ただの朗読劇ではない! 劇団KAKUTA“の限りなく演劇に近い朗読”舞台とは?

2016/05/18 23:16 配信

芸能一般

番外公演にもかかわらず、オーディションには200人以上の応募があったという

舞台だけでなくドラマ、映画と幅広く戯曲の書下ろし、演出を手掛け、自らも女優として活躍する桑原裕子。彼女が主宰する劇団KAKUTAの20周年記念公演第2弾として上演中のKAKUTA Sound Play Series #8「アンコールの夜」が好評だ。

朗読劇というと、舞台上に一人、あるいは2人が本を持って登場し、感情表現豊かに一人何役もこなして読み上げる、というスタイルが一般的と思われる。が、2004年に始まったKAKUTAの「朗読の夜」シリーズは違う。

読み手もいるが、俳優が実際に動き、演じる。朗読を聞くだけではなく、観る舞台だ。桑原に本作について語ってもらった。

「『アンコールの夜』のタイトルの通り、過去に人気のあった作品や、もう一度やりたいと思った小説を再演しようと決めていました。

まず、KAKUTAのサイトでお客さんのアンケートを募り人気投票を行ったんです。その上位三作品に選ばれたのが『ねこはしる』(工藤直子作)、『昨日公園』(朱川湊人作)、『炎上する君』(西加奈子作)でした。

『ねこはしる』は朗読の夜シリーズの第1回目を飾った原点ですし、他2作はシリーズでも名作として再演を希望する声が本当に多かったんです。

また、ぜひまたトライしたいと思っていた『いつか、ずっと昔』(江國香織作)、『生きがい』(小池真理子作)、さらにこのシリーズをずっとご覧になっている方も楽しめるように新作で『エイコちゃんのしっぽ』(川上弘美作)、『井戸川さんについて』(桐野夏生作)、『天使はジェット気流に乗って』(いしいしんじ作)が加わりました。

朗読の夜シリーズはほとんど普通の芝居と同じようにせりふがあり、動きがあるのですが、唯一違うのはカギかっこが付いていない地の文を読む“語り”という読み手の存在がいることで、演じ手と分かれていること。

心情や情景はやはり語りが読み聞かせることで空間を広げていくので、どんなに演じ手が頑張っても、語りと通じ合わなければ作品の魅力は発揮できない。そこがこのシリーズの一番の難しさであり、面白さです。

あえて客観的に淡々と読むべき作品もあれば、自分の体験として感情移入して読んだ方が面白いものも、お客さんに目線を振りつつ話し掛けるようなものもあり、語りのキャラクターもさまざま。その語りのスタイルと演じ手の見せ方がシンクロして作品の色を作ります。

普段、『共演者と気持ちを通わせる』といったことに慣れている俳優陣も、こうしたスタイルは珍しいと思うんですが、だからこそ、語りと演じ手が呼吸を合わせてビタッとはまったときは、普通の芝居と違う面白さがあります」。

“限りなく演劇に近い朗読”の魅力があらためて分かる。その朗読舞台も今回は総勢32人の大所帯。

「苦労したのはやはり、稽古の時間割です。上演作8作に加え、私が書いた作品群の間をつなぐオリジナルストーリーもあるので、1カ月半毎日稽古しても各作品は週2回くらいしか稽古ができない。

だから自主稽古日も作り、本稽古と同時進行で別場所で稽古してもらうこともありました。稽古が少なくて申し訳ないなと思いつつ、それが結果的に良い効果をもたらしていた部分もあります。

本稽古の時間が限られていることで、俳優陣はその時間にちゃんとステップアップしたものを見せていこうという姿勢が強くなり、早く自立していくんです。

また、共演者同士が話し合う機会も増えるので必然的に『自分のことだけ考えていればいい』という感覚は薄くなり、強い協力体制ができる。

普段の稽古だとつい前日の反省を引きずったまま稽古に来てしまうこともありますが、それが本当に少なかったです。スケジュールは大変ですが時間割で学校みたいにみんなが稽古場に入れ替わり立ち替わり来るのは面白かったですね。体育会系の熱いチームや笑いが絶えないチームと、色が違うので、飽きることが全くなくて」。

すでに公演も半分を過ぎた。

「残すは『猫を読む。』というプログラムのみになりました。ここで上演される『ねこはしる』は工藤直子さんの童話なのですが、子供向けの話とは呼べない、大人にこそ観てほしい物語です。

『いきもの』の出会いと別れを通じて、その深い優しさや寂しさ、強さ、いとおしさ、根源的な輝きを描いています。

音楽は今、ポカリスエットのCMでも話題のミュージシャン・アルケミストが全て手掛け、歌とピアノの生演奏でお届けします。『アンコールの夜』の前半をご覧になった方は、『猫を読む。』でまったく様変わりする舞台に驚いていただけることと思います。

朗読とはいえ、舞台中を縦横無尽に動き、踊り、歌い、走り回ります。もちろんお子さまにもお楽しみいただけることと思いますし、小さなお子さんと一緒に観劇できる『こどもとねこの会』というステージ回もありますので、ぜひ家族でご来場ください!」。