復興描くドラマで“姉の夫に恋する”松下奈緒を直撃

2016/02/25 05:00 配信

ドラマ

「恋の三陸 列車コンで行こう!」に主演する松下奈緒(C)NHK

2月27日(土)夜10時から3週連続で、松下奈緒主演のドラマ「恋の三陸 列車コンで行こう!」(NHK総合)が放送される。東日本大震災の被災地である岩手・大船渡が舞台の同作は、復興をテーマに掲げながら、コメディー要素も多く取り入れたラブストーリーとして、被災地で前向きに生きる人々を描いている。

西大船渡市役所の地域振興課で働く由香里(松下)は、地元の男女に出会いの場を提供する「列車コン」というイベントの運営を担当。そのイベント中、不審な男を見つけるが、いざ捕まえてみると東京にいるはずの姉の夫・達也(安藤政信)だった。由香里の家に転がり込んだ達也は、町おこしのため大船渡の特産・サンマを使った “NEOさんまラーメン”の開発を宣言。由香里も巻き込まれていく。

今回、震災から5年の節目に制作されるこのドラマの主演・松下奈緒を直撃。作品に懸ける思いや、撮影中のエピソードを聞いた。

――まずは、被災地を舞台にしたドラマということで、オファーを受けたときの感想を教えてください

ことしで震災から5年ですし、私自身、復興支援活動で仙台に行かせていただいたこともあるので、このお話をいただき、見た方が、お会いした方たちが少しでも元気になってくれたらうれしいと感じました。

震災の話ですので、どう伝えるかという意味では不安もありました。しかし、台本を読んでみると、「こういう描き方もあるのか!」と驚きました。これだったら楽しんでもらえると思いました。自分自身もこの作品を楽しんで、それを見た方も面白いと思っていただけるのが一番だと思うので、「この作品なら」と安心しました。

――演じる由香里は市役所職員でしっかり者というキャラクターですが、台本を読んだ時の印象を教えてください。

由香里は、母と妹と暮らしていますが、父もいないし、姉は震災で行方不明になってしまっていて、“自分が一家の大黒柱として家を支えよう”と思っています。人に弱みを見せられないところなどは共感しますね。そんな由香里が、達也との出会いを通して、どんどん新しいことにチャレンジしていく姿は、率直にうらやましいと感じました。

物語の舞台となる大船渡でのロケにも行かせていただいたのですが、三陸は海沿いということもあり、人々の気質がどこかラテン系なんですね。気持ちが明るいし、お祭りが大好きですし。そういう意味で、由香里が運営する“列車コン”は、町を挙げての大きなお祭りですから、そこで中心になって盛り上げようという由香里の熱い思いは、三陸の人らしさが出ていると思います。

――東北弁にも挑戦されていますが、どれくらい前から練習されたのですか?

('15年)の11月、12月くらいには、自分のせりふを大船渡弁に言い換えたものを吹き込んだテープをいただきました。東北の言葉は今回が初めてですが、「だげど(だけど)」「だがら(だから)」と濁点が付くと、とても優しい響きになるんです。それに、方言で話すとそれだけで役が近づいてくるような感覚があります。

大船渡の言葉で「ばばば!」というのがあるのですが、「あまちゃん」('13年NHK総合ほか)でいうところの「じぇじぇじぇ!」と同じで、驚いたときに使います。コミカルな場面も多い作品なので、キャストのみんなでよく使っていますね。

――共演でいうと、先ほどもお話に出た安藤政信さん演じる達也が物語のキーマンになります。安藤さんとは初共演ということですが印象はいかがでしたか?

見た感じはすごくすっとしているのに、中身は本当に熱い人だなと思います。シーンの撮影中に、何か気になるとかあったら「ここが気になる」って指摘してくれますし、二人で「こうやった方がいいよね」という話もよくしています。

――由香里にとって姉の夫である、達也との関係性はどのように演じましたか?

達也が、突然町おこしのために“NEOさんまラーメン”を作ると言い出して、由香里も協力するのですが、ラーメン作りで一緒に試行錯誤していく中で、二人の仲が近づいていきます。

由香里は、達也を最初「自分の亡きお姉ちゃんの旦那さん」として見ていたと思うのですが、途中から「(私は)この人のことを、もしかしたら好きなのかな」と思い始めるんです。その変化は大事にしたいと思いました。それまで“復興”に向かっていたドラマが、“ラブストーリー”に変わるという瞬間なので。真面目な由香里ですから、自分が「姉の夫に恋している」と分かった時にどういうふうに思うのか、その辺りの複雑な思いを丁寧に演じたいと思いました。

――撮影中、特に大変だったことはありますか?

太鼓をたたくシーンがあって、1カ月くらい練習しました。音楽をやっている身としては、音のことになると頑張らなくちゃと思って (笑)。大船渡東高校の生徒たちに教わったり、出演してもらったりしたのですが、「10代の筋肉じゃないだろう」というくらい体も完成されていて、私が彼らの中に入ると浮いてしまうので本当に苦労しました。

大船渡でのロケ中は、高校の子たちが土日も学校で練習しているので、そこで一緒に練習させてもらいました。個別練習もしてもらって、「松下さんは~」ってちょっと怒られながらですが(笑)、楽しくやらせてもらいました。こうやって新しいことを一からしっかり練習して、最後にみんなで「やってよかった」と思えることって、最近なかったなと思いましたね。

――最後に由香里の姿から視聴者にどんなことを感じてほしいか、教えてください。

「頑張ったことはいつか報われるんだな」とか「由香里のように正直に生きていけたらいいな」とか、いろいろなことを感じると思いますが、一番は由香里を身近に感じてもらえたらうれしいですね。

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