NBAスター選手のシューズに刻まれた日本人選手との絆

2015/07/05 10:00 配信

芸能一般

バスケットボールプレーヤー・伊藤大司選手が、NBAトッププレーヤーであるケビン・デュラントの素顔を語る!

華やかなプロスポーツ界の中で戦うスタープレーヤーたちの姿を追ったドキュメンタリーが、WOWOWライブで7月5日(日)に放送される。NBAで'13-'14シーズンのMVPに輝いたケビン・デュラントや、“サッカー界の至宝”と称されるクリスティアーノ・ロナウドらに密着取材を行い、戦いの裏側にある抱える厳しさや苦しさ、さらには激動の半生に迫る。

今回、トヨタ自動車アルバルク東京に所属するバスケットボールプレーヤー・伊藤大司選手に、NBAのトッププレーヤーであるケビン・デュラントについて語ってもらった。ケビン・デュラントとは、モントローズ・クリスチャン高校で共にプレーしていた伊藤選手。高校卒業後も続いた交流や、ケビン・デュラントのシューズに隠された絆について明かしてくれた。

――高校を卒業してから、伊藤選手はポートランド大学、デュラントはテキサス大学に進みましたが、それからも交流は続いたんですか?

「大学に進んで1年間は会うこともなかったんですけど、ケビンがアーリーエントリーでNBAに行くって表明したとき、ナイキとアディダスが契約のために接待みたいなことをしたんですよ。ナイキの本社とアディダスのアメリカ本社がうちの大学の近くにあって、ケビンがまずアディダスの招待で来て、近いから会おうってなったんです。その時にポートランド市の一番いいホテルの最上階が貸し切られていて、ホテルに迎えに行ったらホテルの職員が全員アディダス着ていて、“ウェルカム トゥ アディダス ケビン・デュラント”ってホテル全体で歓迎していて(笑)」

――アディダスの本気が伺えますね…。久しぶりに会ったデュラントの印象は変わっていましたか?

「僕の大学のキャンパスに連れて行ったら、周りの人たちが『あー!』ってなるんだけど、ケビンは謙虚で自然体で『スーパースターだ』みたいな感じもなくて。変わってないなーって嬉しくなりましたね。その時のドラフトは、1位指名権がポートランド・トレイルブレイザーズ、2位指名権がシアトル・スーパーソニックス(現在のオクラホマシティ・サンダー)で、ポートランドならすぐ近くにアリーナあるから、僕としてはポートランドに来てほしかったですね。でもグレッグ・オデンがドラフト1位でポートランド、ケビンが2位でシアトルになって。それでもケビンがNBAデビューして1~2年は、ポートランドに試合で来るとき、スケジュールの合うときは必ず会って一緒にご飯食べてましたね」

――デュラントがNBAプレーヤーになってからは、どんな話をされたんですか?

「高校のときはお互いお金がないから、一緒に外食行っても値段見て『これが安い、これにしよう!』ってやってたんです(笑)。あと、友達に『25セント貸して』って20人くらいに頼んで、2ドルくらい集めて自動販売機でチップス買ったりとか。それが、『チームで泊まっているホテルの地下にステーキ屋さんがあるからそこに行こう』って、メニューには数百ドルとかの金額が載っていて、パイナップルジュースが15ドルとか(笑)。学生の僕からしたら『えーっ?』みたいな値段なのに、オーダーする前にケビンが『いいよ、俺が払うから!』って言ってくれて。支払いのとき、ケビンがサインして『高校時代覚えてる?俺みんなに10セント貸して、25セント貸してって言い回ってたのに、今じゃもう値段も見ないで頼めるようになったんだよ(笑)』って。その日は高校の思い出話でめっちゃ盛り上がりましたね。マクドナルド行ってもダラーメニュー(1ドルで買えるメニュー)ばっかり食べてたね、とか」

――高校時代とのギャップがすごい!まさにアメリカンドリームですね。

「ケビンが成功して嬉しいですし、ここまですごい存在になってしまうと、何とも言えない感情ですよね。ケビンのシグネチャーシューズ(そのプレーヤーの名前を冠したモデルシューズ)が決まって、試合を見に行って会ったとき、『タイシ、シューズにお前の名前入れといたから』って言われて、最初どういうことか分かってなかったんですよ。シューズにサインでも書いてくれたのかな、うれしいことしてくれるなって思ってたんです。それから1~2週間が経ったとき、大学のチームメイトが『タイシ凄いじゃないか!』ってバッシュ持ってきて、『これケビンのバッシュの新しいモデル、裏見てみな』って言うから、見たら僕の名前がデザインとして入っていて、『うわぁ!』って(笑)。すぐ電話したら『お前の存在があったから』みたいな感じで言ってくれて、嬉しくて涙出そうになって、めっちゃ鳥肌たって…嬉し過ぎですよね。“ITO”って入ってるから、シューズ買った人にしてみたら『誰だ?』って話なんですけど(笑)」

――デュラントにとっても、伊藤選手は非常に大事な存在なんですね。ここで最近のデュラントの話になりますが、'13-'14シーズンにはMVPを獲りましたね。

「あのときはシーズン通してそういう活躍をしていたので、MVPを獲るだろうとは思っていました。でもそこにいくまでに、あのケビンがMVPレースに名前が挙がるほどの存在になるとは…と思っていたので、大活躍し始めたときには驚きましたね。受賞スピーチは話題になりましたけど、彼の性格がそのまま出ていて、正直さすがだなって思いました。高校のとき、家族の事情を話してくれていたので、苦労してきたお母さんに対するスピーチはすごい印象的でした。チームメイトに対するスピーチは、『ケビン大人になったな』って(笑)。MVP獲ったこともですけど、あのスピーチで、あのままのケビンでいるんだなってことが分かって嬉しかったですね」

――それでは最後に、プレーヤーとしてのデュラントに期待することを教えてください。

「やっぱりチャンピオンになってほしいですね。得点王にもなり、MVPも獲って、またそうした個人タイトルも獲ってほしいですけど、優勝経験は今までないと思うので。優勝したら、コービー・ブライアントやレブロン・ジェイムスに、本当の意味で並べるのかなって。今もそのレベルにいるとは思うんですけど、アメリカではやっぱり『チャンピオンリング持っていない』とか、『コービーは5つ、レブロンは2つリング持っている』とかいう話題も出るので、ケビンが優勝したらそういう意味でも肩を並べられる。このままいけば若いチームで、ケビンがリーダーとして引っ張って優勝したら違う意味もあるだろうし。優勝したら、また良いスピーチ聞きたいですしね(笑)」