CS映画専門チャンネルのムービープラスで放送中の番組「この映画が観たい」。6月は、パーソナリティを務めるラジオの映画批評コーナーが大人気、ヒップホップグループ・ライムスターのラッパー、宇多丸が登場。都内で収録を行った。
同番組のテーマはさまざまな分野で活躍する著名人に、かけがえのない“映画体験”とそれにまつわる人生のエピソードを語ってもらうというもの。
まず名前が挙がったのは、‘79年の青春映画『ヤング・ゼネレーション』。 初めてTV放送で観た時は“単純に青春映画として面白い”という感想だけだったそうだ。
しかし、「大学5~6年(留年中)の時に観直したんですけど、最初に観た印象と全く違って嗚咽が止まらないほど泣けてきたんですよ。大学時代は既にライムスターで活動していたんですけど、鳴かず飛ばずの時期で。そんな時、神保町の中古ビデオ店でこの映画のビデオを手に入れました。未来が見えず、日本語ラップというジャンルでもがいていた自分と主人公の状況がものすごくシンクロしたんですよ」と、振り返った。
また、この作品はライムスターの曲「ONCE AGAIN」を始め、その後の音楽活動全体のスタンスに近いと語る。「夢を持ったことで生じる苦しさや、とんでもない人生を送ってきているなという気分と、でも“そういうものはあったほうがよくない?”という気持ちは、直接的ではないけど主人公からの影響ですね」
そこで、この作品を誰と、どんなシチュエーションで観てほしいかと問うと、「映画は人と観るもんじゃないという持論があるんです。人と観るとその人の反応が気になっちゃうから。シチュエーションとしては、自分がこの方向に進んでいいのか、と迷っている時に観てもらうといいんじゃないですかね。好きな業界に入ったけれども、向いてないんじゃないかとか、最初ほどの情熱が保てないとか、憧れて入ったのに業界のクソみたいな人に意地悪されて嫌になっちゃったとか、誰にでもそういうことがあると思うんですよ。そういう時に寄り添ってくれる映画じゃないですかね。だから、僕みたいに部屋で膝抱えて一人で泣いた方がいいんじゃないですか(笑)」と答えた。
その他番組内では、映画『アポカリプト』を含む5作を独自の見解で語っている。「アポカリプト、面白さには絶対の自信があったので、今の奥さんとの初デートで連れて行ったんだけど、「超苦手」だって(笑)。でも、映画好き同士はお互いに論じ合うのが楽しいんですよ。映画の観方で好き嫌いが分かれるのは当たり前だし、そうじゃないと気持ち悪いでしょう。みんな好きなものに関して全力で議論し合うってものがないの?可哀想にって思いますよ(笑)。映画ファンは、好きな映画が違ったら仲良くなれないって発想になりがちなんだけど、その考え方は良くないと思います。例えば配偶者を選ぶとき、自分と趣味が合う人がいいとかってよく言うじゃない?趣味なんか中途半端に合ってると一番ケンカするから(笑)。どっかで合わないところが確実にある。でも、たまに一致する部分があってテンション上がる、みたいな感じが一番いいんじゃないかな。パートナー選びに同じ感覚とか基準を持ち込むのは危険だと思う」と宇多丸節を炸裂させた。
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