CS放送の日本映画専門チャンネルでは、12月20日(土)から公開される映画「バンクーバーの朝日」のオリジナル・ショートムービー「メモリーズ・オブ・『バンクーバーの朝日』」を12月7日(日)より映画の公開に先駆けて放送する。
「バンクーバーの朝日」は戦前のカナダ・バンクーバーに実在した日系移民たちの野球チームの奇跡を描いた作品。映画「舟を編む」で日本アカデミー賞優秀賞を受賞するなど、めざましい活躍を続ける石井裕也が監督を務める。今回製作された短編は少女が戦前のカナダ・バンクーバーに迷い込むという、過去と現在が入り混じるファンタジックな世界を描いており、妻夫木聡演じる主人公・レジー笠原の妹であるエミー笠原役の高畑充希も登場する。
本編に続き短編でも監督を務めた石井は、役目を終えて数日後には取り壊されてしまうオープンセットを感慨深く眺めながら、自身の思いを語った。
――久しぶりの短編の撮影はいかがだったでしょうか?
長編よりよほど難しいです。特に今回は細かい脚本があるわけではないので、イメージや直感が先行してしまって、頭の中がぐちゃぐちゃになってしまうんです。
――本編と短編ではセットの映し方に違いはあるのでしょうか?
本編ではもちろんストーリーを見せなければならないし、バンクーバーの風土や空気感を表現することに力を注ぎ込んでいましたが、短編ではそういった部分は完全に無視して、長い間共に過ごしたこのセットを愛でるような気持ちで撮影を行いました(笑)。本編の撮影の頃からセットをモノクロで撮ったら面白いなと思っていましたので、短編では色あせた、モノトーン調の映像になっています。
――短編にも出演した高畑充希さんについて
高畑さんが演じるエミーには、本編でもさらっと本質を言わせるということを意識しましたし、彼女自身も割と軽々と本質を突けるような人だと思っています。今回の短編では彼女のせりふは一言だけです。内容も具体的なものではない、詩的な言い回しになっていますが、それでも彼女だったら言えるんじゃないかなと思いました。
――物語で一番力点を置いて描きたいと思った部分は?
僕がこれまで作ってきた映画にも「いかに生きるか」というテーマがありました。「バンクーバーの朝日」が持つテーマはそのあたりに真正面から踏み込めるものでしたので、気合いが入りました。過酷な状況に追い込まれた主人公たちがいかにして立ち上がるか、ということを描くことが重要だと思いました。しかも逆境を打破していく方法がバントやスクイズというのもすごく良かったです。ちょっと地味だけど、全力で走らないと成功しない作戦です。今回の映画のテーマは現代にも通じるものがありますので、過去の物語であると同時に現代的である、ということも意識していました。
――「バンクーバーの朝日」の撮影で得たものは?
自分ではわからない時代や世界の出来事を描いていますので、僕も含めたスタッフや俳優たちの想像力を結集して当時の世界観に踏み込んだつもりです。やりきった、という感覚はありますね。スタッフ一同、全力を出し切りました。
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