「行け!稲中卓球部」「ヒミズ」で知られる古谷実の同名コミックを映画化した『ヒメアノ~ル』が5月28日に公開される。本作は、かつての同級生と再会するも、連続殺人鬼となっていた彼から命を狙われる青年が体験する恐怖を描く、実写化不可能と言われたサスペンス。森田剛が無差別殺人を繰り返す森田を、殺人事件に翻弄される岡田を濱田岳、岡田の彼女で森田に狙われるユカを佐津川愛美が演じる。
今回、ビルの清掃会社でパートタイマーとして働く岡田の先輩・安藤を演じるムロツヨシにインタビューを行い、ユカに恋心を抱き、コミカルな役どころを演じる上での心境を聞いた。
――衝撃的な内容の映画ですが、脚本を読んだ感想はいかがでしたか。
強烈でしたね。今回の映画は前半が喜劇で、後半は悲劇になっていますけど、個人的には世の中すべてが“喜劇”であってほしいと願っているんです。でも、テレビをつけると、殺人のニュースなど耳にしたくないことも入ってきてしまう。残念ながら殺人は現実にあるってことを思い知らされましたね。
――実際に作品を見て、脚本を読んだ時と印象は変わりましたか。
ラストが、実は脚本にないことをやっているんですよ。感動しちゃって。監督に「なんてステキな後付けなんですか」って言っちゃいました。森田の最後の人柄が見えたというか。そこも楽しみに見てください。
――今回演じられた安藤はどんなキャラクターですか。
最初にストーカーじみていて怖いのは安藤ですけど、実はピュアで正義感がありますね。森田に注意して、無視されたら追いかけるシーンがあるんですけど、追いかけるってすごいことだなと。演じているときは気にならなかったんですけど、映画を見てそのシーンがすごく安藤を表していると思って、印象に残っていますね。
――安藤の気持ちが分かる部分はありましたか。
森田を追いかけるシーンも、僕はそこまで正義感が強くはないので、そうありたいという願望はありますね。ただ好きな人を取られてもチェーンソーは買わないけどね(笑)
――実際に好きな人を取られてしまったらどうしますか?
僕は色恋沙汰にそんなに熱を上げないので、悲しくはなると思いますけど、安藤ほどではないと思います。殴りたいとか、こいつがどうにかなってしまえばいいんだっていう恋はしたことがない。女性に天秤に掛けられたことはあるんですよ。その時も相手の男性をうらむことはなかったですね。そこは人間としてよかったなって思います。
――予告編が前編はラブコメ、後編はダークという二部構成ですね。本編もそうですが、演じているうえで意識はしましたか。
僕は意識してないですね。たぶん役者はみんな意識していないと思います。監督の指示で、衣装のコンセプトが前半は明るめで後半はトーンを落としたり、カメラの取り方も、最初は固定で撮っていて、後半は手持ちが多くなって。監督が見ている人を無意識に操作しているんですよね。作品を見て、ここまで(作品に)二面性があることに驚きました。
――濱田岳さんや森田剛さんの演じるキャラクターやご本人の印象はいかがでしたか?
岳に関しては、実際はあんなに人に流されないです。すごい自分を持ってますからね。男らしいし。森田君に関しては、キャスティングを聞いてすごいはまり役だと思ったんですよ。自分の世界があって、その世界で生きている印象があったので。あんなに狂気じみてはいないし、彼には歌ったり踊ったりハッピーな世界があると思うんですけど、自分の世界で生きているということでは共通点があるというか、似ているなと思います。
――安藤が岡田に「ユカちゃんは僕の生きる希望だ」って言うシーンがありますが、ムロさんの生きる希望はなんですか。
野心じゃないですか。夢とかを言うのは恥ずかしいんですけど、野心はあるんですよ。
――今の具体的な野心は?
芝居でごはんを食べ続けること。その上で、恥ずかしながらも喜劇役者を名乗っているので、喜劇役者らしく、見ている人にあいつで笑いたいと思わせられるような役者になりたいなと思います。
――今後チャレンジしてみたいことは何ですか。
1つ代表作は作りたいなと思います。『男はつらいよ』の渥美清さんみたいに、映画でしっかり喜劇を演じられている方たちがいるので、それを目標に、日本の喜劇役者として喜劇映画で代表作を作りたいなと思います。
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