池松壮亮「小手先では演じられなかった」

2016/02/26 22:00 配信

ドラマ

dTVオリジナルドラマ「裏切りの街」に出演中の池松壮亮にインタビュー

2月1日より会員数No.1の映像配信サービス“dTV”で独占配信中のオリジナルドラマ「裏切りの街」は、三浦大輔監督が'10年に自身のオリジナル脚本、演出で上演した同名作品を新たに映像化した意欲作だ。

出会い系で知り合った寺島しのぶ演じる平凡な専業主婦と、池松壮亮演じる15歳年下のフリーターとの不倫を軸に描いている。

配信開始から2週間で視聴ランキング1位を獲得するなど、好評を博す同作の主演・池松にインタビューを行った。

――脚本を読んだ感想を教えてください。

元々三浦さんが舞台でやっていた作品で、ドラマではラストだけちょっと変わっていて、その付け加えられている部分によって作品の広がりがあります。見ている人に、一歩踏み込むような作りになっているのが、すごく面白いなと思いました。

――監督からの要望は?

3年前に映画「愛の渦」('14年)とか、「母に欲す」っていう舞台をやったんですけど、その時は重いというか、抱えているものが深い役だったんですけど、最初に三浦さんに『ちょっとだけ軽い池松君も見てみたい』って言われました。ただ軽いのではなくて、深みみたいなものや抱えているものも見せつつ、時折見えるふとした軽さっていうのが要望でしたね。

――実際に演じてみて?

僕、三浦さんとご一緒するのは3度目なんですけど、本当に欲深い人で(笑)、とてもハードルが高いというか、自分の作るものに対して厳しい人。すごくストイックで、その分僕たちのハードルが上がるので、せりふの間一つとっても指摘されますし、普段なら絶対OKになるっていうところで何十回も撮り直したりしました。

小手先で演じたところで、演じる側の心が映らないとOKをだしてもらえないので、誤魔化しが効かない、技術じゃどうにもならない部分はありますね。だからこそ信用できるっていう感じです…まあ大変ですけど(笑)。

――三浦監督の作品の世界観は演じる側としてどう思いますか?

人の愚かな部分や醜い部分、世界の奥の奥に見える人間のはかなさなどを、一貫して描くっていう作家性がずーっと変わってないと思います。どんな作品をやろうとも、絶妙な何となく見覚えのある瞬間を撮るというのが本当にうまいです。

――監督の内面が池松に投影されていると言われることについては?

三浦さんの場合、オリジナルで書かれている作品が圧倒的に多い。僕が演じた3本も全部オリジナルなので、特に主人公は三浦さんに近い部分があると思います。

人間誰にもある種のどうしようもない部分があると思っていますし、三浦さんの話であり、僕の話であり、見る人全員の話になればいいなと思って演じました。

――寺島さんと実際に共演されてみていかがですか?

せりふを一言しゃべるたびにすごいなって思っていましたね。一言一言の重みというか、そこにいる重みというか、人としての重みのレベルが全然違いました。一番近くで見させてもらっていたんですけど、人として女優としての深みやすごみ、迫力みたいなものを一瞬一瞬感じましたね。

――15歳年上の女性との恋だが、演じてみてどうですか?

俳優の特権なのか分からないですけど、疑似体験できたのは悪くなかったですね(笑)。(15歳年上との恋愛は)悪くはないと思いますけど、僕は人を好きになったその先の方に興味があります。一瞬のトキメキとかもすごくすてきな事ですけど、人を思うことってとても労力を使う。

恋愛って人の特権だとは思いますけど、でも基本的にずーっと恋愛していたいかって言われたら全くそうじゃないので、恋愛は得意ではないですね。

――撮影秘話は?

中央線って三浦さんにとって思い入れの深い場所なので、三浦作品では結構登場するんですけど、今回特に“街が主役”みたいなところがあるので、中央線にはすごくこだわっていましたね。中央線沿線で本当に映画を撮るなんて聞いたことがないので、その分苦労しましたけど、なかなか普段やれないことをやれたんじゃないかな。

あと、映画スタッフが集まっていたのもありますが、三浦さんは舞台の演出家であり映画監督で、寺島さんも僕も普段は映画に軸を置いている人間なので、映画を撮ってるという意識を持っていましたね。ただ現場でやってる熱量は変わらないので、やれるだけのことはみんなやった感じです。

――最後に見どころは?

取り返しのつかない日常の中で生きている人間のはかなさ、美しさみたいな部分がこの作品にはあるので、僕自身の物語であり、普段何げなく生活を送っている人たちの物語だと思っているので、この作品を見て何かしら感じて取ってもらえればとうれしいです。