『風立ちぬ』制作秘話も飛び出す、鈴木敏夫の映画体験

2015/07/27 13:06 配信

映画

大学時代は年間300 本以上映画を見るほど映画好きだったというが、「好きなことは仕事にしな い」という持論のもと編集者になったと語る鈴木敏夫

CS 放送のムービープラスで8 月3 日(月)に放送される番組「この映画が観たい」の収録が行われた。同番組はさまざまな分野で活躍する著名人に、“映画体験”とそれにまつわる人生のエピソードを語ってもらうムービープラスのオリジナル番組。8 月に出演するのは、スタジオジブリのプロデューサー鈴木敏夫。今回は、TOKYO FM で放送中のラジオ番組「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」とメディアの枠を超えたコラボレーションが実現し、テレビのみならずラジオでも番組を楽しめる。

番組では、『テキサスの五人の仲間』(´65)や『バリー・リンドン』(´75)などを挙げ、作品の魅力や映画が鈴木自身にどのような影響を与えたかについて語ってくれた。

幼い頃、どのように映画と関わってきたかを聞かれた鈴木は、「両親が大の映画ファンでしてね。親父には「座頭市」のような邦画ばかり、お袋には「ベン・ハー」など洋画を見に映画館へ連れて行かれました。昔から、いわゆる大衆娯楽映画をたくさん見てきたので、今でも食わず嫌いせずにあらゆるジャンルの映画を見ています」と話した。

こうした映画体験は今の仕事にも役立っているようで、『風立ちぬ』(´13)を制作している時の興味深いエピソードを教えてくれた。「宮崎駿がいきなり僕の部屋に来て、『男女ってどうやって出会うんだっけ?』と質問してきたんです。その時パッと過去に自分が見た映画を思い浮かべ、僕は一言“帽子”って言ったんですよ。思い浮かべたのは、戦後日本が大変な時期、高校生が朝の超満員の電車に乗っていて、被っていた帽子が脱げてしまう。それをヒロインが手にし、ふたりは仲良くなるというシーンでした。子どもの時に見た映画の引き出しから、そういったシーンを引っ張り出すんです。結局それがヒントになって、『風立ちぬ』ではああいう出会いのシーンになりました。この作品の時は、特にそういったことが多かったです」と語った。

大学の時に見た『テキサスの五人の仲間』(´65)については、「いわゆる映画ファンの間で話題に上るような映画ではないので、自分の周りにはこの映画が好きな人は絶対にいないはずだ、となんとなく自信を持っていたんです。ところが宮崎駿と出会った29 歳の頃、好きな映画の話をしていたら、なんと彼はこの映画を観ていたんですよ。それで、ふたりで「あれいいよね、すごいよね!」と盛り上がっちゃって。ちょっと大げさかもしれないけど、僕と宮崎駿が一緒に仕事をするきっかけになったと言ってもいい映画なんですよね」と懐かしそうに語った。その他にも、ある映画評論のおかげでとても面白い作品だと気づかされたというスタンリー・キューブリック監督の『バリー・リンドン』(´75)や、“失敗作ゼロの天才”と断言するウディ・アレン監督の『サマー・ナイト』(´82)、『ゲド戦記』(´06)のヒロインの参考にしたという『春のめざめ』(´63)など、興味深いラインアップがズラリ。鈴木にとって、映画とは何なのか?その答えは番組で確認しよう。