電気エネルギーのみを動力としたフォーミュラカーレース「フォーミュラE」の第4戦アルゼンチン・ブエノスアイレス大会が1月10日(土)に開催される。テレビ朝日系列の同大会中継番組で解説を務める元F1レーサー・片山右京氏に見どころを聞いた。
「フォーミュラE」は、史上初の電気自動車によるフォーミュラカーレース。'14年9月に中国・北京で行われた開幕戦以来、電気エネルギーのペース配分が勝敗を分ける高い戦略性を有しつつ、市街地コースでバトルやクラッシュが続発する迫力あるレースが繰り広げられている。
片山氏は、まず、昨年12月にウルグアイで行われた第3戦を振り返り、シーズン途中での参戦となったジャン=エリック・ベルニュ(アンドレッティ フォーミュラE)に言及。「(今回)初参戦でいきなりポールポジション(予選で最速のラップタイムを出し、決勝レースを先頭でスタートすること)ということで、その勢いのまま初優勝も期待されたが、まさかのアクシデントでリタイアとなり、フォーミュラEの難しさ、奥深さを感じる結果になりました」とコメント。実際、F1でも走っていた24歳のベルニュは、予選のみならず、決勝でもその速さを見せつけ、“ファンブースト”(試合前のファン投票上位3名が使用できる加速装置)で見せ場を作る場面もあったが、エネルギーのペース配分には終始苦戦していた(最終的には、サスペンションの不具合でリタイア)。片山氏は「同じバッテリーを使用しているので、ファンブーストの使い方を間違えると、すぐにリタイアになるリスクがあり、速さだけでは駄目だということがあらためて分かりました」と解説した。
同レースでは、チャンピオンシップを争うサム・バード(ヴァージン レーシング)が縁石に乗り上げてクラッシュするなど、優勝戦線にも大きな影響が。片山氏は「ゴールに着かないとまったく結果に残らないので、エネルギースケジュールを崩さないで走り続けることが重要です。(レースの)マネジメントというのが単純ではないということが、見ている方からもはっきり分かります。一方で、速さということも変わらず重要で、特にポールポジションを取ることは非常に重要です。前を走ることで、落ち着いてペースをコントロールできるので、バッテリーをセーブして戦い方に幅を持たせることができるからです」と“速さ”と“安定感”の両立が必要だと語った。
第4戦アルゼンチン大会のコースについては、「全戦市街地で行われるフォーミュラEでは、公道ならではの直角カーブが多くなりますが、今回は、通常のサーキットに近いコーナーがあったり、コースの幅が4車線あったりと、普段より速いスピードでコーナーに入れるため、今までと違うレース展開になると思います」と分析。1月の南米は平均気温が25℃と、レースには絶好のコンディションとなることにも触れ、「気候は一番良い時期ですので、雨などの心配もなく、荒れたレースにはならないと思います。ただし、意外と湿度が高いなど、ちょっとずつ自分たちの予想と違うところもあるので、そういった点がドライバーに与える影響は大きいと思います」と元レーサーの視点で解説を加えた。
さらに、4戦目を迎え「最初は全員手探りでやっていましたが、徐々にチームの基本的なレースペースができてきました。ドライバーもそのペースに合わせてレースを展開してきましたが、今後は、ドライバーによる勝つための戦略的なマネジメントが重要になります。各選手が試合を振り返ってデータを解析することで、レースもドライビングも洗練され、よりレベルの高い戦いになっていくと思います」と今後の展開を予想した。最後に、「チャンピオンシップ争いが進む中で、(3戦連続で表彰台の)ルーカス・ディ・グラッシを中心に、第3戦で2位のネルソン・ピケ Jr.や、今回リタイアしたサム・バードがどう修正してくるかに注目です。ベルニュのようにシーズン途中で参戦したドライバーもいますから、新たなドライバーがどういう結果を出していくかにも注目したいですね」と今後の注目選手を挙げ、優勝戦線の行方に期待を持たせた。
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