TBS系で'14年10~12月にかけて放送された青春ドラマ「ごめんね青春!」の脚本を担当した宮藤官九郎が、2月18日に発表された第83回ザテレビジョン ドラマアカデミー賞において最優秀脚本賞を受賞した。
小ネタ満載、せりふの応酬、独特の世界観で視聴者を魅了した宮藤に、作品への思いや苦労、脚本家という仕事について聞いた。
――「ごめんね青春!」の執筆はいかがでしたか?
磯山(晶)プロデューサーにこの企画を話したとき、最初に言われたのが、「学校に火をつけた奴が学校の先生っていう設定で、感情移入できるのか?」ということ。そこをどうクリアするのかが、ドラマを作っているときに一番気になっているところです。
いくらにぎやかな楽しいドラマでもそこをおさえないとまずいかなと思っていたので、どういう順番で真相を打ち明けいったら平助(錦戸亮)が悪者に見えないか、言い方も含めてですけど、そこは悩みましたね。
あと、今回、言葉や表現に本当に苦労しました。「あまちゃん」('13年、NHK総合ほか)を挟んで、地上波ゴールデンのドラマは3年ぶりぐらいなんですけど、あのころは問題なかった表現が随分使えなくなって。
何となくの常識のラインは分かっていたつもりでやっていたんですけど、厳しくなったなと思いました。僕と仕事をされる人は皆さん苦労されると思うんですよね。あんまりぼやかしたら面白くない気がして、固有名詞にしたり、そういう表現にしているからそれが柔らかい言い方になった途端、面白さもなくなってしまうような気がして…。
――ストーリーは初めから決まっていたのですか?
最終回は文化祭にすると決めてました。
文化祭で謝ることは決めてたんですよね。なので、文化祭までをどうしようか?という感じで。
あと、もともと平助が放火の犯人だということは決めていたんですけど、やはり現場の人たちの空気感はできれば違う犯人がいたほうがいいという望みを捨てていなくて…。いつもだったらそれもありかなと思うんですけど、今回はあえて初志貫徹で最後まで変えずにいこう!と決めたので、変えなかったんです。
――逆に変更した点はありますか?
蜂矢先生(満島ひかり)と平助があんなにカップルになるとは思ってなかったんですよね(笑)。
シナリオハンティングで三島にいったときに、電車のつり革の話を聞いて、「これ使った方がいいね」ってみんなで話して、そこから大きく変わって、2人が恋愛関係に…。平助が犯人だということを打ち明けるのは、祐子(波瑠)にいきなり本当のことを言って、みんなの前に言うという流れにしようと思っていたのですが、2人の関係を考えたら、先に蜂矢先生に言った方がいいんじゃないかなと思って、少し変更しましたね。
――こだわり抜いて書き上げた脚本。周囲の反応はいかがでしたか?
最初、磯山さんと何も特別なことが一切起こらない学園ドラマがいいんじゃないかと話して。今も昔も、8、9割の高校生が普通の高校生活を送っているわけだし。
受け入れてもらえるか不安もあったんですが、今まであんまり相手にされてこなかった高校生や中学生に「すごい面白かったです」と言われるようになりましたね(笑)。「今の十代の子たちもこういうのを見てるんだ。大丈夫なんだ」と安心しました。
――笑いが多い中で、平助が生徒に語り掛けるシーンも印象的でしたが。
これはみんなで話し合いました。最初なかったんですよ。でも何か授業っぽい、黒板使ったシーンがないなと思ったので、1話を直しながら入れてみたら、「ぜひ、毎回やってください」って言われて…。毎回かーっと思ったら、全然思いつかなくなっちゃって(笑)。
ただ説教くさくはしたくなかったから、家に帰って世界の名言とかネットで調べたり。平助が考えたものだったら金八先生みたいにうまくない方がいいだろうと、ちょっと強引なものばっかりにしました。
4話から蜂矢先生とも別々に同じことを真逆からいうみたいなのも入れていったんで、どんどん長くなっていくんですよね。それはしょうがないですよね(笑)。
――とにかく、キャラが濃い出演者が目立った作品。特に好きなキャラクターは?
蜂矢先生ですかね。満島さんとは、以前から一緒に仕事したいと思っていて。感情をそのまま爆発させるような女性が相手だったら、錦戸くんも立つかなと思ったので、割と自由に書かせてもらいました。
8、9話の「好きです」というあたりが面白かった!9話とかはどんどん超越しちゃってますよね。「私はいずっぱこの伝説を信じる」とか、よくこんなこと言うな〜と思いながら(笑)。
そういうめちゃくちゃな台本書いても自分で自分の中で筋が通ってればできるというのが、やっぱりすごいなと思いましたね。やらせておいてなんですけど。本人が楽しんでやってくれていることが良かったし、楽しんでやってることがちゃんと伝わったと思うんで、良かったなと思います。