「下町ロケット」は理系プロデューサーが作る“理系☓文系”のハイブリッドドラマ【後編】

2015/11/21 20:39 配信

ドラマ

11/22(日)より新章「ガウディ計画編」に突入する「下町ロケット」。本作を手掛ける伊與田英徳プロデューサーに制作秘話を直撃!【後編】(取材・文=小田慶子)(C)TBS

(「下町ロケット」は理系プロデューサーが作る“理系☓文系”のハイブリッドドラマ【後編】)

いよいよ11/22(日)、「下町ロケット」の第2部に当たる「ガウディ計画編」がスタートする。「ロケット編」では宇宙開発の分野を描き、「ガウディ計画編」では最先端の医療を題材にしている「下町ロケット」。まるで「プロジェクトX〜挑戦者たち〜」('00年~'05年NHK総合ほか)のように、佃は次々に困難なプロジェクトに挑戦していく。ドラマには実在の精密機器メーカーの社員たちが進んでエキストラとして参加するなど、その内容に技術畑の人たちは強く共感しているようだ。だが、バルブシステムや水素エンジンなど、文系の人間にはすぐに理解できない専門用語が飛び交う、理系独特の世界であることも確か。それなのに文系の視聴者にも敬遠されず、逆に惹きつけているポイントは何だろうか?

まず、伊與田英徳Pが「演出の福澤(克雄)は、佃VS帝国重工という対立構造を描くのが上手い」と語るように、人間描写や構成がしっかりしていることがベースにある。それにプラスして、公式サイトのファンメッセージなどを読むと、伊與田Pならではの意外性あるキャスティングも功を奏していると思われるのだ。神谷弁護士役の恵俊彰、帝国重工・財前部長役の吉川晃司など、役者が本業ではなく、一般の視聴者から見れば「この人が演技をするのか」という驚きのあるキャストが好演。また、殿村経理部長役の立川談春と銀行の融資担当・柳井役の春風亭昇太という人気の噺家を出演させ、劇中で2人を対立させるなど、落語ファンにはたまらない演出もあった。立川談春は「ルーズヴェルト・ゲーム」に続いての出演で、12/28(月)放送の「TBS年末スペシャルドラマ 赤めだか」(TBS系)には原作を提供している。この「赤めだか」の制作も伊與田Pなのだ。

「そもそも『赤めだか』ドラマ化の話を進める中で、談春さんに『ドラマは出ないんですか?』と聞いてみたんです。すると、出ないわけではないというお返事だったので、それは是非と『ルーズヴェルト・ゲーム』('14年TBS系)に出てもらったという経緯があります」

さらに、まだテレビ出演は少ないが舞台で活躍中の役者たちも抜擢。佃製作所の社員を演じた山崎育三郎、谷田歩らは、伊與田Pが足繁く演劇場に通って、見つけてきたキャストだ。

「ステージを観るのは、仕事というより趣味なんですけどね(笑)。真野役の育三郎くんは、今のミュージカル界で一番上手い役者だと思います。唐木田役の谷田くんもシェイクスピア劇を演じているのを観て、いいなと思いました。もちろん、山崎役の安田顕さんも、TEAM NACSのステージなどでずっと観てきました」と、伊與田Pは明かす。みずからもそうであるからこそ、演劇ファンの心をくすぐるキャスティングができるのだろう。そういった仕掛けによって、たとえ理系の物語には興味がない視聴者も、ドラマに注目させることができる。

「実は『ガウディ計画編』のキーパーソン、一村教授を演じる今田耕司さんも、談春さんと共演していた舞台『The Name』を観て、その演技に感動したんです。『今田耕司が医師役を?』と驚く人もいるかもしれませんが、今田さんなら医師としての優しさと、真剣になったときの鋭さ、その両方を出せると思いますよ」

11/22(日)からスタートする「ガウディ計画編」にも、まだ発表されていないキャストもいて、情報解禁となれば世間を驚かせることになりそうだ。理系の世界を深く理解しリアルに描くと同時に、配役の妙で演劇や落語、お笑いなどが好きな文系人間のツボも突ける。そんなプロデューサーが作る「下町ロケット」は、まるで“ハイブリッドカー”のように、視聴者の心を動かすふたつの動力を持つドラマだと言えるだろう。

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