11月7日(土)から全国公開される映画「シネマの天使」に出演する、藤原令子と本郷奏多に対談インタビューを敢行。前後編で紹介する。
前編では、舞台となった広島の映画館「シネフ大黒座」の印象や撮影エピソードなどを語ってもらった。
――まずは大黒座の印象を教えてください。
藤原:122年という長い歴史があるからなのか、迫力がありました。一度劇場に入ったら“神聖な場所”というか特別な空間のように感じました。
撮影初日に近くの喫茶店に寄らせていただいた際、映画のエキストラ募集のはり紙があったので、「なくなっちゃうんですね」と店主さんに話し掛けたら「寂しくなるねえ」とおっしゃっていて…。本当に皆さんにとっても大切な場所をお借りして撮影するのだなと、気持ちが引き締まりました。
本郷:まさにクランクアップした翌日に取り壊したんです。撮影期間中も、ふとしたところに作業服を着たお兄さんがいたりして、壊していたりしたので、感慨深い思いで撮影したことを覚えています。
藤原:そうなんです! 実際に壊されている横でメーク直しをしました(笑)。そういう意味でもなかなかできない体験ができたなと思います。
本郷:そうだね。本当に壊しているんだ…というのがリアルに分かりました。122年間の歴史がある場所だから、キレイなんですけどその中に昔の映画館だなと思う部分もあって。あまりそういう映画館に行ったことがなかったので、とても驚きました。
シネコンはたくさんあって確かに便利ですが、今まではスクリーンが少なかったからこそ同じ映画を見て、いろんな思いを共有できたんでしょうね。そういう人と人とのコミュニケーションツールとしての役割も映画館が担っていたのだなと思いました。
――終わっていく場所には特別な空気もあるんですよね?
本郷:壁一面に書かれた大黒座閉館へのメッセージというか言葉が印象的でした。あれは美術部が狙って作れるものではないですし、そういうものが映像として残されるのはとてもいいはなむけになったんじゃないかなと思います。
映画は作品として「100年間残る」と言われていますが、大黒座は200年以上皆さんの記憶に残ることになるので、そんな映画館は他にきっとないでしょうね。この作品で、大黒座に対して良いお別れができたんじゃないかと思いますね。あ、いいこと言ったかも(笑)。
藤原:自分で言うんですね(笑)。
――(笑)。ちなみに映画に出演する前と後では、映画館に対する印象は変わりましたか?
藤原:すごく変わりました! 実家から映画館へは遠かったのでDVDで見ることが多かったんです。しかし、この映画に参加してからはなるべく映画館に行きたいなと思うようになりました。
本郷:僕は合理主義なので、DVDやインターネットで映画が見られる機会が増えたのはいいことだと思います。たくさん皆さんの目に触れる機会が多くなった方が絶対にいいと思うので。
ただ、やっぱり映画館で見るメリットとしては、“ながら見”をされないということが家で見るのとは大きく違う部分だと思うんです。テレビで映画を見るとCMも入るでしょうし、他にやりたいことをしながら見る人もいるでしょうから。
でも、映画館で見ると細かいところまで目を離さずに見てもらえると思いますし、細かい技術にも気付いてもらえると思うので。そういう部分がもしかしたら少しずつ薄れてしまっている流れなのかなと思いますね。
クリエーターの目線で見た場合、それは寂しいことだと思いますが、逆にプロデューサーの立場だったら違うと思うんですけど(笑)。
――試写を拝見して、若い世代の人たちを自然な感じで演じてらっしゃったなと思いました。どのあたりを意識して演じられましたか?
藤原:私は最初に監督とお会いしたとき「そのまま撮影に臨んでもらって、出てくるキャラクターのせりふを聞いて感じ取ってください」ということだったので、特に役作りはせずに入りました。
石田えりさんやミッキー・カーチスさんが役として発している言葉をちゃんと聞いて、感じるままに演じました。
本郷:僕が演じたアキラは、特別な“何か”を持っているわけではないと思うんです。むしろ、すごくつまらない若者だろうなと。あまり頭を使っていないですし、漠然と昔から何かやりたいってことがあったんでしょうけど、それに向かって努力もしていない。
出すアイデアも面白くないし、でもどこか映画が好きだなという思いを持っている。本当に今どきの何も考えていない若者を演じたつもりです。(藤原の視線を感じて)「おまえもその世代でしょ!」って思った? だから今、鼻で笑ったの?(笑)。
藤原:いやいやいやいや、思っていないです! それに私もむしろその世代ですから。
本郷:どうだか(笑)。ちなみに円周率って「3」だった?
藤原:いえ、私の時は“パイ”でした。3でも、3.14でもなく、パイでまとめられていました。
本郷:なるほど。僕の時は3.14だった。でも、気付いたら途中でパイになっていました。
藤原:そうなんですね。私は最初からパイでした(笑)。
本郷:マジか~。でも、世代的には僕もゆとりの最初のころに入るんですよ。
藤原:私とあまり変わらないじゃないですか!(笑)
本郷:そうかもね…。僕が演じるアキラが、「映画を作る!」って宣言するんですけど、絶対にアキラは成功しないんですよ。そんな感じがするじゃないですか(笑)。
でも、それでいいのかなと思うようになりました。何かを変えるキャラじゃないから。ぼんやり大黒座の近くにいた人Aを演じましたね。いや、僕がBかな。藤原さんがAで。
藤原:私がAなんですね(笑)。
本郷:やっぱりこの作品の主人公は大黒座であって、それに対して人々が何を思うか、という話なので。アキラというキャラクターが、大黒座の変遷に感化されて成功していくわけではないですし、少し大黒座に影響される人Bでしかないので、そういう意味でも普通の若者を演じられたかなと思いますね。
【本郷奏多「自分は結構この仕事に向いていると思う」へ続く。同記事は11月7日(土)朝6時公開予定】
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