【「遺留捜査」上川隆也が激白1より続く】
――今作のクライマックスシーンでも、オン・オフの切り替えはできていたんですか?
ええ。たくさんのエキストラの方に囲まれて、僕ら2人(上川と鈴木福)で立ち位置についたとき、あの状況で「ラッスンゴレライ」をやっていたんですよ! ちょっと舌を巻きますでしょう?(笑)本当に驚天動地なんですよ。
一口に雑談と言ってもただの雑談ではなく、シチュエーションとしてはとてもすごい雑談だったわけです。細やかに役と向き合ってらっしゃる方だったら、ややもすれば「ちょっと今は…」と言ってしまいそうな場面ですから。それすらないわけですから、そこが鈴木福くんのすごさなんでしょうね。
――いずれまた共演したいとのことですが、今度共演するとしたらどういう形で共演したいですか?
福くんに関しては、いろんな可能性を内包しているような気がします。どんな形で、というよりはどんな形でも、と言った方が良いのかもしれません。
それが例えば親子役だったとしても、先生と生徒でも、極端な話、僕より立場が上の役に福くんがいてもいいでしょう。
どんなふうに立ち位置を変えたとしても楽しいことができそうな予感がありますね。ですから何をしたいかというより、今はとにかくまた会いたいと思っています。
あっ、北村有起哉にも触れさせてください(笑)。クライマックスシーンが胸を打つ出来映えになったのは、有起哉が一ノ瀬というキャラクターを説得力のある人物として描いてくれたのが、一つの大きな要因です。コレは言わないわけには参りません。彼も、いつでも共演したい役者の1人です。
――そして今回は捜査一課時代の同僚である宮下さん(螢雪次朗)とタッグを組まれて捜査されましたが、螢さんと共演された感想を教えてください。
今回の大きな物語の流れが福くんを中心とする流れだとすると、見どころの伏流水のような部分としてあるのが螢さん演じる宮下刑事との捜査だと思うんです。これもシーズン1から紡いできた物語があるからこそ成し得るストーリーなのかなと。
本来ですと糸村は捜査の本筋からちょっと離れたところを走ることが多い中、今回は捜査一課の宮下刑事と同行することによって、シーズン1の糸村を想起していただけるというような仕組みにもなっておりますし、どこか糸村も嬉々としてついてまわっているような風情だったと僕にも思えるんですよ。そこは今まで「遺留捜査」を楽しんでくださった方に見ていただきたいもう一つの見どころだと思いますね。
――波岡一喜さん演じる横山さんを加え3人が集合したシーンも懐かしい感じがしました。
ああいう仕掛けは見てきた人にこそ楽しめるというか、ある種の“特典”的な部分があると思います。
――そういえば、毎回糸村が最後に口にする「3分だけ時間をください」というせりふですが、この3分に意味はあるんですか?いつも3分どころじゃない気がしますが(笑)。
(笑)。時間に対しての拘泥というか、律儀さはシーズン1の1話目からなかったんです。始めから3分と言いながら優に3分を超えて話していましたから。
そして当初からお客様には「また3分じゃなかったね」というようなツッコミをいただいておりました。でもむしろこのツッコめる余地というのが、今となっては「遺留捜査」の味と言ったら言い過ぎかもしれませんけど、いい脇の甘さのような感じはするんですよね。
もちろん最初から最後まで水も漏らさぬ、完璧なストーリーの物語をお届けするのも、価値があると思うんですけど。以前もどこかで引き合いに出しておいて恐縮したんですが、「男はつらいよ」の寅さん。観客にしてみれば、寅さんはフラれるのが分かっていて女性にアプローチするわけで。そしてお客さんも、フラれるさまを見て「寅さんまた頑張れよ!」と思ってしまう。
糸村の「3分」もそういう大いなるマンネリの一つと捉えています。「3分って言ったけどどうせまた3分じゃないんでしょ?」ってツッコミをもらえる事が、糸村という男のある種の特性だと思うんですよ。
でも、奴が言う言葉にはどこか真実味と説得力みたいなものも伴っているからこそ、3分を超えても耳を傾けていただけるんだと思います。シーズン2では、八嶋智人さんが「3分じゃねえじゃん」って作品内でツッコみましたし(笑)。
それでも、あくなき無神経さと正直さで貫いていく糸村のキャラクターも僕は愛しく思っています。深い意味があるというよりは口癖みたいなものなんでしょうしね。
――では最後に。5月に入り、そろそろ新入社員の人たちも五月病になりそうな時期ですが、フレッシュマンに向けてエールをお願いします。
うまく言えないなあ(笑)。あの、世の中にあまりお金の嫌いな人っていませんよね(笑)?もらえるお金なら尚更そうだと思います。
皆さんは実社会に出て、お給金を先月に初めてもらって、社会の“ギブアンドテイク”というのを目の当たりにしたと思います。学生時代にアルバイトを経験している方もいるでしょうから人生初めてということはあまりないかも、ですけど(笑)。
そして、そのお金を、貯金をするなり、有益に使うなり、いろんな使い道を考えてらっしゃるでしょう。それと同様に、たぶん今の時期に皆さんが選んだ行動は、いずれ使い道のあるものとして返ってくるものだと思うんですよ。
誰でもそうなんですけど、特に若い皆さんはその「換金率」が一番大きい時期です。例えばきょう頑張って目の前にある仕事をする、これがいつかは分からないですが、必ず自分のもとに大きくなって返ってくる。
それは僕が確信をもってお伝えできることなんですよね。ですから、できる限り今は目の前にあることは精いっぱいやった方がいい。それが5年後、10年後に誇れるものになるはずです。今は貯金だと思って、すぐには返ってこないし利率も不確かだったとしても「とにかくやってごらん!」と思います。
例えば僕が今こうしてお芝居をやっていて、ありがたいなと思うのは、20代に劇団で過ごしていたころ、身体訓練と称して腕立てだの腹筋だのを無茶な回数こなして、あきれる程の運動をしていました。
でも、その時に培った体力は、今の僕の舞台での動きやお芝居での表現の一端を支えていると思うんですよ。今になってあの時やっておいて良かった、ありがたいなぁ、とつくづく思うんです。それは僕の実感としてお伝えできる事実です。
それはきっと、仕事を通して得られる経験や蓄積でも同じでしょう。ですから、将来の「生涯給金」になると思って何事もやれるだけやってみてください。
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)