12月22日(月)、23日(火・祝)にNHK総合で放送される特集ドラマ「ナイフの行方」の試写会と記者会見が11月26日に同局内で行われ、主演の松本幸四郎と、脚本を手掛けた山田太一が登壇した。
同作は、格差社会で生きる若者との向き合い方を描いたドラマ。週2回子連れの家政婦・香(相武紗希)が来るのを楽しみにしている孤独な老人・拓自(松本)は、街でナイフを振り回して無差別に人を刺そうとする青年・次男(今井翼)を目撃し、合気道で組み伏せる。だが、拓自は次男を警察へは突き出さず、足の骨を折って連れ帰り、奇妙な共同生活を始める。
松本は自身の役について「自分の生き方と重ね合わせてしまいました。不器用だけど、人間としての心の優しさだけは持っていなければと感じています。拓二のセリフで『最近の日本人はお互いを信じ過ぎる。人間ってそんなに信じられるものだろうか。のんきなように思えてならない』という言葉が胸に突き刺さりました。視聴者の方に日本人とは、自分とはということをあらためて考えてもらえればと思います」と語った。
また、山田は作品に込めた思いについて「僕は割と普通の人しか書けないのですが、幸四郎さんに演じていただくということで“普通のおじさん”を書くだけじゃもったいないと思い、そこを乗り越えて書き上げました。人間のすることには不可解さや分からないところがあると思います。一番忘れたい記憶やそこから逃げたいといういろいろな過去がありまして、それを振り返るシーンがありますが、回想シーンとして若いころの幸四郎さんや津川(雅彦)さんは書きたくなかったですし、幸四郎さんだったらそれをセリフで乗り越えてくれるという信頼がありました」と語った。
さらに、松本は共演した今井について「普段はとても好青年ですけど、暴力的な役になりきっていましたね。仲の悪い役は仲の悪い人同士ではできないんでいすよ。仲良くなって気心が知れて、何でも話し合えるような役者同士だからこそ本当に憎しみ合う役ができるんですよ。だから、彼ともそういう風な関係になれて、『今度舞台にも出るんですよ』なんて話も聞けてうれしかったですね。彼は僕の芝居をじっと見ていて、撮影が進むたびに芝居が変わってくるんですよ。いろいろな意味で吸収していってたんだと思います。役を通して彼自身も何かを感じてくれたんではないかと思います」とコメントした。
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