CS放送のAXNミステリーでは日本ミステリー界の巨匠、松本清張の生誕105周年を記念して多くの関連番組を11月と12月の2カ月連続で放送する。今回は、1970年代、80年代が中心の松本清張原作ドラマ22作品を「清張が変えた日本のミステリー」「清張が暴いた闇」「清張が描いた戦争」「清張が咲かせた悪女たち」と4つにカテゴライズ。各テーマの冒頭には清張の大ファンであるというみうらじゅんと、清張と同じ誕生日のモデル・はなによる特別番組も放送し、松本清張の新しい魅力に迫る。
今もまさに清張がマイブームだと収録で語ったみうらじゅんにインタビュー。
―今回、この企画のオファーが来たときにどう思いましたか?
やったー、古い松本清張作品が見れるって思いました。昔のドラマはなかなかDVD化していないから貴重ですよね。テーマとしても地上波ではなかなか放送できないようなタブーを描いている作品が多いし、そこはCS放送の魅力ですよね。
―清張作品は以前からの人気作ですが、その理由はどこにあると思いますか?
当時は今みたいにエロに対して陽気な時代ではなかったし、キャバクラでも行こうものなら全て浮気。清張さんの作品では嫁の家が金持ちで、養子に入ったサラリーマンが他の女性と関係を持ってしまうんだから、それこそ怖いですよね。その根源は四谷怪談にあるのではないかと思うんですよ。嫁が旦那をたたっていくみたいな。怪談独特な因縁じみた外国にはないセンスが日本人のベースにはあると思います。
―ずばり、みうらさんが思う清張の魅力とは?
お金や不倫といった誰でも落ちる穴、人間の煩悩が描かれていると思います。怖いもの見たさって部分もあるけれど、既婚者になって不倫も体験して(笑)、その怖さがすごくよくわかった。30代からすごい量の清張の本を読み始めて、今がブームの2順目。僕が今でも清張を読んでいるのは、誘惑に負けるとこうなるんだぞって戒めの意味もあります。
―清張が日本ミステリー界の巨匠と言われる理由はどこにあると思いますか?
普遍の煩悩を書き続けていると言う部分もあると思うんだけど、彼の作品にはよく“崖”が出てくるんですよね。作品のラストで全員勢ぞろいでわざわざ崖に集まるって普通に考えるとおかしい。でもあれは切羽詰まった人間の心情を表していると思うんですよ。非日常的な緊迫感もあるし、まさに“崖っぷちに立つ”という。今の火曜サスペンスのルーツは清張が作ったと思うし、ラストでよく崖に立っている理由も分かると思う(笑)。
―最後に今回のトーク番組から清張作品に入る人に向けて一言お願いします。
今は(松本清張が)昭和の文豪とか太宰治と同い年とか言われて、堅苦しくて入りにくいと思うんですよ。僕が中高生のときはそういったキャッチフレーズはありませんでしたから。僕は少しでも敷居を下げたくて一時“マツキヨ”って呼んでました(笑)。描いていることは普遍の煩悩ですから。若い人にも気軽に見てもらった方が落とし穴は大きくて面白いと思います。
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