脚本家・高橋悠也が語る「天使と悪魔」の裏側(1)

2015/04/24 05:00 配信

ドラマ

「天使と悪魔-未解決事件匿名交渉課-」の脚本を務める高橋悠也氏

4月10日よりスタートした剛力彩芽主演ドラマ「天使と悪魔-未解決事件匿名交渉課-」(毎週金曜夜11:15-0:15ほか、テレビ朝日系)。日本ではまだ認められていない司法取引を用い、“天使のような警察官”蒔田ヒカリ(剛力)と、“悪魔のような弁護士”茶島龍之介(渡部篤郎)がタッグを組んで未解決事件を捜査する本格ミステリーだ。

コメディーやセクシー系など、いわゆるチャレンジ系ドラマが多い“金曜ナイトドラマ枠”としては珍しく、硬派な刑事モノとなっている。

そんな同作の仕掛け人は、「35歳の高校生」('13年、日本テレビ系)、「金田一少年の事件簿N(neo)」('14年、日本テレビ系)などの脚本を手掛けてきたヒットメーカー・高橋悠也氏。コメディーからシリアスまで、幅広い作品を手掛けてきた高橋氏が「天使と悪魔-」を描いたきっかけや、キャラクター作りのこだわりなどを語った。

「きっかけは、金曜ナイトドラマの枠でゴールデン帯でもおかしくないクオリティーのドラマを作ろうと思ったところから。割とコメディー系の作品が多い枠だとは思うんですが、あまりそちらにはいかず、真剣に刑事ドラマを作りたいなと思っていました」

金曜ナイトドラマ枠を見据えながらも、あえてその枠らしからぬ作品作りをテーマに置いていたようだ。その中でも司法取引をテーマにした訳とは?

「プロデューサー陣といろいろ話し合って、司法取引をテーマにしたものが良いのではないかと考えました。ちょうど昨年、法制審議会で改革案が決定したばかりのタイムリーな話題でしたし。司法取引を盛り込んだ事件をかつてない試み、スケールでやりたいなと。何より他の人にやられる前にやるしかない!って感じでした(笑)」

とはいえ司法取引に関しては、実際に判例がちまたに溢れているわけではない。何より未解決事件を描くということ自体、難しいことだ。

「物理的なことで言えば専門用語が難しいというのは当然ですが、このドラマの場合は事件を『司法取引を使って解決しなければならない』のが難しい。司法取引に至るまでには、事件の容疑者、というより犯人が分かっているけど、その人物をオトすだけの物的証拠に欠けるという状況が必要。状況証拠はあっても物的証拠は何もないという事件じゃないとダメなんです。

本来の事件モノなら、容疑者を追及して調べていき、『おまえが犯人だ!』で終わらせられるんですけど、共犯者とか真実を知る別の人物に司法取引を持ち掛けてオトすというやり方がしたいので、それだけでは足りないんです。だから物的証拠はないけど、犯人は分かるという手順が必要不可欠になってくる」

単純な刑事ドラマにはない苦悩がそこにある。つまり、司法取引と未解決事件をつなぐファクターがこの作品を描く上で必要だという。

「司法取引を持ち掛ける相手にも弱みがなければ取引にはなりません。持ち掛ける相手にも隠している裏の顔をさらしていかなければいけないということで、結構計算してやるべきことが多いんです。つまり普通の事件モノとは違う、“二重の苦しみ”がありますね。今回、未解決事件を扱うに当たって、リアリティーを追求しました。誰もが認める本格ドラマを作る上で、この匿名交渉課という設定自体がフィクション性の高い部署なので、せめて事件にはリアリティーを求めていこうと思いました」

その一方で、主人公の警察官とタッグを組む弁護士は言ってしまえばフィクション性が強いキャラクター。しかし、そこにも高橋氏ならではの強い意味付けがあるようだ。

「このドラマの大きなテーマとして“人の表の顔と裏の顔”というのがあります。『すべての人間には裏がある』というキャッチコピーがありますが、それを表現するに当たって、ヒカリと茶島はまさに表と裏を担う人物配置というかキャラクター造形をしていけば面白く描けるんじゃないかと思いました」

このドラマを象徴する相反するキャラクターを描きたかったという高橋氏。特に2人のキャラクターでこだわっているところは?

「本来の役職的には人を疑うべき警察、人を信じて擁護すべき弁護士、というキャラクター性なんですけど、このドラマのキャラクター設定は役職に似つかわしくない正反対の役どころにしました。そういう異色のタッグというキャラ付けをした上で物語を作っていったら面白いんじゃないかと。だからこそ主人公を演じる剛力さんは天使のように人を信じる警察官にしました」

その主人公を演じる剛力。脇を固めるキャストに話を聞いても、誰からも愛される性格の持ち主だが、高橋氏もそれに違わぬイメージを持ったようだ。

「実際に映像で見て、ヒカリ役の剛力さんは彼女が本来持っている魅力というものがストレートに出ているなと思いました。人を信じ過ぎる主人公というのは、言わば王道というか、ありがちなものかもしれないですけど、尻込みせず彼女の魅力を存分に生かしていきたいなと思っています。ヒカリは警察官なのに人を信じちゃうという、ともすればばかっぽく見えてしまうキャラ。でも、警察官であるからには、必要最低限あるべき哲学というのもあると思うんですけど、天使のようなヒカリというキャラクターを描くに当たって、人の信じ方。信じるありようをリアルなストーリーの中でどういう風に描写していけばいいのかは悩みました」

【次回へ続く。次回の記事は5月1日(金)朝5時に掲載予定】