのだと明かした。そのジョブズは大学を中退して、ヒッピーに憧れていたころ、日常的に裸足で暮らし、風呂も入らず体臭は鼻につくほどだったと紹介。そんな彼を、ゲーム会社のアタリがエンジニアとして採用したというエピソードに加えて、「テルマエ・ロマエ」の舞台となった古代ローマも言語や宗教が違う異民族たちを受け入れたことで発展したことも指摘。自身が描く2作品を例に出しながら、学生たちに「異質なものを認め、排除しないこと」が“自己イノベーション”には必要だと語りかけた。

■若いときは「生きているだけ」でもいい

「親からの重圧を感じたことがあるか?」というトピックでは、男子大学生からの悩みに答えながら、イタリアでは親が子供によく「生まれてきてくれてありがとう」と言うことに触れ、会場の興味を集めていた。また「若いのだから夢は大きく、と言われることがかえって重圧になる」という話題も。自分自身も留学生のときに妊娠出産を経験しており、当時は夢を追うよりもただ生きていくことに精一杯だったと明かし、必ずしもすべての若者が夢に向かって生きなければならないわけではない、との持論を展開した。

■メディアが伝えることを信じるか信じないかは自分で決めるべき

「朝日新聞の従軍慰安婦報道問題をどう思うか?」という質問には、学生からの「ひとつの事実を伝えるときも、仲介するジャーナリストによって内容が変わってくると分かった」という意見に同意を示しながら、イタリアの新聞は新聞社の支持政党によって主張が違うことを紹介。自身がイタリア留学をしていたときは学友たちと複数の新聞を読み比べていたとして、情報を信じるか信じないかは受け取る自分次第だと思ったほうがいいとアドバイス。合わせて、日本の若者もメディアをそのまま信じなくなってきたことは興味深いともコメントした。

なお、この日の模様は11月3日(月)昼4:00からラジオ番組「FM FESTIVAL 2014 未来授業~明日の日本人たちへ~『未来を変えるイノベーションは起こせるのか?』」内(TOKYO FMほかJFN38局)で放送される。