【試写室】「スペシャリスト」は初回からエンジン全開

2016/01/14 05:00 配信

芸能一般

1月14日(木)スタートの「スペシャリスト」で我妻真里亜を演じる夏菜(C)テレビ朝日

「分かるんですよ、俺、10年入ってましたから」

草なぎ剛扮(ふん)する宅間善人がドヤ顔でこのせりふを発する、主演ドラマ「スペシャリスト」(テレビ朝日系)が、1月14日(木)にいよいよスタートする。

同作は、“土曜ワイド劇場特別企画”として'13年5月18日に初めて放送されるや昨年12月12日の第4弾まで毎回高視聴率を獲得し、満を持して連続ドラマ化。

冤罪(えんざい)で10年間服役し、その期間中に受刑者の犯罪手口や背景、心理状態などを知り尽くす“犯罪心理のスペシャリスト”となった刑事・宅間が、その類いまれなる経歴と能力を生かし、さまざまな難事件を解決していく。そんな新感覚刑事ドラマの連ドラ第1話を、一足先に視聴し、見どころを紹介する。

第1話は、いきなり宅間が東京刑務所に収監されている衝撃の姿から始まる。宅間にとって2度目の刑務所生活だが、事の発端は10カ月前にさかのぼる。

京都府警特別捜査係の解散と同時に警視庁にやって来た宅間は、名前も付いていない“ある部署”に配属されることに。

「ボーダーレス化する凶悪犯罪に対応するため、縦割りの組織を越えて円滑に捜査、情報収集、分析をするチーム」という名目のその部署は、あらゆる犯罪データを記憶する宅間の能力を最大限に生かすための部署。発足後間もなく、刑事部総務課から我妻真里亜(夏菜)という女性刑事が転属してくる。

京都府警時代に数々の難事件を解決に導いてきた宅間に、真里亜は明らかに不信感を抱く。真里亜の戸惑いをよそに、新設部署の生みの親である滝道(吹越満)に命じられ、宅間と真里亜は名門家で起きた小説家刺殺事件の捜査に乗りだす。

内側から鍵が掛けられた部屋で首をつって自殺を図ったと思われる新宮司直兎(金藤洋司)の背中にはナイフが刺さっており、自殺なのか他殺なのか、一見判然としない状況だったが、宅間は現場に到着するやいなや“密室”“見立て”“ダイイングメッセージ”など、ミステリーの定番ネタとも言えるトリックを次々と見破る。

宅間の捜査に翻弄(ほんろう)される真里亜だったが、事件は思わぬ方向へ。部屋の金庫から発見された生命保険証書の受取人欄には、妻の朱子(石田ひかり)ではなく執事の君原(井上順)の名が記されており、この件は主人の自殺を知った君原の“他殺への偽装”だったことが分かる。

君原には病気を抱えた娘がおり、治療のための金を必要としていた。保険金を受け取るために他殺を偽装したということだったが、宅間も真里亜もこの結末に納得ができない。裏付け捜査のため、現場にいたライターの横内(遠山俊也)、弁護士の近藤(松田賢二)に会った宅間らは、意外な事実を耳にする。

そして、その後ある言葉を残し、宅間は再び“塀の中”へ戻ることになる…というストーリーだ。

単発ドラマのクオリティーを連続ドラマに持っていく、というのは正直難しいのではないかなと思っていたが、何の何の。ミステリーの難度、クスッと笑えるせりふ回しと宅間の自由人っぷり、そして七高剛監督こだわりの映像美とどれを取ってもいい意味で連続ドラマの初回らしからぬスケールだ。

映像が始まった途端、宅間が刑務所にいるシーンが流れたため、「あれ?デジャビュ?ははーん、回想シーンから始まるんだな」と思ったのもつかの間、「また戻ってきた」というせりふを受け、つい「また入ったんかーい!」と突っ込んでしまった。

舞台を京都から東京へ移した今回から登場する新キャラ・真里亜役の夏菜と、吹越演じる滝道と名刺代わりのやりとり。夏菜が“ストーリーテラー出演者”として、宅間の経歴を調べるとともに初めて見る視聴者にスペシャリスト史を紹介する役割を果たしていた。

そして、「刑事だか犯罪者だか分からない人」(真里亜評)とコンビを組んで捜査に当たることになった真里亜。宅間は捜査する事件の記録を見て「ドキッ!ミステリーだらけの犯行現場って感じ?」と笑みを浮かべながら言い、真里亜をあぜんとさせていたが、これには思わず大笑い。

その後のシーンで出てくる「『ドキッ!』は『だらけ』の枕詞でしょう」というせりふも、某「水泳大会」世代にはササり、大喜利だったら合わせ技で一本!をあげたくなるほど。しかも、たしか“元ネタ”は他局だったような。こういう脚本家(戸田山雅司)とスタッフ陣の懐の深い遊び心は見ていて気持ちがいい。

もちろん、会見で草なぎが「犯人が誰だか分からなくなった」と言うほど、二転三転する流れがミステリーの複雑さを際立たせているのだが、それを感じさせないフランクな宅間のキャラクターと、勝気で微妙にトゲのある真里亜の“コンビ芸”。

京都時代の千波(南果歩)や唯子(芦名星)といい、なぜか宅間の周りには強い女性が集まるのも、本格ミステリーとして緩くなり過ぎないようにしようという意図が感じられた。そのさじ加減というか、バランス感覚がニクイ。

ちなみに、もう一人の新メンバー・和田正人演じる野方刑事は脱力感たっぷりのキャラクターだが、バランスという意味ではこれもまたいいし、滝道を演じる芸達者・吹越も黙っていない。滝道の企みのようなものも今後出てくるんだろうなと思わせる動きもちょい見せし、連続ドラマとしての伏線がきっちり張られているのも好感が持てる。

宅間の言葉を借りれば「ドキッ!見どころだらけの刑事ドラマ」ということになる本作。単発ドラマもその都度“一本満足”の仕上がりだったが、連続ドラマも毎回大満足できそうだ。

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