「連続テレビ小説『あさが来た』」(‘15年-‘16年NHK総合ほか)でヒロイン・あさ(波瑠)を支え続けた夫・新次郎役で、週刊ザテレビジョン主催の第88回ドラマアカデミー賞助演男優賞に輝いた玉木宏。
同賞で「あさが来た」は最優秀作品賞、主演女優賞、助演男優賞、ドラマソング賞、脚本賞、監督賞の6冠。平均視聴率も今世紀の朝ドラ史上最高を記録するなど、圧倒的な強さを見せた作品を、玉木があらためて振り返った。
「撮影中は無我夢中で世の中の評価はあまり耳に入ってこない状態でした。それに、リアルタイムではなく、撮影を終えて数カ月たったものが放送されているので、そこにとらわれないようにしました。実際、撮影が忙しく、外に出る時間もなかったですし。ただ、こうしてたくさんの方に見ていただけたという結果はすごくうれしいなと思います」
「新次郎さんと結婚したい、と日本中の女性が思ったはず」という意見もあるほど、新次郎は現代女性の理想の夫だったよう。
「頑張るヒロイン、凸凹夫婦感、後押しする夫――というのは、あの時代にはあまりなかったことかもしれないですが、女性を支えるのが男性であってもいいんじゃないかと。最初、新次郎はちゃらんぽらんでつかみどころがなかったかもしれないですが、結果的には誰よりもあさのこと、加野屋の行く末を考えていた。それを表に出さないだけで、一番空気を読みながら動いた人だと思っています。そういう意味で新次郎の生き様はすごくスマートだなと思ったし、見えないところで動く、言葉にしないで動くスマートさは自分も学びましたね」
時代が江戸から明治に変わり、新次郎もまげからざんぎり頭に。以前はあさの父・忠興(升毅)や五代(ディーン・フジオカ)にざんぎり頭を勧められるも頑なに拒み続けていた。
「時代劇の扮装をしているから成立していた部分があると思っていて、もちろん新次郎として同じ芝居はしているんだけど、大丈夫かなという心配はありました。まげを取ったときはすごく辱められている感じ(笑)。でも、“継続は力なり”というか、皆さんの目も慣れるというか(笑)。まげを最後まで切らなかったという頑固な正吉(近藤正臣)さんの息子だから、父親ゆずりなところがあると思うんです。実は洋装になる話もあって、実際に洋装の用意もあったんです。衣装合わせをして、監督が『どこか使いたいところがあればおっしゃってください』と言ってくれていたんですが、ここぞというときがなかった(笑)。あまりにも洋装にすることに意味が出すぎて、新次郎らしさが失われてしまう。だから、ずっと着物でいいんじゃないかと思ってそうさせていただいたんです」
主人公以外のキャラクターも魅力的だった今作。特に新次郎は、着物の着こなしや身のこなしが優雅だと話題に。
「初めて台本をいただいたときは『新次郎って何者?』と僕自身もよく分からなかったのですが(笑)、ただ、いいとこで育っていて品のある人だし、その品性が失われてしまったら、先のストーリーに説得力がなくなってしまうと思って、そこだけは細心の注意を払って演じていました」
クランクアップは異例のラストシーン非公開、最終週の詳細も伏せられたまま、最終回の1日前に、新次郎の死が描かれた。
「どのタイミングで亡くなるか決定はしていなかったんですけど、最初から知ってはいたんです。もうちょっと早く亡くなる話もありましたし、最後まで生きるかもしれないという話もありました。結果、最終回の1日前で命を落としますということをわりとギリギリで知りましたね。最終週、ここまで新次郎の弱っていく姿を描くのかというのは、僕自身も台本を読んでいてつらかった。先を知りながら演じるつらさというんですかね。微妙なさじ加減で弱っていくのに、順番に撮っているわけじゃない。すごくデリケートな部分をいったりきたりするのはすごくパワーを使うし、泣くというスイッチを入れてしまったら元に戻せないんです。だから撮り順も何度か入れ替えさせてもらいました。あれだけ長い時間、新次郎、そして『あさが来た』という作品に接してきたので、最終週は感慨深いものがありましたね」
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