紗倉まなインタビュー前編「AV女優の処女作誕生!?」

2016/02/12 12:00 配信

芸能一般

処女小説「最低。」を上梓した紗倉まな撮影●諸永恒夫

セクシー女優としてトップの人気を誇り、コラムニストとしても活躍する紗倉まなが、処女小説「最低。」を書き上げた。2月12日に発売されるこの作品は、AV業界に関わる四人の人物を中心とした4章立ての作品。スカウトマンと男女の関係を持ちながら仕事を続ける若手女優の気持ちを綴った「彩乃」、プロダクション設立のため若き女優と同居生活を始めた男の葛藤を描いた「桃子」、セックスレスの日常を抜け出すためにAV出演を決心した主婦の物語「美穂」、元AV女優の母を持つ少女が大人へと成長する姿を描いた「あやこ」と、四者四様の立場で抱える葛藤を子細に描き出している。

Smartザテレビジョンでは、その文才に注目が集まる紗倉に、キャラクター作りや舞台設定をはじめとする創作の裏側に隠された“秘密”について直撃した。

――まずは「最低。」を書くに至った経緯を教えてください。

紗倉:月刊「ダ・ヴィンチ」さんの取材を受けた時に、『いつか小説を書いてみたい』という感じの雑談をしたんです。その数カ月後ぐらいに編集部からご連絡をいただいて、『試しに短編を書いてみませんか?』という話に。『最低。』とはまったく違うジャンルの作品を3本書いてお見せしたところ、『今度は長いものを書いてみましょう』ということになって、『ご自分の職業をテーマに書いてみてはどうですか?』と提案していただきました」

――小説を書いて誰かに見せたのはその時が初めてだったのでしょうか?

紗倉:私はSOD(ソフト・オン・デマンド)という会社のメーカー専属女優をさせていただいているんですけど、SODオーナーの高橋がなりさんに読んでいただいたことはあります。以前、何日か入院したことがあって、ガラケーを使って小説もどきのようなものを書きました。内容的には、自分について書いた日記のようなもので、プリントアウトしてみたら80枚ほどあって。それをがなりさんに見せたところ、『お前こんなヘタクソなものよく人に見せられるな』みたいなことを言われました(笑)。厳しい方なので当然の評価だと思ったんですけど、『これだけ書き上げた根性は認めるよ』というお言葉もいただきました。その後、コラムの仕事なんかをさせていただくようになったんです。

――初の小説執筆にして80枚を書き上げたのは確かにすごい根性ですね。昔から“書きたい!”という情熱はあったんですか?

紗倉:それが言いにくいんですけど、小学生の時の読書感想文は全部親に書いてもらっていたし、高専に通っていた頃のレポートも、Wikipediaで調べてコピペする…みたいな(笑)。自力で書いたとしても、実験の結果を文章にまとめたような淡々とした“考察”しか書けませんでしたね。書くのが苦手…というより嫌いだったんです。でも、AVの仕事を始めてからはブログやツイッターで自分自身をアピールする必要があって、自分の気持ちを書いてみたら意外と楽しかったんです。もともと小説を読むのは好きだったんですよ。桜庭一樹さん、桜木紫乃さん、村上春樹さんの作品を読みふけっていた時期があります。

――『最低。』を書くのは、正直、しんどかったのでは?

紗倉:それが、まったく(笑)。時間はかかりましたけど、楽しい作業でした。ボツになって改稿したり、もともと5章立てだった構成が4章立てになったりはしましたけど、ヘコまなかったですね。4章それぞれを独立したまとまりとして書いたので、スムーズに書けた章がある一方で、1章の「彩乃」なんかは苦戦しました。なんていうか…年齢的にも私に近い設定ですし、同じAV女優ということで書いていて恥ずかしくなってしまったのかもしれません。

――2章「桃子」では、若い女優と同居する男性の切ない心情描写や、女性の肉感的な表現が見事でした。

紗倉:自分でも意外だったのは、私自身に近い人より、性別や年代が異なる人の気持ちを想像して書くほうが楽だったんですよ。「桃子」に関しては、私自身がレズビアン作品に参加した時の経験を活かすことができました。撮影で女の子と肌を重ねる機会があったんですけど、女の子の体って想像よりもかなり、もう何もかもが柔らかかったんです! あぁ、男性って女性の体をこんな風に感じるのかな…って。“本当に桃みたい!”って感じたんです。それで、2章のヒロインは“桃子”という名前にしました。

――なるほど。そんな経験もあって、五感に訴えかける男性目線の見事な描写になっているんですね。3章、4章はどんな感覚でお書きになりましたか?

紗倉:4章の「あやこ」(※元AV女優の母を持つ少女の物語)は一番スムーズに書ききれました。一番好きなキャラクターだからでしょうかね。私があやこの年齢だった頃に、周りの大人に対してこんな風に気持ちが割り切れていたら楽だったろうな…って思いながら書きました。3章の「美穂」は30代の既婚者で、夫との性生活がうまくいっていない女性なんですけど、自分がその年齢になったら…なんてことを想像しながら書きました。あと……実際に私の親が『セックスレスだった』という実話も参考にさせていただきました(笑)。

紗倉まなインタビュー後編「AVの仕事って“最低”!? 本音と理想」に続く

取材・文=大小田真

撮影=諸永恒夫

関連人物