綾野剛主演、白石和彌監督の最新作「日本で一番悪い奴ら」が6月25日(土)より全国公開されるのに先駆け、第一線で活躍する映画作家の声が聞ける人気イベント“Meet the Filmmaker”に白石監督が登場。
そして、白石監督の長編作品全ての劇中音楽を担当しており、ことしの日本アカデミー賞で優秀音楽賞を受賞した安川午朗氏をゲストに迎え、秘密の撮影エピソード満載でトークを繰り広げた。
'13年に公開され日本アカデミー賞優秀作品賞など国内の数々の賞を受賞した「凶悪」。「次の作品は? とよく聞かれていました」と、「凶悪」の評価を受けて、白石監督の元には数々の企画が持ち込まれるまでになった。
そんな彼が「凶悪」の次に選んだのは、一人の刑事のゆがんだ正義が暴走するエンターテインメント作品「日本で一番悪い奴ら」だ。「この企画は、脚本の池上(純哉)さんがとある有名なスター俳優主演の企画を出さないといけない状況で、たくさんプロットを出していた中の一つでした。
さすがにそのスター俳優の企画には当てはまらず、そこでプロットを読んでほしいと言われたのが始まりでした。シリアスに見せるのは『凶悪』でやり切ったので、次はエンターテインメント作品をやりたかったんです。
よりエンターテインメントに寄せることを意識しました。この作品は、ギャング映画にしたかったんですが、日本でギャング映画というとヤクザ映画。それはちょっと違うなと。このプロットを見て、警察を主人公にしたらギャングになるんだと気付きました。マーティン・スコセッシ監督作品でいうと『ウルフ・オブ・ストリート』よりも『カジノ』の方が参考になりましたね」と、本作の製作秘話を語る。
原作「恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白」を執筆した稲葉圭昭氏に関しては「人たらしで女性だったらコロッといくだろうなという色気がありました」と印象を語ると、「男っぽさと色っぽさがあったほうがいいなと思い、綾野君に依頼しました」とキャスティングの経緯も紹介。さらに、稲葉氏は「基本的には真面目で一生懸命で、根本的に優秀な人。マル暴で拳銃を挙げようとしても、普通は五丁から十丁。拳銃を出すには企業努力が必要、お金が必要、それをやっていた。取引先がヤクザなだけで、どの組織も同じ」と、本作が警察という組織内での話ではなく、社会的な構図が描かれていることに触れた。
音楽に関しては「稲葉さんご本人の写真を見せていただき、リアルに青春を謳歌(おうか)していた。犯罪者の青春ムービーなんですよ、とキーワードをくれて、そこから音楽を作り始めたんです」と言うと、会場にでは、新人刑事時に諸星が悪に染まることに覚悟を決めて名刺を配りまくるシーンでかかる音楽が流れる。
中近東とデジタル感が融合された独特の音楽に関して「中近東の音楽は、死生観がすごくある。死が裏側にあってそれを受け入れられる人たちにはそういう音楽があるのかなと」と言い、『凶悪』から死生観とデジタルを組み合わせた音楽を映像に乗せたことを明らかにした。
撮影現場では笑いがたえず、監督が一番笑っていて、監督が笑い過ぎて声が入ってしまってNGになったこともあったそう。
また、綾野の役作りの話になると「おっさんの時期を演じる際には、『加齢臭が欲しい』ってずっと言っていて、撮影前日は焼き肉を食べて、朝、歯を磨かなかった」と暴露。
「映画を見ると、そこが生きていると感じると思います。『歯垢が欲しい』とずっと言っていましたから。すごいですよね、普通なら思い付かないです」と、感嘆していた。
そんな中、先月末まで刑務所に入っていたという一般人から「こういうジャンルの映画は刑務所内では見せないようにするんですが、僕は(半面教的な意味で)こういう作品を見せた方がいいと思っています。監督からぜひ(刑務所)にプレゼンをお願いします」という声に、「この作品が刑務所にいる人たちに良いか分かりませんが(笑)、世の中がインモラルなものにふたをして終了になっている。そうじゃなくて、必要なものは見せるべき。インモラルなもの、不道徳なものを見て、学んでいくことが必要。両方知ってどう判断させていくのが教育だと思います。プレゼンしてみます(笑)」と返した。
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