7月16日(木)、第153回芥川龍之介賞・直木三十五賞の受賞者記念会見が行われ、芥川賞に輝いた羽田圭介氏と又吉直樹、直木賞に輝いた東山彰良氏の3人が登壇した。
又吉の受賞作「火花」(文藝春秋)は、笑いとは何か、人間とは何かを描ききったデビュー小説。奇想の天才・神谷と、彼を師と慕う後輩・徳永。笑いの真髄を追求する2人のお笑い芸人それぞれの人生を描いている。
芸人初の芥川賞作家となった又吉は、会見の第一声で「びっくりしたんですけど、とにかくうれしいです」と喜びをあらわに。そんな“又吉先生”の会見コメントを紹介する。
■又吉直樹 記者会見一問一答
――今回の受賞で不都合を感じていますか?
感じてない。コンビでやってるので、不都合はない。
(相方の)綾部(祐二)は仕事中らしいんですけど、コメントはくださったみたいで…敬語使ってしまいましたけど(笑)。
――ノミネートされてから、受賞の自信はありましたか?
(ノミネートの)連絡をもらったときは驚いた、うれしい、読んでいただけるんだというだけで自信はなかったですね、ゼロでしたね。
「ゼロです」とは言ってたんですけど、(きょうの)朝から緊張していたりしたんで、どっかに期待してた部分があったのかもしれないです。
――「火花」を書く前と書いた後で気持ちや生活に変わったことは?
書く前はおびえていましたが、急に書きたくなって。書いてるときはすごく楽しかったですね。広い表現というか、いろんなことができるんやなって思いました。
注目していただいて、街を歩いていても「『火花』読んだ」と声かけてくれる。「死神、死神」と言われてた感じとは違ったかな。
――お笑いと作家の比重はこれからどうしますか?
今まで通り芸人100でやって、それ意外の時間で書くという、その姿勢を崩さないようにしたい。
――なぜ、その比重なのですか?
どちらにとってもいいと思うんですよね。ライブを毎月やってるんですけど、そこで生まれたこと、コントにできひんことを、そのまま小説にはならないんですけど、どっかにそこに残っていて、文章の一歩目になることが多いので。
――次書きたいものは?
(書きたい)気持ちはありますね。
――(会見を生中継していたニコニコ生放送の)視聴者からの質問です。作品を書こうと思ったのはいつで、きっかけは何ですか?
「(出版社から)書いてみませんか」という声をかけていただいたのが大きい理由としてありますね。あとは、急にテンション上がったというか、例えが難しいんですけど、ジャッキーチェンの映画を見た翌日に階段を駆け上がりたい衝動に駆られるあの感じ。
西加奈子さんの「サラバ!」(小学館。前回の直木賞受賞作)を読んで、無敵になったような気持ちになってきて、書けたという感じになりました。
――現在、単行本の売上が64万部と聞いています。ミリオン(100万部)狙えるのでは?
書いている時はそんなイメージはなく、書き終わるとせっかくなのでいろんな人に読んでもらいたいというのがあるので、どんどん読んでもらって、僕のを読んで、別のやつも読んで、本好きな人が増えたら楽しい。(「火花」は)若手芸人にもついても触れてるので、劇場に来てもらいたい。お笑い、文学、演劇、どんどん盛り上がれば。
――書く芸と話す芸、表現の自由・不自由はどのようなものですか?
お笑いは、割と何やってもいい。子供みたいなこと言うと、自分が2人とか3人に瞬間的になれたりとか、そういうことができたら幅が広がるなというのがあって。自分の体と声でやるしかない、映像ならできるかもしれないが、そんなに不自由はないのかな。
お笑いの場合はすぐに笑ってないと思ったらやり方を変えたり―今笑ってないですけど―小説は変えられないですもんね。
――最後に一言お願いします。
まだ、お読みでない方がいらっしゃったら、ぜひ読んでみてください。
なお、7月19日(日)の「情熱大陸」(夜11:25-11:55、TBS系)では、芸人初の快挙を成し遂げた又吉に密着。受賞前後の胸中に迫る。
■第153回芥川龍之介賞・直木三十五賞 受賞結果
直木賞…東山彰良「流(りゅう)」(講談社)
芥川賞…又吉直樹「火花」(文藝春秋)、羽田圭介「スクラップ・アンド・ビルド」(文學界3月号)
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)