9月22日(火)夜10時からスタートするドラマ「デザイナーベイビー―速水刑事、産休前の難事件―」(NHK総合)で、主人公の妊娠8カ月の刑事・速水悠里を演じる黒木メイサにインタビューを敢行。
産休直前の速水は、病院内で起きた新生児誘拐事件の捜査に動員され、やがて最先端の生殖医療に隠された闇に切り込んでいく。自身も出産を経験している黒木ならではの役へのこだわりや、“デザイナーベイビー”という重いテーマを扱う心境を聞いた。
――まずは、ここまでの撮影のご感想をお聞かせください。
病院内に怪しい人が2、3人いるということもあって、事件が二転三転していくので、話に追い付くのが大変です。解決したかと思えば次の容疑者が出てきて、一人の赤ちゃんをきっかけに刑事たちも振り回されます。常に緊張感のあるシーンが続きますね。
――妊娠8カ月の刑事という変わった役ですが、オファーが来た時のご感想は?
妊娠8カ月の刑事さんという役柄を聞いた時の率直な感想は、「なんだそれ、面白い!」でしたね。自分の中で絵が浮かばなかったですし、これまでそういう作品を見た記憶もなかったです。あとは、「デザイナーベイビー」という単語が引っ掛かって、赤ん坊を親の理想通りにデザインすることが可能になりつつあるという話を聞くうちに、見た人がそれを知るきっかけになればと思いましたし、一人の女性としてお話自体に興味が湧きました。
――劇中では、“親の理想をかなえるためにデザインされた赤ん坊”という意味での「デザイナーベイビー」が扱われていますが、その技術についてはどう感じますか?
もちろん、いろんな理由があって使われている技術だと思います。不妊治療によって助かっている、子供を授かった方たちもいるので、それは素晴らしいことだと思います。ただ、そうではなく自分の欲望のためにそれを使う人が出てくることは怖いなと感じます。
マネジャーやメークさんなどとも話したんですが、この話題は本当にいろんな意見が出るんですよね。それだけ小さい輪の中でも、「遺伝子操作をすることの何がそんなにいけないの?」という意見もあるんです。いろんな情報や技術が世の中にあふれかえっていて、それが役に立っていることもたくさんあるんですが、そうじゃないこともある。それを利用して、正しい知識を自分の中に入れて選択をしていかないといけないというふうに感じます。
――速水を演じる上で、妊娠の経験が生かされたと感じることはありますか?
おなかを大きくしていると、一度妊娠を経験したからということもありますが、妊娠中の感覚に戻ってしまいますね。おなかに入れているものは正直さほど重くないんですが、自然と腰が痛くなったりします。妊婦としての動きという面でも戸惑うことはなかったので、自然に演じられているのかなと感じますね。ただ、妊娠中の体調という面でも妊婦さんによってさまざまだと思うので、「妊婦ってこんなんじゃないよ」という意見はあると思います。“妊娠8カ月のおなかを抱えて、速水がどこまでやるのか”を監督とじっくり相談しながら決めていきたいです。
――家庭と仕事の両立という部分で共感するところはありますか?
仕事と子育てを両立することも大変だし、速水も上司・与那国(松下由樹)に「(仕事も子供も取るなんて)欲深いわね」と嫌みを言われたりもするんですが、与那国はただ“家庭を持っては刑事という仕事は務まらない”という価値観を持っているんだと思います。一方で速水は、仕事が好きで仕事を続けたいと思っていますが、おなかが大きいことで犯人を捕まえるための全力疾走もできないという葛藤があります。また、どうしても子供が欲しかったのに死産してしまった女性も出てきますし、ドラマの中でいろんな立場の女性が出てくるのは、私自身勉強になります。
その中で思うのは、「仕事と家庭を両立することはすごいけれど、家庭に入って子育てに専念することも素晴らしいことで、“ここが絶対に幸せで、これをやっていれば間違いない”というものはない」ということです。
――葛藤を抱えながら捜査を続ける速水ですが、そんな彼女の強みを挙げるとすれば何でしょうか?
監督からは、「男性捜査員があまり引っ掛からないワードにも妊婦だから反応できる、という部分を大事にしていってほしい」とお話がありました。速水が聞いているせりふの中で、「速水だったらどこに引っ掛かるんだろう?」というのを監督と話しながら演じています。
たとえば第1話では、速水が病院で聞き込みをしているときに、急患の妊婦の旦那さんが「(流産なんて)あり得ないんです」と医師に詰め寄るんです。ほかの人なら「取り乱しているのだな」と感じるところですが、それを聞いた速水は「(どうして)あり得ないなんてことがあるのかな」と思うんです。そこで病院スタッフから遺伝子操作や着床前診断などの可能性を聞かされた速水は、そのあともほかの登場人物が「あり得ない」と言っているのを聞いて、これが事件のキーワードだと感じていきます。
――最後に、本作は謎が謎を呼ぶミステリーですが、ここに注目すべきという謎解きのヒントや黒木さん独自の楽しみ方はありますか?
1話からずっと「この人怪しいな」「あれ、この人も怪しいな」というのが続くので、視聴者の皆さんが誰を疑うのかが気になります。速水は前半ではアリバイのない医師・須佐見(渡部篤郎)に疑惑の目を向けるのですが、速水と同じ視点で見てくれるのか、全然違うところに目を向けるのか…。誘拐された新生児の母親・優子(安達祐実)さえ、たまに怪しく見えてくるくらいなので、自由に見てください(笑)。
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