「大器晩成」で話題の中島卓偉が新作を語る<前編>

2015/04/07 18:00 配信

音楽

15枚目のオリジナルアルバムをリリースする中島卓偉。最近ではアンジュルムや℃-uteなどへの楽曲提供でも注目を集めている

シンガーソングライター・中島卓偉が4月8日(水)、通算15枚目のオリジナルアルバム『煉瓦の家』をリリースする。

最近では、ハロー!プロジェクト所属のアイドルグループ・アンジュルムに楽曲提供した「大器晩成」(2月発売)に続いて、℃-uteのニューシングル(4月1日発売)にも「次の角を曲がれ」を提供。アイドルファンを中心に大きな注目を集めている。

今回のアルバムにも収録されているこの2曲は、もともと自身用に作っていたものだという。そんなエピソードを導入に、現在の歌詞に対する考え方やアルバムタイトルに込めた思いなどを聞いた。

――まず、「大器晩成」と「次の角を曲がれ」の楽曲提供はどういう経緯だったんですか?

実はこの2曲というか、今回のアルバム自体、去年の11月に完成していたんですよ。ちょうど、同じ事務所のアンジュルム℃-uteが次の候補曲を決めるタイミングで、あれ?この曲良いいんじゃない、という話になったという…。リリースの順番では僕がセルフカバーという感じですが、実は僕の曲が先にあったんです。とはいえ、話が決まってから、女子が歌っても成立するような内容にしようと、歌詞を変えたりはしましたね。

――変えようと思ったのは主に歌詞のどういう部分だったんですか?

例えば「次の角を曲がれ」だと、横にも斜めにも道はある、という歌詞があるんですが、もとは、横にも後ろにも、と言ってたんです。でも℃-ute10周年最初のシングルで彼女たちが歌うのであれば“後ろ”じゃないなって思ったんですよね。僕自身は長いキャリアの中で“後ろにだって道はある”と言えても、まだ二十歳前後の彼女たちは後ろなんか見るタイミングじゃない。「大器晩成」にいたってはシングルらしく、より引っ掛かる感じにしようと歌詞を全変えしました。もとの歌詞のテイクは残っていないんですが、結果、こっちでよかったと思います。歌詞の意味、世界観は大事ですからね。

――女性アイドルグループが歌うことでの発見はありましたか?

僕は自分でほとんど全部の楽器を弾いてアレンジもするんですが、彼女たちの場合はアレンジャーの方が入るので、仕上がってきた音を聴くときワクワクしましたね。違う人に預けるとこれだけ変わって、こんなに新鮮に聴こえてくるんだって非常に勉強になりました。

――アイドルつながりで言うと、女性アイドルに起こった事件を描いた「御城寺梨紗~all good idols go to heaven?~」は衝撃的なストーリーにお笑いコンビのタイムマシーン3号によるナレーションが組み合わさって、カッコいい曲とのギャップが魅力ですね。

この曲は前作の『BEAT&LOOSE』('13年10月発売)に入っている「サイトウダイスケ~all good adults go to heaven?~」の続編なんです。こういうちょっとシュールな、フィクションのストーリーの歌詞って最近あまりないなと思って作りました。洋楽の訳詞を見て実はそんなこと歌ってたの?って驚くことがありますけど、こういうメロディーにはこういう歌詞、と決めているのは自分なんだなって、20代後半ぐらいからそう思うようになってきて。だから、カッコいい曲にカッコいい歌詞を乗せるより、アンバランスな感じで攻めるのが自分にとって新鮮なんです。タイムマシーン3号のお二人にもお手伝いいただいたのも効果的でしたし、ライブで再現できるといいですね。

――歌詞では、シングル曲の「続けろ」をはじめ、ストレートにガツンとくる言葉が印象的ですが、ここ数年、ストレートな表現が多いように感じるのは意識的にですか?

そうなんですよ。普段から本をよく読むんですが、わかりやすい文章と知的な文章っていうのはジャンルが違いますよね。でも結果論でいうと、印象に残ってるとか思い出に残ってるとか、時間がたっても覚えている言葉は文章的にやさしい方で。もっと言えば文章というより、ワンワードずつをくっつけたようなものの方が心に入ってきやすいなぁと思ったんです。

――日本語のタイトルが増えたのも意識的?

デビュー当時は英語のタイトルばかりでしたからね。洋楽から入った自分としては、俺のフィルターを通して曲を書いたらこうなる!みたいなことを証明したかったんでしょうけど、やっていけばいくほど、自分自身が感動できるか、自分自身に伝わっているかっていうことを意識するようになってきたんです。英語よりも分かりやすい言葉で歌う方がステージ上での説得力が違いますしね。もう一つ、自分もコンサートを見に行った時に、英語の歌詞よりも日本語の分かりやすい言葉で歌われたサビとかに感動するようになってきたんですよね。そこに気付いてからは、もっと簡単で、会話の中で使っているような言葉でまだ歌詞に書いてない言葉ってなんだろう、って探すようになった。そこで「次の角を曲がれ」っていう言葉が急に出てきたり。昔ならこんなのタイトルにならないとも思ったでしょうけど、分かりやすいんじゃないかと。誰だって歩いていたり車で走っていても次の角はあるわけですから。

――そうですね。簡単な言葉を探すことには難しさもあるんですか?

正直、難しい言葉で書くより簡単な言葉で作詞する方が大変なんです。難しい言葉を使った方が伝えやすかったり、文章的には正解だったりすることって多いので。小説とは違いますから、聴こえなかったら、いい歌詞じゃない。歌だけ聴いていいなと思っても歌詞で見ると何これ?ってなってはダメなんですよね。その戦いを30代に入ってからのこの5~6年ずっとやってきています。より、ぜい肉をそぎ落とす作業ですね。デビュー当時は、こういうのは歌詞で書かない、みたいなヘンなこだわりが多くて…随分少ない引き出しでやろうとしてたんですよね。でも、自分の生活の中で使っている言葉を使って書く人になってもいいかなっていうふうに変わってきたんです。

※「『大器晩成』で話題の中島卓偉が新作を語る<後編>」に続く