4月4日、日本テレビほかにて新アニメ「てさぐれ!部活もの すぴんおふ プルプルんシャルムと遊ぼう」の放送がスタートした。
本作はギャグアニメ「てさぐれ!部活もの」シリーズの第3作。これまで登場したキャラクターに加えて、新たに月刊少年シリウス(講談社刊)で連載中の漫画「みならい女神 プルプルんシャルム」のキャラクターたちがレギュラーで出演する、本編のスピンオフという位置付けの作品になっている。
監督の石ダテコー太郎は、お笑い芸人から放送作家に転身、「人志松本のすべらない話」(フジ系)など人気番組の構成を手掛けながら作品制作を行うアニメ界でも異色の存在。
作風もほかのアニメ作家には見られない意欲的なもので、バラエティー番組や生放送番組のノウハウが多分に取り込まれている。そこで今回は石ダテ監督の作風を解説しながら、本作の見どころを紹介する。
「てさぐれ!部活もの」シリーズの特筆すべき点は、劇中のせりふがほぼキャストのアドリブで占められていること。アドリブパートでは野球部や柔道部など部活動のあるあるネタをたたき台に、キャストはそれまでのあるあるを超える“新しいあるあるネタ”をアドリブで発表するという大喜利形式で行われる。
そのため登場するキャラクターには、役を演じるキャスト自身の個性が色濃く反映される。これまでの2作を通じて、主人公の「てさぐり部」部長・鈴木結愛は演じる西明日香のお調子者な性格や下ネタ好きな一面が、てさぐり部メンバーの田中心春に至っては、もともとはツッコミキャラだったにもかかわらず、演じる大橋彩香の笑いの才能により大ボケキャラに変化。そのままキャラクターの個性として形成されていった。
この「キャスト本人の面白さをそのままキャラクターに取り込み、新しいキャラクターに育て上げる」手法は、バラエティー番組やコント番組のキャラクター作りにも共通しており、本作はギャグアニメながらキャラクターの一種の成長を描くことで、続けて見ることの価値を生み出している。
さらに“予定不調和”感も石ダテ監督の作風を特徴付ける。本作では普通ならカットされるような、会話中に不自然に起こった間やお題を外れた展開もそのまま使用されている。
これは石ダテ監督が構成で参加する「5時に夢中!」(TOKYO MX)などの生放送番組が持つ「何が起きるか分からない」“予定不調和”な面白さに通じている。「5時に夢中!」はマツコ・デラックスを輩出したことでも知られる過激な本音トークが売りの番組だが、本作もアドリブという形で過激な本音トークを持ち込んでいるため、ほかのアニメにはないドキドキ感を味わえる。
石ダテ監督は本作の前に、リアルタイムで3DCGのキャラクターを動かしながら放送する生放送アニメ「みならいディーバ」('14年、NOTTVほか)を制作していることからも“予定不調和”へのこだわりを感じることができる。本作にもこれらの要素も多分に盛り込まれており、石ダテ監督がこれまで培ってきたノウハウの集大成となる作品になるだろう。
第1話は冒頭からある伏線を敷きつつ、てさぐれメンバーとプルプルんシャルムメンバーによるアドリブパートを中心に描かれる。
劇中では石ダテ監督式の演出でキャラクターとして“成長している”てさぐれメンバーと“まだ成長する前”のプルプルんシャルムメンバーを対比させており、初めて「てさぐれ!部活もの」を見る視聴者に対する配慮も施されている。癖の強いように見えて、できるだけハードルを下げるという丁寧な作りも人気バラエティー番組に携わってきた石ダテ監督ならでは。
それまでのアニメが乗り越えられなかった面白さの問題を、自身の経験を生かした新しいアプローチで開拓しようとする仕掛けがこそが、石ダテ作品が異色の存在ながらアニメファンの支持を受ける一因となっていることは間違いない。本作はアニメファンはもちろん、バラエティー番組や生放送番組を愛する“テレビ好き”の視聴者にこそ見てもらいたい作品だ。
「てさぐれ!部活もの すぴんおふ プルプルんシャルムと遊ぼう」は毎週土曜日の夜1:55から放送。放送終了後の夜2:25には、ニコニコ動画の公式チャンネルで最新話が公開される。
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)