TBS系で‘14年10~12月にかけて放送された純愛ミステリー「Nのために」で、成瀬慎司役を演じた窪田正孝が、2月18日に発表された第83回ザテレビジョン ドラマアカデミー賞において、そうそうたるベテラン俳優を抑えての最優秀助演男優賞を獲得した。
「花子とアン」('14年NHK総合ほか)の朝市役でも注目を浴びた窪田。今回、読者からの圧倒的な支持を受け、初受賞となった窪田に作品や役どころへの思い、今後の目標を聞いた。
――受賞の感想はいかがですか?
映画も、ドラマも見てもらえたこと、それを届けることができた上に反響があるというのは光栄ですし、とてもうれしく思います。新井順子プロデューサーや、塚原あゆ子監督の下で、みんながすごく作品に寄り添っていたんです。それをすごく感じていて、今回は本当に皆さんからいただいた賞だし、作品にいただいた賞という風に受け止めています。
――成瀬という役でこだわったところは?
希美(榮倉奈々)の心のよりどころという役だったので、そこを本当に強く持ちながらも、主張し過ぎないように気を付けました。成瀬は、言葉にすごく温かみがあるんですよね。だから本当にそれをすごく大事にするように意識していました。
また、今回、原作の湊(かなえ)さんはじめ、プロデューサー、監督、脚本の奥寺(佐渡子)さん、主演の榮倉奈々さんたちの女性の力というか、女性から見る純愛の中で、成瀬という役を作っていただきました。女性だから分かるツボというか、大事にするポイントをすごく丁寧に作っていただいたので、視聴者の女性の方々が成瀬の人の温かさや人間性に魅力を感じてくれたのだとも感じています。
――印象に残っているシーンは?
どれも大事なんですけど、火事が起きた日の夜、病院で希美に突き放されるシーンがあって。そのあとに彼女の心の気持ちを知りたくて、電話するんですが、それを段々畑の上と下で、顔も見えないぐらい遠いので表情は見えないんですけど、榮倉さんが感極まって泣いてしまっていたんですよね。
台本を読んだときはそこまで感情が出てくるとは思っていなかったのですが、希美は希美で抱えているものだったり、突き放すものができた瞬間のシーンで。顔が見えないけど、電話越しにその思いが伝わってきたのが分かって、今でもよく覚えています。
あとは、2週間ぐらい合宿のように瀬戸内海でロケをしたことがとても思い出深いです。暑さにも負けないで、毎日みんなで汗を流しながら日焼けして…瀬戸内海ロケが終わって、緑山(スタジオ)や都内で撮影しているのがすごく不思議な感じがありました(笑)。
――結末はどう思われましたか?
最後は見る方に委ねる形で終わるんですよね。「希美が成瀬の元に来る」というのは最初の方に聞いていたのですが、先を知ると先を知った芝居になってしまうというか、そうならないように「でも、どうなるか分からない」と頭の中では思っていました。
でも、最後がああいう形になれたことは成瀬くん的には報われたとは思います。最後は抱き締めて終わるんですけど、どちらかというと抱き締める前の手を取る方が個人的には大事だなと思ったんです。火事のシーンもそうでしたが、2人で秘密を分かち合うというか、事件当日のXデーのときも、希美とは手の触れ合いというのが2人の距離感を表してきたので。
――家入レオさんが歌う主題歌の「Silly」もドラマソング賞に選出されました。
「Silly」が流れるタイミングは、監督たちがずっと大事にしていましたね。なので、「きょうは成瀬(のシーン)で流れたー」とか、出演者みんなもいつも盛り上がっていました。
打ち上げで家入レオさんが歌ってくださったときは最前列で聴いてたんですけど、言葉にならなかったですね。
――昨年は1年間で「花子とアン」、「ST 赤と黒の捜査ファイル」(日本テレビ系)、「Nのために」の3作品に出演されました。今後どんな役者になっていきたいですか?
きっかけがあって、芝居を好きになりました。好きなことを仕事にできている喜びを今とても感じています。
ありがたいことに、ドラマや映画をやらせていただく機会も増えてきましたので、できる限りいろんな役、いろいろな意味で息の長い役者にはなりたいと思っています。どんな作品でも伝えたい思いというのが制作者にはあるので、そこが伝えられる人、そういうふうな役者になりたいと思っています。